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百日紅、駆込み女と駆出し男 [映画]

たまたま同時期に公開された、江戸時代後期を題材とした人情もの時代劇2作品。

短編連作集的なストーリー構成、豊かな四季の自然や当時の町人文化の粋に目を奪われてしまう映像美、江戸期の人情の機微や粋な情緒を絶妙に落とし込んだストーリー。あとそれから、実力派を揃えたキャスティングとか。そんな共通性を感じた2本。

「百日紅 Miss Hokusai」
原恵一監督。原作は杉浦日向子。
葛飾北斎の娘お栄をヒロインとした時代劇ファンタジー・アニメ。
主人公の声を当てた杏、彼女の声の印象がまず非常に強い。ハマリ役だと思う。他にも松重豊、濱田岳、高良健吾、筒井道隆など、声のキャスティングは豪華。しかし、やはりこの映画は、主人公である杏の声の印象がずば抜けている。

ヒロインは父親譲りの才能を持つ絵師で、父と同居しながら父の仕事を手伝っている。サバサバした粋な江戸っ子気質の娘で、絵師としての仕事に情熱と誇りを持つが、お年頃なのに恋愛方面はからっきし不器用。そんなヒロインの日々を四季の移り変わりと共に描いていく。
なんですが、彼女の元に舞い込む絵の仕事の大半が、物の怪とか奇異ネタとかそんなんばっかり。ソッチ系を呼びやすい体質なんでしょうか。いや、優れた芸術家とは、おしなべて特別な“眼”を持つ存在である、ってことなんである。

江戸の街並みや田舎を舞台に、春夏秋冬を季節感たっぷりに描いたアニメーションの芸術性は絶品で、中でも夜のシーン、妖しげに闇が揺らめくような幻想美には強く惹き込まれてしまった。
ストーリーも、ファンタジーと人情味のバランスが実に絶妙で、中でも、主人公の盲目の妹の存在が余りにも無垢で、涙腺直撃。

老若男女問わず、非常に強くオススメする次第。アニメーションをそれほど熱心に観なくなってしまっていたので私の中でサンプル数は少ないが、アニメではここ数年でマイベスト3に確実に入る出来。もう一度映画館で観たい。

個人的評価 4.5点/5点満点 

「駆込み女と駆出し男」
井上ひさし原作、監督は原田眞人。主演は大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり。
江戸時代、女性の方から離縁する為には、縁切り寺の東慶寺に駆け込んで、そこで俗世から離れて3年経過しなくてはならない・・・古今東西で見られる女性蔑視の価値観って、おそらく人間社会における根源的な宿痾なんじゃないか、って気がする。

当時の女性の受難を描きつつ、互助的なシェルター生活の中で自らの尊厳を快復し、再び力強く立ち上がる女たち、そしてそれを支える周囲の人々の勇気と知性を讃える、モダンな感じの時代劇。
東慶寺とその下部組織である御用宿の人間模様を、時にユーモラスに、時に人情味たっぷりに描きながら、そのサンクチュアリに介入しようと画策をめぐらせる世俗権力のうすら寒さ、それとの対決が、この映画の一つのクライマックス。

主人公の3人も良かったのですが、それ以上に、この映画では颯爽とした御用宿の女主人の役を演じる樹木希林の存在感。あと、東慶寺の院代(長)を演じる陽月華が美しくてカッコイイのと、内山理名の相手役で、余りにも粗暴な剣豪を演じた男性の俳優さんがやっぱり強烈。

何と言っても題材が直接的に男女の色恋絡みであり、当時の浄瑠璃の心中モノみたいな、まあそこまで極端じゃないが、それに近しい価値観で動いていく人物群像が非常に面白かった。なかでも、満島ひかりと堤真一の話。マジで?って感じで、一気に持ってかれた。

個人的評価 4.5点/5点満点


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サンフランシスコ人

「百日紅 Miss Hokusai」....11/12から サンフランシスコのメキシコ街の映画館で上映.....

http://www.roxie.com/ai1ec_event/12768/?instance_id=16304
by サンフランシスコ人 (2016-11-12 07:04) 

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