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野宮真貴、ピチカートファイヴを歌う 2019-11-26 [音楽]

学生時代に大ファンだったピチカートファイヴ。今聴いてもセンスの塊としか言えないくらいの彼らの楽曲。2001年に彼らが解散してしまった頃にはさほど熱心なファンではなくなっていたのですが、今回、野宮真貴さんがピチカートの曲オンリーでライブを行うというので、遂に「メッセージソング」聴けるかも、或いは「サンキュー」「万事快調」「悲しい歌」聴けるかも(どれも当時死ぬほど大好きだった曲)、と期待と妄想が膨らんで滑り込みでチケットをゲットし、平日の夜に梅田まで出かけた。ビルボード大阪の第2部の方、21:30開演。勤務地から梅田は遠いけど、無理なく参加できる時間帯で本当に有難い。

この日は1部も2部もソールドアウト。2DAYS×2部公演の東京ビルボードも完売。凄い、いや当然か。キーボード、ギター、ベース、ドラムスのオーソドックスなバックバンド編成でステージに登場した野宮さん、「私のすべて」が1曲目! 出だしのナンバーとしてこの曲は完璧。そのオシャレ感が懐かしいやら嬉しいやら、と思ってたら、続く2曲目で早速、超ファンキーな「万事快調」!!!そして「ハッピーサッド」!! 嬉しい! 楽しい! 来て良かった本当に!!!とゆう気持ちになった。これが多幸感というやつか。
高浪敬太郎さんのペンによるの「Baby Love Child」も懐かしかった。

衣装直しで野宮さんが再登場し、これまた懐かしくて堪らなくなってしまう「Baby Portable Rock」に続いて、野宮さんが特にやりたかった曲として披露されたのが「きみみたいにきれいな女の子」「メッセージソング」「悲しい歌」の超名曲3連発。「メッセージソング」のギターのイントロが鳴った時に、そして「悲しい歌」のイントロが続いた時、もう信じられない気持ちで胸が一杯になった。特に、まさか本当に「メッセージソング」が、20年越しで、初めてライブで聴けるなんて。これは何かのご褒美なの?

当時、シングルでしか発表されなかった「メッセージソング」は、ピチカートファイヴの(当時の)パブリックイメージを思いきり裏切った、畳み掛けるようなBPMのドラムとラウドかつブルージーなギターサウンドに彩られたロックナンバーで、ちょうど良い機会なのでハッキリ宣言させてもらいますが、ワタシが生涯で一番好きな曲は、これか、フィッシュマンズ「ナイトクルージング」か、そのどちらかなんです。「悲しい歌」もまさに小西康陽なメロディとリリックの名曲で、当時本当に大好きでした。今でもね。

という訳で、「メッセージソング」「悲しい歌」は本当に感無量。
そして「マジックカーペットライド」でこの日の本編は終了。

もちろん、”ピチカートと言えば”の、あの曲もこの曲も未だ全然やってないじゃん、という全員の胸の中の想いに応えるかのようなアンコール(というかこれは第二部)で、「東京は夜の7時」でお客さん総立ち!その後「Sweet Soul Revue」から「Twiggy Twiggy」に至るまでの怒涛のダンスナンバーメドレーで、ビルボードは紳士淑女達の一大ダンスフロアになっちゃった!このマッドな感じもまたピチカート!

そしてダブルアンコールで、満を持して「陽の当たる大通り」。この曲は本当に泣きそうになるね。
学生当時聴きまくっていた曲の数々を聴くことができて、この日は自分にとって一生に一度の日となった。野宮さんには後光が指してた。シンガー/パフォーマーとして、野宮さんは特別。

ピチカートファイブは私にとって、それが自分にとって大好きな音楽だったら、他人が何と言おうと大好きでいいんだ、という当たり前のことを教えてくれた存在。そして今に至る、って感じなのですが、それはともかくとして、ピチカートファイブの楽曲は今聴いても全く色あせない感じがします。これからも思い出したように何度も聴き続けるのだろう。

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the band apart @ 滋賀U-Stone 2019-10-1 [音楽]

1週間前にたまたま購入した彼らの4曲入り新譜ミニアルバム『POOL e.p.』が余りにも素晴らしくって、バンアパのライブを観に滋賀まで出かけた。彼らのライブは久しぶり。

1曲目でいきなりの「light in the city」、まるで暴風雨のようなバンドアンサンブル。やっぱ観に来て良かった!と心の底から思った。続いて、早くも投入の「higher」、そして「Castaway」・・・序盤戦で既に、この日のバンアパやっぱり最高です!という気分。「Castaway」での原さんのシャウトに胸が熱くなった。前半に「I love you wasted junks & greens」まで披露されて、ここまでで、すさまじい満足感。

その後はMCを挟みながら、新旧織り交ぜセットリスト。久しぶりにライブで演奏する曲のコーナーが設けられていたり(「silences」懐かしい)、もちろん『POOL e.p.』からの曲も披露されつつ。POOL e.p.の曲は、これからの彼らのライブの定番になりそうな名曲ばかり。「ZION TOWN」のような最近の日本語歌詞の名曲も聴くことができて、バンアパらしいグッドメロディとテクニカルなアンサンブルを堪能。・・・と思ってたら、人気曲「coral reef」「Eric. W」やっぱいい曲。

