2012年 映画ベスト10 [映画 年間ベスト]
2012年総括パート1
映画編
1位~3位の間、正直、甲乙つけがたく、この順位付けは今日の気分に過ぎません。
1位 「DRIVE」
ニコラス・ウィンディング・レフン監督
主演ライアン・ゴスリング、共演キャリー・マリガン
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「オールド・ボーイ」と比肩しうる、暴力映画の新たな金字塔。
アメリカ映画の、マフィアものとウェスタンものの長い伝統を踏まえつつ、抑制とコントロールの緊張感を全体に張り巡らせ、やがてスクリーン全体に爆発する凄惨と狂気、生と死の無情。
2位 「ポエトリー アグネスの詩」
イ・チャンドン監督
主演ユン・ジョンヒ
人間の魂の尊厳と常に向き合う世界的名匠イ・チャンドン、新たな傑作。
詩を希求する無垢な老女。強姦事件を犯した孫。自殺した被害者の少女。
少女のような老女は、精神的な遍歴と通過儀礼を経て、ある境地へ到達する。
3位 「預言者」
ジャック・オーディアール監督
主演タハール・ラヒム、共演ニエル・アレストリュプ
移民社会フランスの縮図たる、他民族構成の監獄社会で展開する、仁義無き勢力抗争。
そこに放り込まれた無力な青年が、監獄の暗がりの奥で徐々に覚醒していく。
そして映画に謎をもたらす、“預言者”の存在。
フランス発「ゴッドファーザー」+「ショーシャンクの空に」
4位から10位までは順不同、観たもん順。
「あしたのパスタはアルデンテ」
イタリア映画。ゲイという視点を取り入れる事で、伝統的なイタリアの大家族という素材をアップデートさせた、モダンで可笑しいハートフル・コメディ。
家族に対する過去と現在、両方への視座を、見事にクロスオーバーさせる。
「サラの鍵」
過去と現在、二つの時制を並行展開させることで、ホロコーストの被害者の少女が辿った数奇で過酷な運命を現代の女性ジャーナリストが解き明かす、傑作歴史ミステリー。
「ダークナイトライジング」
冒頭、飛行機のシークエンスで観る者を圧倒する、敵役ベインの不穏な眼光。それはそのまま映画全体のムードを支配。
キャットウーマン他、群像活劇の趣きもエンターテインメント。
「ゲスト」(ホセ・ルイス・ゲリン映画祭)
個人的には今年べストの好企画だった、ホセ・ルイス・ゲリン映画祭。それを代表して。
映画祭の出品で世界各国を旅したゲリン監督。
街角の人々にカメラを向け、その声にひたすら耳を傾けて、いくつかの第三世界のリアリティが浮かび上がる。
「こっぴどい猫」
モト冬樹生誕60周年記念映画は、まさかのウェルメイドな恋愛群像劇の逸品。怒濤の三角関係の嵐、やり過ぎやろと思いつつ収束も見事の脚本力。
「容疑者 ホアキン・フェニックス」
カメラの前で何もかもをさらけ出し、ボロボロになっていく、オスカー俳優ホアキン。
やり過ぎです、JP、そんなアンタにリスペクト。
「サイレンス」(フィンランド映画祭2012)
静寂が支配する、稀有な戦争映画。
戦時における人間たちを描きつつ、そこに交錯する、スカンジナビアの深閑な白銀世界と、死者たちの声なき声。
次点
「キツツキと雨」
「ミステリーズ 運命のリスボン」
我ながら、何かミョーに狙いすぎな順位になった、と思う。
他には、
- 娯楽大作SFアクション系として
「007 スカイフォール」「ドラゴンタトゥーの女」「プロメテウス」「ホビット」
- ヒューマン・ドラマ系としては、
「人生はビギナーズ」「ファミリー・ツリー」「ミッドナイト・イン・パリ」
- 外せない、香港ノワールもの!
