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女王陛下のお気に入り [映画]

正直に告白致しますと、ヨルゴス・ランティモス監督が苦手で、それは前作の「聖なる鹿殺し」がもう本格的に自分に合わなかったからですが・・・本作は意外とイケた。というか非常に面白かった。歴史モノ&コスチュームプレイというジャンル映画から変に逸脱したオレ様映画ではなかったこと、それと3人のメインキャラクターがそれぞれ共感/同情できる人物造形だったこと、この2点が非常に大きかったです。それでいて、この3人の女性による権力&恋愛闘争のエグさ(これにもう一人、ニコラス・ホルト演じる野党の党首も足して)が、見応え満点で、面白くて仕方がなかった。

18世紀のイングランド宮廷を舞台に、女王陛下(オリヴィア・コールマン)の寵愛を巡って、女王の腹心(というかそれ以上の存在)レイチェル・ワイズに、若い野心家のエマ・ストーンが戦いを挑む、というお話である。この3人の女優さんが3人とも素晴らしく、なかでもやっぱりエマ・ストーン。「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」も良かったし、過去の出演作も大体良かった彼女だけど、それまでの自分に定着したイメージを裏切るような本作のパフォーマンスは、多分、今まででベストの出来だと思います。クール・ビューティーなレイチェル・ワイズもめっちゃかっこよかったし、およそ権力者に不向きなのに女王として生きていかなければならない悲劇性を滑稽かつ切実に体現したオリヴィア・コールマンはスゴイですよ。

それと目を奪われるのは、この3人の競演だけではなくて、舞台となる宮廷セットの豪華絢爛さ、それと華麗な衣装。ものすごいビッグバジェット。それだけこの映画監督のネームバリューが上がった、ってことなんでしょう。とにかく俺的には、この監督さんが彼の持ち味(露悪的というか人間嫌い?)を丁度良い塩梅にセーブしてくれたのが良かったと思いました。

あと脇役ですがニコラス・ホルトも絶好調。この役はおいしいですよ。

個人的評価 4.5点/5点


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七つの会議 [映画]

もはや一つのジャンルと言える池井戸潤。本作ははたしてどうだろう?と思って観に行ったら、主演の野村萬斎以外はほぼ、お馴染みのキャストが集結し、しかも大体同じような役で、どの役者もセルフパロディ感が半端ではなく、シリアスな演技でも思わず笑ってしまったほどだった。コレはもはや確信犯でしょう。

しかしながら、やがて明らかになるストーリーの真相は、今日的であり、私は正直ゾッとした。映画的にはエンターテインメントに徹しているものの、非常に教育的というか、サラリーマンは必見である。

あとオリエンタルラジオの藤森慎吾が非常に良かった。というか、ハマり過ぎで心配になった。それから朝倉あきの高い安定感を再認識できました。

何が七つの会議だったのか、よくわからなかったけど。(多分数えたら会議が7回あったのでしょう。)

個人的評価 4点/5点満点
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チワワちゃん、バーニング [映画]

早くも今年のベスト1、2か? 
どちらも2回観に行ってしまいました。
ストーリーの中心に不吉で大きな空洞がある、という基本構造が共通している点が少し興味深い、青春映画の傑作の2本です。

「チワワちゃん」
作家として、村上春樹と並ぶほどのサブカル影響力を誇る岡崎京子。彼女の作品の映画化としては、本作が間違いなくベストだと断言します。ちなみに私はこの原作を読んでおらず、また、なんか偉そうなこと書いてますが、彼女の作品をそんなに読んでいる訳ではないです。すみません。

東京湾でバラバラ死体で見つかった人気モデルの千脇良子、通称チワワちゃん。非業の死を遂げた彼女の生き様を、彼女の友人知人たちがリレー形式で回想していくという基本構造。

本作の勝因は、90年代の原作を、ケータイもSNSも当然な現代社会にアップデートしたことにあると思う。その方針を採用した結果、本作は日本版「スプリング・ブレーカーズ」と言うべき作品に。人工的なネオンのけばけばしい光線と、大音量のEDM音楽に彩られた、今どきの若者たちの享楽的で刹那的なパーティライフ、そしてエンド・オブ・サマー。盗んだお金で海までバケーションに繰り出す下りまで、まんま「スプリング・ブレーカーズ」。