終盤で披露された「ディア・ワンダラー」「夜の向こうへ」を聴きながら、夏のことを考えた。バンアパの音楽は本当に夏が似合うと思う。
アンコールで演奏された「最終列車」の抒情性も夏のソレだ。そんな感じでウットリしてたら、アンコール最後の「beautiful vanity」の激しさに圧倒された。本当にカッコいいバンドだなっー。改めて大ファンになってしまった。

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おとぎ話 @ 京都ネガポジ 2019-07-07 [音楽]

ここ数年の恒例行事となった、京都ネガポジワンマン。
京都は西院のライブハウス陰陽(ネガポジ)は京都における彼らのホームと言えるハコ。ちなみに西院は私の実家の近所である。懐かしい。

阪急の西院駅前に大きなショッピングビルが数年前に建設されたことを除けば、この辺は昔とそんなに景色が変わらない。阪急と京福(嵐電)が直結していないものの数分程度の距離で隣接しており(ちなみに阪急と嵐電で「西院」の読み方が違う)、飲み屋が軒を並べるこの界隈は、京都市内の繁華街の中では西の端、といった趣である。

古くからこのエリアにはウーララという非常にコアなライブハウスが存在していたが、そのウーララが西院圏内の別の建物に移動し、ウーララがいなくなったハコに、かつて烏丸丸太町近辺に位置していた陰陽が移転。さらにGATTAKAというライブハウスもあり、京都市内の中でも独特の磁場を形成している。そういえば数年前にウーララで、ザなつやすみバンドのワンマンを観に行ったなあ。

と長々と余談。それはともかく、抜群なのはおとぎ話と陰陽との相性。普段よりもコアな選曲のセットリストも期待大。日曜日にも関わらず仕事の残業が忙しく、一瞬行くのをあきらめたりしたのだけど、職場から車で1時間かけて直行。(そしてライブが終わったらトンボ帰り)

この日、行って本当に良かった。
この日のおとぎ話は、ヤバイを通り過ぎてエグかった。ハードコアでゴリッゴリなセットリストは攻めすぎ。
演奏も絶好調で、特に牛尾氏のギターは冴えまくり。全曲において、彼のギターソロが最高の見せ場。有馬氏のヴォーカルもリズム隊も絶好調、とくに前ちゃんのドラムは普段以上にのっていたと思う。有馬氏の佇まいはロックスター的なカリスマを感じた。これ、ハコとの相性というか、場所のマジックもデカイ。

一曲目は新曲? メディアムテンポでガレージマナーに溢れたインストナンバー。そのまま「ふしぎソング」に流れ込み、「ブルーに殺された夢」「遺伝子」とつなぐ。この日のカラーがはっきりと見えたのが、ハードな音塊でズブズブと沈んでいくような「純真」、そしてガレージサーフロックの「逃げんな」と彼ら流のラウドナンバーが立て続けに演奏された辺り。この流れをダメ押しするかのような「きゅーと研究会」(曲名と曲調のギャップが最高)。

このあたりで改めて気づかされたのが、このライブハウスの音の良さ。おそらくハコのサイズ的にも、彼らの音楽性とぴったりなのだろう。一音一音がクリアに分離されて、それらの音が組み合わさって一つの音塊を形成して耳に飛び込んでくる感じ。十三ファンダンゴ、或いは京都磔磔といった彼らがよく演奏するハコと彼らの音楽の相性は抜群なんですが、ここはそれ以上かも。

一通り演奏し終わってMCを挟んでからの「TEENAGE KIXX」からは、いわば第二部的な趣き。前半のコアな選曲とはうってかわって、比較的よく知られている楽曲を中心に構成され、なかでも、以前はライブの定番だったのが最近はあまりライブで演奏されなくなっていた名曲「White Song」が絶品。最初この曲を聴いたとき、このバンドは絶対に来る!すくなくともサニーデイサービスくらいにはなる!と確信したほどの名曲は、久しぶりに聴いたらやっぱり誰もが耳を奪われるほどの名曲だった。最近は「Smile」の前フリでサビが弾き語りで歌われるくらいの扱いだったこの曲、やはりおとぎ話で外せない代表曲の一つである。この曲と、その前に演奏された「Homework」(毎日働いて、という歌詞が、日曜にも関わらず職場から直行したこの日ほど胸に迫ったことはなかったです、本当に。)では天井のミラーボールが稼動。仕事が完璧である。

ひたすら楽しい「ピーターラビット」「Boys Don't Cry」、まるでサザンのような夏っぽさ満点の「セレナーデ」が披露された後の「光の涙」にグッと来てしまう。それまで頭の片隅で、仕事頑張れ俺。とつぶやいていたりしたのが、「光の涙」でそういう余計なことが頭の中から消えていった。「ファンファーレサーカス」の変幻自在な曲調に、この曲すげーな、と驚き、そして「COSMOS」はこの日はテンポコントロールが完璧。夢心地。