「ビースト・ストーカー」「盗聴犯 狙われたブローカー」「強奪のトライアングル」
- 大充実の大阪アジアン映画祭から、
先鋭の東南アジア発2作品「P-047」「浄化槽の貴婦人」と、ウェルメイドな中華圏発2作品「星空」「高海抜の恋」
- 今年も映画は全体的に、洋高邦低だった気がする。
そんな中で、個人的にとても満足 or 感動できた日本映画は、
「吉祥寺の朝日奈くん」「ふがいない僕は空をみた」「桐島、部活やめるってよ」「おおかみこどもの雨と雪」「ライク・サムワン・イン・ラブ」「この空の花 長岡花火物語」
- 他に非常に際立っていたと思うのは、音楽ドキュメンタリーの「ビーツ、ライムズ&ライフ A Tribe Called Questの旅」、エチオピアの現代史を題材にした「テザ 慟哭の大地」です。
次に俳優部門
男性俳優は今年は、例年以上の大豊作の感。
(下記の通り、挙げだしたら本当にキリが無かった。)
そんな中で個人的にベスト・アクターは、「プロメテウス」「SHAME」「フィッシュタンク」「危険なメソッド」で非常にアグレッシブだったマイケル・ファスベンダー。
僅差で、「ミロクローゼ」「その夜の侍」の自由な怪演振りが負けずにアグレッシブな山田孝之。
それと何と言っても、「容疑者ホアキン・フェニックス」で自分のキャリア2年間を丸ごとフイにしたホアキン・フェニックス。
「セブンデイズ・イン・ハバナ」「コッホ先生と僕らの革命」「みんなと一緒に暮らしたら」と出演作が相次いだダニエル・ブリュールも目立っていたなあ。彼の場合、この3作品、スペイン語圏、ドイツ、フランスとそれぞれ違う言語圏の作品で、今後ますますの多言語俳優な活躍を期待!です。
他にも、
「恋のロンドン狂騒曲」「MIB3」のジョシュ・ブローリン。
「人生はビギナーズ」「砂漠でサーモンフィッシング」のユアン・マクレガー。
「DRIVE」「スーパーチューズデー」のライアン・ゴスリング。
「ファミリーツリー」「スーパーチューズデー」のジョージ・クルーニー。
「ドラゴンタトゥーの女」「スカイフォール」のダニエル・クレイグ。
「ディクテーター」「レ・ミゼラブル」他、サシャ・バロン・コーエン。
「ミッドナイト・イン・パリ」「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」のオーウェン・ウィルソン。
「苦役列車」「北のカナリアたち」の森山未來。
などなど。こうしてリストアップしてみると、キリがない。多過ぎて、何かつまらん!
けど、「ダークナイト・ライジング」でベインを見事に怪演したトム・ハーディも絶対に外せない!
あと、「アルゴ」のベン・アフレック、「夢売るふたり」阿部サダヲもね。
女優陣。
「ダークナイト・ライジング」の華麗なるキャットウーマン、そして何より「レ・ミゼラブル」の坊主頭でのエモーショナルな熱唱ですっかりもってかれてしまった、アン・ハサウェイ。
彼女に決定で、異論なしでは。
次点クラスとしては、「夢売るふたり」の松たか子と、「ふがいない僕は空をみた」の田畑智子。
ともに、それぞれここ数年のキャリアで充実作が続いた中での、現時点でのベストワークかと。
あとは、「ミッドナイト・イン・パリ」「ミステリーズ 運命のリスボン」「シスター」「マリーアントワネットに別れを告げて」と出演作が相次いだフランスの新鋭レア・セドゥ。
それと、「DRIVE」「SHAME」と作品選びのセンスが抜群で、特に「SHAME」で一気に役の幅が広がったキャリー・マリガン。
最後にどうしても挙げておきたいのが、「ロック・オブ・エイジズ」のハッチャケ振りが、一体どうしたんだろう・・・と思わずにはいられない、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ女史であります。
蛇足ながら、キネマ旬報など日本の賞レースの予想。
洋画では、
「ファミリー・ツリー」「少年と自転車」「ミッドナイト・イン・パリ」「アルゴ」「レ・ミゼラブル」(←これは来年になるのかな)
日本映画では、本命不在っぽい気がするけど、「桐島」「ヒミズ」「わが母の記」「おおかみこども」当たりが有力と見た。