しかし、そんな浮かれた若者たちの狂騒を描きながらも、死者への追想が物語の中心に配置されている基本構造ゆえに、どこかその裏側の感傷を行間で強く意識させるトーンが、この作品の大きな魅力だし、日本映画っぽいなあ、とも思った。その辺は、ハーモニー・コリンの本家と大きく異なる。

主演の門脇麦は、チワワちゃん本人ではなく、その友人の一人の役で、彼女の視点を通してチワワちゃんの物語が再構成されるという役回り。この人は絶好調です。他には成田凌、村上虹朗、筧一郎、玉城ティナといった人気若手俳優が脇を固めるキャスティング。中でも成田凌と筧一郎が素晴らしかった。肝心のチワワちゃんを演じた吉田志織という女優さんも、私は初めて見たのですが、ハマり具合が特筆に値します。チョイ役の浅野忠信がまた強烈で、本作のアンサンブルキャストは大成功です。

トランスだったり、かつての小室サウンドっぽい感じのキラキラした音楽は、映画の内容にジャストな感じでした。そしてエンディングテーマのHave a nice day!の楽曲は素晴らしかった。

個人的評価 5点/5点満点


「バーニング」
これって早くも今年の個人的ベスト当確じゃないかな・・・と観ている間じゅうずっと、そして観終わった後も、静かに興奮しながら考えていました。名匠イ・チャンドンの手による本作は、いうまでもなく村上春樹の短編「納屋を焼く」の映画化。春樹原作の映画化としては、本作が間違いなくベストだと断言できます!

主人公の青年の顔が、いかにも村上春樹の小説世界で僕って自称してそうな顔をしている。そんな主人公と対照的なもう一人の青年も、お洒落なカタカナ料理を得意そうに作っていて、いかにもハルキっぽい。そして非常に印象的だった本作のヒロインの佇まい、彼女が担うストーリー上の役割、やっぱりHarukiっぽい。

しかし村上春樹っていう先入観無しで観たら、本作はどこをどう切っても韓国映画。それは何よりも、ドライで荒涼とした世界観。韓国映画特有の殺伐さは、本作では押し隠され、しかし確実にどこかに潜んでいる気配が立ち込めていて、それはまさしく隠し味のように効いている。全編を貫く不穏な緊張感に痺れっぱなしの私には、2時間半近い上映時間が、正直あっという間だった。

作家志望のフリーターの青年ジョンスが主人公。ある日、幼馴染の女の子ヘミと偶然再会し、意気投合。アフリカ旅行に行くという彼女。やがてヘミは帰国し、その隣には彼女が旅先で親しくなったという青年ベンがいた。庶民的で貧しいジョンスとは住む世界が根本的に違うベン。ベンとへミは急接近し、ジョンスはそれを複雑な想いで眺める。

現在の韓国社会の格差問題を織り込んだ、異色な青春映画/ミステリー映画。メインキャストの3人が3人とも素晴らしく、中でも謎の金持ち青年エディを演じたスティーヴ・ユァン。アメリカのドラマで既に世界的に有名な人みたいですが、韓国出身でないからこそ、この役のミステリアスな感じがバッチリはまったのだと思う。

映画の冒頭のパントマイムの話が重要で、それは、猫、井戸、母親、ビニールハウスと、形を変えて繰り返されていくモチーフ。
この映画は謎で充満し、観ている側の想像力を否応なくかき立てながら、二人の青年の間に横たわる大きな格差と主人公の鬱屈、そしてマジックアワーの美しい光線の中に溶け込んでいくようなヒロインの生への渇望は、謎だらけの本作の中で、紛れもない本物であり、胸に強く訴えかけてくる。

とにかく、個人的には極上の2時間半。イ・チャンドン、洗礼の極み。
ところでクラブのシーンでかかっていたテクノが抜群にカッコよかった。

個人的評価 5点/5点満点



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