これで本編終わりかと思いきや、穏やかな「HISTORY」、そして本編ラストナンバーは、私の中で隠れおとぎ名曲No.1の「赤へ飛び込め」(!!!!!)
超名盤の2ndアルバム「理由なき反抗」に収録されたこの曲は、滅多に演奏されることのない曲なのだけど、何を隠そう、私がこのバンドのライブに本格的に入れ込んでしまったきっかけとなったのが、「理由なき反抗」がリリースされた頃の磔磔ワンマンで披露されたこの曲なんである。三軍の補欠選手が、いきなりワンマン本編ラストという一軍エースに抜擢されたような感じに、ひとり大興奮(この日のオーディエンスでこの曲に一番喜んでいたのは俺で間違いない)、quiet - loud - quiet のダイナミズム、特に叩きつけるような後半の爆発から静寂へのコントロール、何もかもが最高だった。

アンコールは、本編前半のラウドナンバー連発をこの1曲で釣り合わせるような名曲「綺麗」が絶品。そしていわずもがな、「SMILE」と「少年」も最高だった。

実はこの日は彼らの初ライブDVDのリリースタイミングであって、それをもじってライブタイトルは「Video Killed The O.T.G.V」だった。もちろん購入。だけど今の仕事の忙しさだったら、このDVDが見れるのはいつになることやら。


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Lostage / おとぎ話 @ 十三ファンダンゴ 2019-03-29 [音楽]

今年の7月をもって現在の場所での営業を停止する十三ファンダンゴ。そこでLOSTAGEが3月の最終週に7DAYSのライブを敢行。凄まじい企画。初日から6日目までは対バン形式で、最終日はワンマンという。俄然気になっていた初日のZAZEN BOYSとの対バンは、気付いたら即完。それと5日目の対バン相手がおとぎ話で、コレはワタシ的には見逃す訳にはいくまいと! そんなわけで怒涛のLOSTAGE 7デイズに、1日だけど参加しました。

平日の夜、仕事を切り上げて職場から十三まで移動。会場に到着すると、すでにおとぎ話の演奏は始まっていて、一曲目でLOSTAGEの曲をカバーしたらしい。私が観たのはその後の「綺麗」から。彼ららしいギターオリエンテッドなメロウナンバーが、ファンダンゴの空間を穏やかに満たしていく。かと思えば、「純真」の重心低めのヘヴィネス、「TEEANGE KIXX」「GANG STYLE NO.1」のポップなパンクネス・・・昨年年末のワンマンで見せてくれた絶好調モードは、まだまだ継続中。

初期の名曲「Night Swimming」「Boys Don’t Cry」では、否応無く彼らのファンダンゴ愛が溢れ出てました。そして定番の「SMILE」「COSMOS」も挟みつつ、LOSTAGEに捧げられたであろう「FUN CLUB」、風通しの良いメロディーが気持ちいい「ふしぎソング」と、まさに絶好調なグッドメロディと轟音バンドアンサンブルのコラボレーション。最後は「KIDS」で締め。尺的にも長めで満足。

そしてLOSTAGE。
この日のLOSTAGEは冒頭からキレッキレだった。

「僕の忘れた言葉達」から、最強の3ピースが三位一体でフロアに放り込む轟音の疾走、その快感。次の「窓」で、Bメロからサビの展開に頭の中は真っ白、思わず突き上げる拳。今日のLOSTAGEは今まで見た事のないLOSTAGEになることをこの時実感。いや、先行のおとぎ話のギター指数高めの快演で、私自身がすっかり出来上がっていたのも大きいかも。そして「NAGISA」が披露されて俺は歓喜。

暴風雨のようなビートの嵐、炸裂する問答無用のギターリフ、そして時にはシャウトまじりの五味兄貴のポップなメロディ。これぞジャパニーズ・オルタネイティヴ・ロックの最高峰。地元・奈良に根差し、音源の製作も流通もDIYする精神性と経営感覚も本当に素晴らしいと思うけど、この音の凄まじさ(しかも絶妙にポップ)こそ彼らの真価だと思う。

ファンダンゴで7日連続でギグをするということで、日替わりで色違いのTシャツを販売したりするのも、常軌を逸しているように見えて彼らなりの嗅覚と実行力、そして遊び心が伝わってくる。7日間通し券も販売されていて、買う方も相当のツワモノであろう。五味兄がMCで話していたけど、この一週間、毎日奈良から十三に通っていて、怒涛の七日間を最高の状態で乗り切るために節制に努めているとのこと。地に足を付けて、常軌を逸した企画を実行する。これぞ最高の大人の男ではないか。5日目で疲労が見えても不思議ではないのに、演奏もMCも絶好調だ。「今日が今までで一番イイ!」という野次がお客さんから飛んでいたくらいだった。

「BLUE」が投下。最高。それと最近、姫路のバンドであるbachoとスプリットで出した音源からの「Foolish」「こぼれ落ちたもの」も披露され、この疾走感こそ最強のロストエイジであると実感。「ポケットの中で」、それと多分昔の曲だと思うのですがスローな曲、演奏も歌唱もエモい終盤に、痺れました。

おとぎ話のナイスアシストも光っていたが、LOSTAGEは快挙。最終日のワンマンも観に行こうかしら、と思ったのだけど、ソールドアウト。一週間かけて間違いなくベストコンディションにビルドアップされていたであろう彼らのワンマンは観たかったなあ。ともかく、ローカリズムとDIY精神、そして徹底した現場主義の積み重ねで、十三に大きな花を咲かせたLOSTAGE、彼らは奈良の誇りであり、そんな彼らの在り方が、今後の日本のロックバンドにとって、大きなロールモデルの一つになると思う。