1/20 追記
キネマ旬報の2012年ベスト10が発表されてました。
日本映画は「かぞくのくに」。すっかり忘れてました。とてもいい映画だと思います、納得。
安藤サクラがこの映画で主演女優賞、意外だったけど、最近の彼女の活躍ぶりを考えればこれも納得。と思ったら、助演女優賞も彼女。
洋画はタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。これは、超意外。私は、実に睡魔との戦いでした。
こんなエクストリームな映画がベストワンなんて、キネマ旬報、捨てたもんじゃないですね。
映画編
1位~3位の間、正直、甲乙つけがたく、この順位付けは今日の気分に過ぎません。
1位 「DRIVE」
ニコラス・ウィンディング・レフン監督
主演ライアン・ゴスリング、共演キャリー・マリガン
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「オールド・ボーイ」と比肩しうる、暴力映画の新たな金字塔。
アメリカ映画の、マフィアものとウェスタンものの長い伝統を踏まえつつ、抑制とコントロールの緊張感を全体に張り巡らせ、やがてスクリーン全体に爆発する凄惨と狂気、生と死の無情。
2位 「ポエトリー アグネスの詩」
イ・チャンドン監督
主演ユン・ジョンヒ
人間の魂の尊厳と常に向き合う世界的名匠イ・チャンドン、新たな傑作。
詩を希求する無垢な老女。強姦事件を犯した孫。自殺した被害者の少女。
少女のような老女は、精神的な遍歴と通過儀礼を経て、ある境地へ到達する。
3位 「預言者」
ジャック・オーディアール監督
主演タハール・ラヒム、共演ニエル・アレストリュプ
移民社会フランスの縮図たる、他民族構成の監獄社会で展開する、仁義無き勢力抗争。
そこに放り込まれた無力な青年が、監獄の暗がりの奥で徐々に覚醒していく。
そして映画に謎をもたらす、“預言者”の存在。
フランス発「ゴッドファーザー」+「ショーシャンクの空に」
4位から10位までは順不同、観たもん順。
「あしたのパスタはアルデンテ」
イタリア映画。ゲイという視点を取り入れる事で、伝統的なイタリアの大家族という素材をアップデートさせた、モダンで可笑しいハートフル・コメディ。
家族に対する過去と現在、両方への視座を、見事にクロスオーバーさせる。
「サラの鍵」
過去と現在、二つの時制を並行展開させることで、ホロコーストの被害者の少女が辿った数奇で過酷な運命を現代の女性ジャーナリストが解き明かす、傑作歴史ミステリー。
「ダークナイトライジング」
冒頭、飛行機のシークエンスで観る者を圧倒する、敵役ベインの不穏な眼光。それはそのまま映画全体のムードを支配。
キャットウーマン他、群像活劇の趣きもエンターテインメント。
「ゲスト」(ホセ・ルイス・ゲリン映画祭)
個人的には今年べストの好企画だった、ホセ・ルイス・ゲリン映画祭。それを代表して。
映画祭の出品で世界各国を旅したゲリン監督。
街角の人々にカメラを向け、その声にひたすら耳を傾けて、いくつかの第三世界のリアリティが浮かび上がる。
「こっぴどい猫」
モト冬樹生誕60周年記念映画は、まさかのウェルメイドな恋愛群像劇の逸品。怒濤の三角関係の嵐、やり過ぎやろと思いつつ収束も見事の脚本力。
「容疑者 ホアキン・フェニックス」
カメラの前で何もかもをさらけ出し、ボロボロになっていく、オスカー俳優ホアキン。
やり過ぎです、JP、そんなアンタにリスペクト。
「サイレンス」(フィンランド映画祭2012)
静寂が支配する、稀有な戦争映画。
戦時における人間たちを描きつつ、そこに交錯する、スカンジナビアの深閑な白銀世界と、死者たちの声なき声。
次点
「キツツキと雨」
「ミステリーズ 運命のリスボン」
我ながら、何かミョーに狙いすぎな順位になった、と思う。
他には、
- 娯楽大作SFアクション系として
「007 スカイフォール」「ドラゴンタトゥーの女」「プロメテウス」「ホビット」
- ヒューマン・ドラマ系としては、
「人生はビギナーズ」「ファミリー・ツリー」「ミッドナイト・イン・パリ」
- 外せない、香港ノワールもの!
