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凶悪 / そして父になる [映画]

「ぐるりのこと」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「モテキ」「アフロ田中」と、出る映画出る映画でどれも強い印象を残すリリー・フランキー、2連発!!

「凶悪」
とにかくこの映画の予告編のピエール瀧とリリー・フランキーが強烈で、もう、ゼッタイ観なきゃ!!!って感じで観に行った。

やっぱり強烈でした。予告編で膨らんだ期待感(と言っちゃアレだけど・・・)、その期待感が裏切られる事は無く、二人の狂った怪演に大満足。シンプルな映画のタイトルに、ウソ偽りナシ。
観終わった後も、しばらく放心状態に。
園子温「冷たい熱帯魚」に匹敵する、問題作な犯罪映画。

主演は山田孝之。ゴシップ雑誌のしがない記者の主人公は、編集長の指示で、編集部に手紙を送ってきた死刑囚のヤクザ(ピエール瀧)に面会に行く。面会室でその死刑囚の男から、自分にはまだ世間に露見していない3件の保険金殺人の余罪があること、そしてそれらは全て、自分が "先生" と呼んでいた男(リリー・フランキー)に指示されたものであることを、主人公は告白される。

最初は半信半疑だった主人公も、取材を進めるうちに、その男の打ち明け話に強い信憑がある事を確信。適当に断っておけ、という上司の指示を無視し、痴呆症の母を自分の代わりに介護している妻(池脇千鶴)のストレスにも構わずに、地方都市の暗い闇に隠匿されたこれらの殺人事件の取材にのめり込んでいく。

まず、こんなにコワいピエール瀧を見るのは初めて。決め台詞「ぶっ込むぞ!」(←ぶっ殺す、という意味)の怒号をはじめ、何もかもが余りにも粗暴で、目が釘付け。しかも、ただ粗暴なだけでなく、その奥に潜む人間性の小さな欠片(ほんの小さな欠片でしかないけど)をも垣間見せていて、俳優として、大きく更新してる。

そしてリリー・フランキー。見た目は普通の中年男性、けど、ふとした瞬間に、根っこまで腐りきった人間性の腐臭が、全身から吹き出してくる感じ。
邪悪で狡猾、しかも、ひょっとして隣人として自分の身の回りにもいるんじゃないか? という犯罪者を、本当に何気無く、自然体に演じてみせる。演技じゃなくて、本当にこういう人じゃないか?と思ってしまうくらい。

二人の狂った演技、もうそれだけで必見。今回ばかりは、山田孝之も池脇千鶴も影が薄いくらい。気の弱い人は、本気で気分が悪くなると思う。
こういう、弱者を食い潰す事に何の胸の痛みも感じない、良心が欠落した人間は、程度の差はあれど、現実世界にも存在している。そんな存在を直視すべき、と教えてくれる映画でもあります。

個人的評価 4.5点/5点満点

公式HP
http://www.kyouaku.com9


「そして父になる」
言うまでもない、是枝裕和監督のカンヌ審査員賞受賞作品。
産婦人科での取り換え子が6年後になって発覚し、もう既に親子としての年月が6年間も経過していて、そんな状況になった親がどうするのか、というお話。

この映画は、主演の4人のキャスティングで、勝負は決まった感じがする。
多分、当て書きしてる?っていうくらい。

福山雅治は、エリート人生を歩んできた男が、6年間育ててきた子供を取るか、それとも血の繋がった子供を取るか、という苦悩の中で徐々に人間的に成長していく、という役。好演している。
そして、その対比となる、もう片方の父親を演じているリリー・フランキー。
この映画での彼は、町の電気屋さんで、典型的な庶民派のオヤジ。お金のことばかりを口にするので第一印象は悪いのだけど、どちらが父として、或いは人として成熟しているかは、やがて一目瞭然になってくる。

リリー・フランキー、「凶悪」と真逆の役ながら、どちらも真に迫っているというか、何と言うか、演技している感が無い。もちろん演技だろうけど、本当にこの人はこういう人なんだろうなあ、とつい思ってしまうほど。両作品とも。
俳優として、独特の鋭利な異物感があって、それがどんな役でも演技で消えないから、ストーリーの中に存在が埋没しないんだよなあ。

そして二人の妻/母親、尾野真千子と真木よう子が、ドラマ「最高の離婚」に引き続いての共演。
本当に安定してるし、役に血が通ってるというか、巧いなあ、と思う。
この二人も、夫と同様、対比的なキャラクター設定になっていて、特に真木よう子が映画の後半で福山雅治に言い放つ幾つかのセリフは実に痛快。

樹木希林、高橋和也、ドラマ「ゴーイングマイホーム」に引き続いての祖父役を好演する夏八木勲と、是枝組が揃う。樹木希林は流石だし、夏八木勲の姿は、ぜひその目に焼き付けておくべきでしょう。
そして私個人的には、中村ゆりが演じる看護婦の存在。彼女の存在が、この映画における一つの小さな棘になって、ノドの奥に刺さってチクリとした。

リリー・フランキーだけでなく、実はこの映画にもピエール瀧が顔を出してます。
ほんの一瞬だけですが。セリフも無いけど。

あと、この映画の予告編は、無いんじゃないか、っていう気がする。
予告編で、一番使っちゃいけない場面を使ってしまっている。

個人的評価 4点/5点満点

公式HP
http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp

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