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冬にわかれて @ 旧グッゲンハイム邸 2019-3-24 [音楽]

前日のスーパーノアのワンマンライブが最高だったのに引き続き、この日は神戸塩屋まで赴いての旧グッゲンハイム邸、冬にわかれてのライブが最高でした。

夕暮れが近い時間帯、久し振りの塩屋。塩屋駅から会場までの短い道中だけでも、海と坂道と狭い路地で構成されているこの街の風情が少しは味わえる。そんな街で聴く、冬にわかれて。この日のライブが格別なものとなる予感は十分。

寺尾紗穂さんのライブは常に2部構成で、この日もそうだった。
優しいタッチの寺尾さんのピアノから始まる1曲目の「耳をすませて」から、3ピースのバンドアンサンブルがひたすら素晴らしい。歌心満点、さりげなく自己主張しまくりのあだち麗三郎氏のドラムプレイは実に愉しく、それとは対照的に黒子的なベースプレイが雰囲気ありまくりの伊賀航氏。そして寺尾さんは、ソロの時よりも、ピアノも歌も弾んでいる感じ。

彼女の歌を生で聴くと、大貫妙子/矢野顕子/荒井由美といった日本のシティポップスのレジェンドの名前を引き合いに出しても、なんら遜色ない感じだよな~と、この日のライブを拝見して改めて感じ入った。
といいますか、この日の3人のライブは、これが日本のシティポップスの最高峰!と言いふらして回りたいほどだった。旧グッゲンハイム/塩屋という場所のマジックも込みで。

もちろん、寺尾さんのソロの曲もセットリストに組み込まれ、なかでもエレピが気持ちいい「幼い二人」はバンド形態で聴きたかった曲なので感無量。また、伊賀さんやあだちさんによる曲も彼らのアルバムには収録されていて、伊賀さんの「白い丘」、あだちさんの「冬にわかれて」も前半に披露。そして彼女のソロ曲「アジアの汗」「お天気雨」での心が軽やかになるアンサンブル。第一部終了。ちょうどいい尺。

第二部は、「君の街」から。どの曲もそうだけど、「甘露日」のあだちドラムが最高で、「月夜の晩」のアンサンブルも本当に素晴らしくて、ここまで研ぎ澄まされて尚かつ楽しい演奏は、なかなか拝見できるものではないです。適度な緊張感を保ちながら、実に気心の知れた感のある3人の呼吸とリズムの会話。今日も実は他のバンドのライブとどっちにしようかずっと迷っていたのですが、正解でした。

大貫妙子のカバーや兵庫のわらべ歌?のカバー披露などの趣向を凝らしつつ、割と淡々とした口調で昨年他界された彼女のお父さんのお話をされて、その時の想いが籠った新曲も披露。終盤はあだちさんはサックスをメインにプレー。本編最後で披露された新曲も絶妙なポップ感で本当に素敵。アンコールでは「楕円の夢」でフィナーレ。

いやー本当に良いものを見れた。遠出してでも、もう一回見たいです。

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スーパーノア @ livehouse nano 2019-03-23 [音楽]

待ちに待ったスーパーノアの久々のワンマンライブ。場所は京都二条のnano。
一週間前にロットバルトバロンのライブで来たばかりである。そういやロットの時はWilcoの「Yankee Hotek Foxtrot」がずっと流れていたが、この日はAlabama Shakesだった。

スーパーノアにとってnanoは最も所縁の深いライブハウスなんだろうと思う。オリジナルメンバーのドラムの人が脱退する直前に開催された彼らのワンマンも、そしてイツキライカのレコ発ライブとしてスーパーノアとの 2マンライブ(つまり実質ワンマン)が開催されたのも、この場所だった。
奇しくも、nanoもスーパーノアも今年で15年目、とのことだった。

そしてこの日は私にとっても2019年前半の個人的ハイライトに位置付けられておりました。長尺のワンマンならではの過去曲披露が凄い愉しみでした。

で。いきなり一曲目が「飛行船」と来た訳ですよ。そして二曲目でいきなりブッこまれた「リリー」。さらにゴーストライターの曲、そしてダメ押しの「MADA」とライブ受け抜群ナンバーが立て続けに披露される序盤の構成。しかもさらに、大好きな「HARU」まで演奏されて、最初の数曲だけですでに私は高ぶってしまった。今日のライブは間違いない。

この日のサポートドラムは河嶋大樹さん。1曲目のイントロから、これぞロックバンドな暴れ太鼓っぷりで、その一音一音がひたすら心地よく体幹を震わせてくる。音の抜けが抜群に良いというか、やっぱりnanoは非常に良い音です。この日のライブは間違いなく彼がその快調なロックドラムで牽引している。 

新たなスタンダード「なつかしい気持ち」も出し惜しみなく前半で披露。そう、今年はナンバーガール。絶対に観てやるのだ。そんな気持ちを心に秘めながらこの曲に耳を澄ませたのは、この場で私だけではあるまいに。(はたしてチケット取れるんだろうか・・・?)