「ビースト・ストーカー」「盗聴犯 狙われたブローカー」「強奪のトライアングル」
- 大充実の大阪アジアン映画祭から、
先鋭の東南アジア発2作品「P-047」「浄化槽の貴婦人」と、ウェルメイドな中華圏発2作品「星空」「高海抜の恋」
- 今年も映画は全体的に、洋高邦低だった気がする。
そんな中で、個人的にとても満足 or 感動できた日本映画は、
「吉祥寺の朝日奈くん」「ふがいない僕は空をみた」「桐島、部活やめるってよ」「おおかみこどもの雨と雪」「ライク・サムワン・イン・ラブ」「この空の花 長岡花火物語」
- 他に非常に際立っていたと思うのは、音楽ドキュメンタリーの「ビーツ、ライムズ&ライフ A Tribe Called Questの旅」、エチオピアの現代史を題材にした「テザ 慟哭の大地」です。
次に俳優部門
男性俳優は今年は、例年以上の大豊作の感。
(下記の通り、挙げだしたら本当にキリが無かった。)
そんな中で個人的にベスト・アクターは、「プロメテウス」「SHAME」「フィッシュタンク」「危険なメソッド」で非常にアグレッシブだったマイケル・ファスベンダー。
僅差で、「ミロクローゼ」「その夜の侍」の自由な怪演振りが負けずにアグレッシブな山田孝之。
それと何と言っても、「容疑者ホアキン・フェニックス」で自分のキャリア2年間を丸ごとフイにしたホアキン・フェニックス。
「セブンデイズ・イン・ハバナ」「コッホ先生と僕らの革命」「みんなと一緒に暮らしたら」と出演作が相次いだダニエル・ブリュールも目立っていたなあ。彼の場合、この3作品、スペイン語圏、ドイツ、フランスとそれぞれ違う言語圏の作品で、今後ますますの多言語俳優な活躍を期待!です。
他にも、
「恋のロンドン狂騒曲」「MIB3」のジョシュ・ブローリン。
「人生はビギナーズ」「砂漠でサーモンフィッシング」のユアン・マクレガー。
「DRIVE」「スーパーチューズデー」のライアン・ゴスリング。
「ファミリーツリー」「スーパーチューズデー」のジョージ・クルーニー。
「ドラゴンタトゥーの女」「スカイフォール」のダニエル・クレイグ。
「ディクテーター」「レ・ミゼラブル」他、サシャ・バロン・コーエン。
「ミッドナイト・イン・パリ」「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」のオーウェン・ウィルソン。
「苦役列車」「北のカナリアたち」の森山未來。
などなど。こうしてリストアップしてみると、キリがない。多過ぎて、何かつまらん!
けど、「ダークナイト・ライジング」でベインを見事に怪演したトム・ハーディも絶対に外せない!
あと、「アルゴ」のベン・アフレック、「夢売るふたり」阿部サダヲもね。
女優陣。
「ダークナイト・ライジング」の華麗なるキャットウーマン、そして何より「レ・ミゼラブル」の坊主頭でのエモーショナルな熱唱ですっかりもってかれてしまった、アン・ハサウェイ。
彼女に決定で、異論なしでは。
次点クラスとしては、「夢売るふたり」の松たか子と、「ふがいない僕は空をみた」の田畑智子。
ともに、それぞれここ数年のキャリアで充実作が続いた中での、現時点でのベストワークかと。
あとは、「ミッドナイト・イン・パリ」「ミステリーズ 運命のリスボン」「シスター」「マリーアントワネットに別れを告げて」と出演作が相次いだフランスの新鋭レア・セドゥ。
それと、「DRIVE」「SHAME」と作品選びのセンスが抜群で、特に「SHAME」で一気に役の幅が広がったキャリー・マリガン。
最後にどうしても挙げておきたいのが、「ロック・オブ・エイジズ」のハッチャケ振りが、一体どうしたんだろう・・・と思わずにはいられない、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ女史であります。
蛇足ながら、キネマ旬報など日本の賞レースの予想。
洋画では、
「ファミリー・ツリー」「少年と自転車」「ミッドナイト・イン・パリ」「アルゴ」「レ・ミゼラブル」(←これは来年になるのかな)
日本映画では、本命不在っぽい気がするけど、「桐島」「ヒミズ」「わが母の記」「おおかみこども」当たりが有力と見た。
1/20 追記
キネマ旬報の2012年ベスト10が発表されてました。
日本映画は「かぞくのくに」。すっかり忘れてました。とてもいい映画だと思います、納得。
安藤サクラがこの映画で主演女優賞、意外だったけど、最近の彼女の活躍ぶりを考えればこれも納得。と思ったら、助演女優賞も彼女。
洋画はタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。これは、超意外。私は、実に睡魔との戦いでした。
こんなエクストリームな映画がベストワンなんて、キネマ旬報、捨てたもんじゃないですね。
2013-01-09 12:53
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