久々のライブ披露だった「crawl」は楽しいし、初披露された新曲は思いっきり新機軸で面白い。唐突だけど、Dirty Projectorは一昔前のRadioheadに近い影響力を最近の日本のインディロックシーンに与えていると思う。「たまたま」での直球なロックバンド・アンサンブル、「baby」で見せる繊細な歌心、曲ごとに変化するスーパーノアの様々な音楽性を満喫。尺の長いワンマンならではのだいご味でした。

やがて激アツな「渡り鳥」「ペダル」が続けて投下されて、nanoの気温は一気に上昇。この流れのピークポイントとして、すっかり仕上がった「Dream Theater」。そうして、nanoの天井から吊り下がったミラーボールを見ながら、聞けば聞くほど好きになってしまう「ミラーボール」に心ゆくまで浸り、とりあえず本編パート終了でした。もう大満足です。

アンコールで披露された静かなスロウナンバー「time table」がまたもや名曲。そして遂に鳴らされた「what light」のイントロのギターに、オーディエンスからも思わず歓声が。やっぱりみんなこの曲大好き。着実にキープされるミディアムテンポに乗せて構築されていく音の煌めき、その音の波間を漂う詩情。重なる轟音は加速し、nanoの内部に渦巻いて、そんなライブハウスでしか見れない光景に本当にわくわくする。これぞ京都の至宝、スーパーノア。

もっともっと!なダブルアンコールの拍手に応える形で、デビューナンバー(なのかな?)「雨の惑星ステレオの向こう」が披露されて、彼らの何年かぶりのワンマンライブは終わりました。

もっと世界に届いてほしい音楽だと思う。ところで京都の夜はまだまだ寒かった。




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Roth Bart Baron @ Livehouse nano [音楽]

いまだに読み方がおぼつかないRoth Bart Baron、今年1月に観たHEXツアーの大阪公演が非常に素晴らしく、今回の京都のライブハウスnanoでのライブも観に行ってしまいました。この日は、シャムキャッツの磔磔公演とどっちにしようかずっと迷っていたのだけど(京都で、ファン層もある程度共通するであろう両者が重なってしまったのは少し残念)、大阪のライブで圧倒された記憶が忘れられず。(ちなみにこれを私の中では3/16問題と呼び、懸案事項となってました。)

大阪アジアン映画祭で「ハイ・フォン」というベトナム産格闘アクション(素晴らしかったです)を大阪福島のABCホールで鑑賞してから、京都へ移動す。実はこのハシゴが可能かどうか?で、18時開演のシャムキャッツではなく、19時開演のロットを選んだのでした。

この日はRibet Townというバンドとのツーマン。
初めて拝見するバンドでしたが、ステージに乗っている人数の多さと密集度にまず圧倒され、前列の5人が女性、後列の5人が男性という構成が面白く、ベルセバっぽい楽しい雰囲気とグッドメロディを音数(楽器)の多さで豊かに彩ったステージングに魅了された。楽しいのは、何よりも正解なのである。

彼らのライブが終わって、ロットのライブが始まるまでの転換時に流されたBGMは、ウィルコの「Yankee Hotel Foxtrot」、一曲目の「I'm trying to break your heart」の印象的なイントロから、曲順をシャッフルせずにそのままずっと、しかもソコソコ大きな音量で。音響作品として極上な1枚であり、ソングライティングとアレンジセンスの観点からも間違いなくマスターピースであり、それをライブハウスの優れた音響で通しで聞くことは、まさに至上の喜び。結局、「Heavy Metal Drummer」ぐらいまでこのアルバムがかかってましたよ。夢心地。人生ベストワンの1枚である。

そして始まったロット・バルト・バロンのライブ。大阪の時と違って、今回は5人編成、つまりロットのお二人に、サポートの三人(数年前に大阪で何かの対バンで観た時と、たぶん同じ編成)による、ある意味でコアなロットバルトバロンをこの日は堪能した。人数が少なくなっても、彼らの音の世界は圧倒的だった。

曲名を全然覚えていないので、セットリストはあまり記憶がないのですが、確か「JUMP」で始まったと思う。HEX収録曲がメインながら、古い曲もバランスよく織り交ぜた構成。「Innocence」「電気の花嫁」「HAL」辺りが本当に素晴らしかった。

アンコールでは、「小さな巨人」や「氷河期#3」など。最後は観客の大きなコーラスに包まれたnano。本当に今のロットは見逃し厳禁ですよ。

さてこうなると、東京で5月に開催される彼らのフルバンドセットによるHEXツアーオーラスワンマンも観に行きたいところ。5月10日。たしか、おとぎ話の最後の十三ファンダンゴワンマンもこの日。私の中の3/16問題は、見事に5/10問題に切り替わってしまった。どうしよ。



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In da house (1日目)@ 旧グッゲンハイム邸 2018-4-20 [音楽]

しばらくザ・なつやすみバンド(TNB)のライブを観てないな〜、ということで、寒い冬の間、彼らのひさびさ関西ライブであるこの日が来るのを、実は密かに心待ちにしていたのでした。

二日間の日程で、TNBの出演は1日目。他には空気公団、テニスコーツ、東郷清丸、NRQなど、個人的に観たいアクトが1日目に集中しており、私はこの日だけの一日券。ちなみに2日目は片想い、三田村管打団、cero高城氏の新バンドなど。

この日は本当に気持ちが良いほどの快晴で、本格的に寒いの今日で終了!という感じの日。絶好のフェス日和と言えた。
タイムテーブルは当日まで非公開。開演時刻を少し過ぎた辺りで会場に到着し、トップバッターで既に演奏中だったのはNRQ。制作し終わったばかりという新作からの曲も披露されつつ、クールな「ボストーク」はじめ、熱い演奏にオーディエンスも熱い歓声と拍手で応える。

ライブが終われば、ステージのある部屋の扉が閉ざされて、その中でセットチェンジ。その間はお客さんは、会場の中庭で出店しているオシャレなフード/ドリンク関係のブースで、フェス気分を満喫。旧グッゲンハイム邸の階段を初めて上がってみた。2階のテラスからは快晴の塩屋の海が一望。ああ、天気も最高だし、何か適度にユルくって、素晴らしいわこのフェス。

二番手の東郷清丸は、バンド編成でずっと観たかった人。サポートのドラムとベースを率いての3ピースバンド体制、ドラムは何とあだち麗三郎。軽快かつファンキーなリズム隊が素晴らしく、それに乗っかる東郷氏の、永積崇を彷彿とさせる天性のボーカルセンスとカッティングギターも実に気持ちがいい。フレッシュなファンク・ミュージック。めちゃくちゃかっこいい3ピース。「サマタイム」「Super Relax」「ロードムービー」などキラーチューンも軒並み披露。コレを見る事が出来ただけでも、今日来た価値があった。

その次のyumboは初めて聞くバンドだったけど、コレがまた素晴らしかった。楚々とした女性vo.の歌の世界に寄り添う、ピアノとドラムを核に、ギター、弦楽、金管楽器が音を重なり合わせる楽団スタイルのバンド。一聴して地味ながら、惹きつけてやまない何かが確実にそこにある。何というか、路傍の花のような力強さと美しさ。日々の生活に根差した音楽に宿る至高。しかもそのバンド名が、何ゆえyumbo。TNBの中川さんとシラさんが2曲参加、そしてテニスコーツの二人も1曲参加。その曲ではさやさんがヴォーカルを取り、yumboのヴォーカルさんとはまた違った柔らかい感じが極上であった。

ザ・なつやすみバンドは、たぶん1年以上ライブを観ていない。そうなると、2016年の夏の大阪ワンマン以来ってことか。「せかいの車窓から」で始まったこの日のライブは、新曲メインのセットリスト。新作が待ち遠しい。バンドやろうぜ的な新曲が特に良かった。アレンジを変えた「スパサマ」では、相変わらず中盤の「毎日が夏休みだったら、いいのになあ」のキラーフレーズに、フッと感傷的な気持ちにさせられてしまう。その叶わない願いの、無邪気さと切なさに。
そういや、彼らの初映像作品であるライブDVDが、彼らのライブ会場限定で昨年から発売されていて、そのDVDをゲットすることもこの日の私の主な目的の一つなのであった。ようやくゲットできて嬉しい。

この日の空気公団は、サポートドラムのオータコージさんがいない、メンバー3人だけのライブ。山崎ゆかりさんの歌の世界、日常に根ざした彼女の歌が放つポエジーは、実はバンドの編成とはあまり関係が無いなあ、とつくづく感じた。まあでも次は、生ドラムを効かせたバンド編成で聴きたい。一曲、中川さんとシラフが参加。

初めて見るSTUTSは、この日のイベント名を一人で背負うかのようなダンスミュージック。まだまだ元気な若者たちをロックさせていた。私はそろそろいい感じに疲れてきて、踊る人たちを横目で見ながら、早くも素晴らしい1日が終わった時に感じる心地よい充足感に包まれていたのですが……だがしかし、この日の最高の音楽体験は、このあとだった。

トリのテニスコーツ。最後の彼らだけ野外でのライブパフォーマンス。暗くなり始めた中庭という空間で、中庭に集まったオーディエンスと向かい合うように、地面から一段高い縁側に腰掛けた二人。まるで近所からふらりと現れたような佇まいである。そして何気なく始まったアコースティックライブ。さやさんの柔らかな歌声と染み渡るようなピアニカ、植野さんの優しくて素敵なアコギと歌声。

彼らの音楽と共に聞こえてくる、ドップラー効果を効かせた電車の通過音、急き立てるような踏切のサイレン、風に流された塩屋駅のアナウンス。あるいは、家路を急ぐ夕暮れの海鳥やカラスたちの鳴き声。塩屋というロケーションで鳴っている日常的な環境音が、この日のテニスコーツの音楽の一部と化しているような感覚。ふと振り返ると、一心に彼らの音楽に耳を傾けるお客さんたちや出演者たち。多分、同じことをみんな考えている。このライブ、特別すぎやしないか?

そして、目の前で演奏しているテニスコーツは、不意にヒップホップに挑戦し微笑ましい雰囲気を作り出し、かと思えばPerfumeの曲を激アツなアコースティックアレンジで披露して喝采を浴びていた。自由でアーティスティック。

この日の旧グッゲンハイム邸は、塩屋という山と海に挟まれた日常空間の中に出現した、束の間の非日常的音楽空間で、その結界の外には、この町の日常と生活が普通に広がっている。建物の外側でプレイしたテニスコーツの二人は、結界の中と外を結びつけ、この街の日常の景色の中に、音楽の奇跡を溶け込ませた。この日の光景はきっと忘れないと思う。

アンコールでは、ゑでゐ鼓雨麿さんも飛び入りで一曲参加。そして最後は、マイクを使わずに生声と楽器の生音で「月の音」。断言してもいいけど、この日この場所にいた人たちは、みんなハッピーな気持ちで1日を終わらせたと思う。
最後の最後でテニスコーツに持ってかれてしまった1日。



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大根仁監督の(中略)観る会@出町座、ストップ・メイキング・センス@京都みなみ会館 [音楽]

ゆら帝の解散直前の日比谷野音ライブDVDの上映会が、大根監督のトークショー付きで出町座で開催され、行ってきた。そのDVDは所有していて2、3回は観てますが、ゆらゆら帝国のライブ映像を映画館の優れた音響設備で観ることができる機会を逃す訳にはいかない、という思いにかられ、しかも大根監督自身の話が聞けるというのも興味をそそられた。

このイベント「大根仁監督の自他共に認める(だけど普段は上映されない)傑作をみんなで観る会」は二部構成。第一部がゆら帝日比谷野音Live、第二部がスチャダラパーの「スチャダラパーの悪夢」。せっかくなので両方予約した。

まずは第一部のゆら帝。この作品がライブ映像として傑作なのは二重の意味があって、一つ目は、このロックバンドの解散直前、最高到達点にある3人のライブパフォーマンスが味わえる音楽作品として。そして二つ目はそのライブパフォーマンスをユニークな映像センスで切り取り編集してみせた映像作品として。

夕闇が到来する直前の野音の空から、野音に集ったオーディエンス達の様子へと、そしてステージ上のゆら帝の3人の姿へと緩やかにパンしていくカメラ、それに重なる穏やかな「星ふたつ」で幕を開ける本作。その次の「ソフトに死んでいる」でギアシフトし、不穏な熱気が湯気のように映像の中に充満。「アーモンドのチョコレート」や「夜行性の生き物3匹」のような分かりやすいロックナンバーは言うまでもなく、「タコ物語」「無い!!」のような変則的ミディアムナンバーにおいて、よりいっそう、このバンドが到達したアンサンブルの音楽的凄みを堪能する。いつの間にか日が暮れていて真っ暗になっている。時間軸が少しずれてしまったような感覚に囚われる。

月並みな見解だが、ゆらゆら帝国を孤高の存在にまで高めたのは、そのイマジネイティブかつユーモラスな独自の歌詞世界にあると思う。ただのファンタジーではなく、異界が日常と地続きにあることを察知し、その異界にアクセスしてしまう感性。その特異さこそ、坂本さんのリリックの強烈な個性である。

そしてそれが本作において、日比谷野音という舞台装置との相乗効果によって、よりいっそう際立つ。昼から黄昏時、そしていつの間にか夜に移行しているという野外会場の特性は、このバンドが持つ日常から異界への越境感覚と明確にリンクする。そして、ステージの背景にそびえ立つ官公庁のビルディングのオフィスの光、或いは日比谷公園の木々のシルエット。それら日常の光景をバックにしながらステージ上で繰り広げられている異形な音楽、その言い様のないギャップ。

同じ日比谷野音を舞台にしたライブ映像作品として、本作と同じくらいに、この場所の持つ特殊性を顕著にしてみせる作品が、クラムボンの日比谷野音ライブである。岩井俊二監督が(彼とクラムボンは「リップヴァンウィンクルの花嫁」つながり)パッケージングしてみせた去年の野音ライブDVDの方も素晴らしいのだけど、そちらではなく、2004年ごろの日比谷野音ライブDVDの方をやはり推したい。この映像作品で、彼らは完全に独自のポジションを獲得した、或いは、その事を広く周知する事に成功した。そしてそのライブ作品において顕著だったのが、日比谷野音という場所が有する日常と非日常の越境性と、クラムボンの音楽との間の強い親和性であり、化学反応だった。

そのクラムボンDVDの方では、会場を埋め尽くすような圧巻のシャボン玉光景によって、そのことが強く視覚化されていたのだけど、このゆら帝の本作においてはそれは、やはり、このバンドの代名詞と言える、坂本さんのギター(それとマラカス!)にある、と言えようか。

とにかく名演に次ぐ名演なんだけど、すごく変なカメラワークが時折インサートされ、それがまた本作の異界感を際立たせる。首から上がカメラのフレームの外に出ていて写っていないカットとか、不自然にフラフラと左右移動するカットとか。虫の視点のような魚眼レンズとか。

上映後の大根監督の話によると、撮影当日は大根監督は、予算の都合で、モニター無しの状態だったとのこと。カメラクルー達に大まかな事前指示は出していたものの、実際には個々のカメラマンが現場で勝手に撮影し、編集でそれらの撮影素材を切り貼りして繋いでみせた、とのこと。つまり現場で大根監督が全てコントロールしていた訳ではなく、それが結果的に良い方に転んだ(というよりそれを楽しんで編集した大根監督のセンス)、という。そんな非常に興味深い裏話を聞けただけでも、今日は来た甲斐があった。

ちなみに、本作の中で監督自身が一番気に入っているナンバーは、「無い!」とのことだった。
私は「ロボットでした」でした。

なお、ゆら帝はもう一作野音ライブDVD を出しており、そちらも傑作なので、両方おススメする次第。

さて、第2部の「スチャダラパーの悪夢」。こちらは、なんか大人の事情とやらでソフト化されておらず、上映されること自体が非常にレアな作品。SDPの全国ツアーにカメラが同行する形で、オフステージにおけるSDPの3人(プラス、第4のメンバーと言って差し支えないロボ宙、それにマネージャーやスタッフたち)の様子をドキュメントするパートと、ステージ上の彼らのライブパフォーマンスを捉えたライブパートを交互に見せていく構成。

ライブパートの音響的迫力はさすが!、なんですが、ドキュメンタリーパートこそが本作「スチャダラパーの悪夢」の骨子となっていて、どのような悪夢が展開されるのか、については、ただのネタバレになるので書かない。まあ、ネットで検索すればどっかに書かれていると思う。根本的にふざけてます。リリー・フランキー、ピエール瀧、山下敦弘監督といったゲスト陣(ライブパートではbirdとか)の出現も楽しかった。

上映後には、本作における狂言回し的役割を演じる岡宗秀吾氏と大根監督とのトークショー。それも面白かった。結構キワドイ話もあったりした。


話は変わって、本当に惜しまれる京都みなみ会館の閉館。私が映画好きになったのは、20代半ばでこの映画館に出会ってしまったせいである。

閉館前の1週間は特別上映プログラムが組まれ、日替わりで、過去にみなみ会館でかかった映画の中からセレクトされた38作品が日替わり上映された。その中で、RCS時代のみなみ会館を語る上で最重要作品といえる「ストップ・メイキング・センス」が、閉館1日前の金曜日の夜、という、非常に意義深い時間帯でセレクトされ、私は未見だったので観に行った訳ですが、この作品は多くの古参京都みなみ会館ファンにとっては思い出深い作品なのだろう。金曜の夜という時間帯のせいもあるけど、閉館を惜しむお客さんで満席だった。

デヴィッド・バーン率いるトーキングヘッズの超絶ライブパフォーマンスを映画化した本作。コレが、本当に見事なライブ作品で、一曲目の、まだ若々しいデヴィッド・バーンが、アコースティックギターとラジカセを抱えたスーツ姿で一人で登場し、寂れた倉庫街のようなセットとリズムボックスによるビートをバックに、ギターを弾きながらノリノリで歌い踊る一曲目のサイコキラーから、目が覚めるほどに抜群にカッコいい。カッコいいという形容詞が、本作のデヴィッド・バーンにピッタリである。

トーキングヘッズの曲を全然知らない私でも最初から最後まで楽しめる傑作。アフロっぽい人力反復ビート、パーカッションやコーラス隊を従えた豪華なバンド編成とデヴィッド・バーン含む演者たちのダンスによって獲得された祝祭性は、彼らの後世への影響力の高さを強く実感させた。唯一知ってた曲は、ショーンペンがゴスなロックスターとなってナチハントに出かける映画の中で、デヴィッド・バーン自身が歌ってた「This Must Be The Place」。この「ストップ・メイキング・センス」でも中盤で披露されるこの曲、改めて、本当にいい曲だ。ふと、YMOの影響があるのかも、と思ったりした。

翌日にクローズしてしまう京都みなみ会館、そのスクリーンの中に広がる、40年前の狂騒のステージ。それはそれで感慨深いものがあった。その最終公演、私は最後の最後で間に合った。
この作品を見ながら、先日観たゆら帝ライブDVDのことをふと思い出したりもした。映画館でこれらの音楽ライブ作品を体感することの満足感と余韻。どちらのバンドも今は存在しない。そんなことを考えると、その最高到達点のライブがこうして見事にパッケージングされていることの奇跡を感じる。

映画館で音楽ライブ作品を楽しむのも、また一興。



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寺尾紗穂 @ 清谷寺 2018-03-04 [音楽]

この日は午前中に橿原方面に用事があったので、ついでに足を延ばして吉野のお寺で真昼の寺尾紗穂さんのコンサートを観に行った。会場は吉野町の清谷寺。

この日はそれまでの寒さがウソのような小春日和の晴天。しかしそれはこの時季においては、完璧な花粉日和である事を意味しており、つまり銃弾が飛び交う戦場の真っ只中に飛び込むような覚悟を決めて向かう必要があった。いまのこの時季、吉野はスギ花粉地獄なのである。

折角吉野まで行くのだから、と、かねてより気になっていた吉野の超有名な秘境ラーメン「ラーメン河」(この店名のネーミングセンスは抜群だと思う)に初挑戦しようとするも、お店に着いた午後1時前、お店の前には順番待ちの人達、そして閉店を告げる無情の立看板。つまり本日分ソールドアウト! 売り切れタイミング早いなあ〜。仕方がないので退散した。結果、私の中で秘境感は倍増した。

さて、近場の茶店で昼食を済ませ、i-phoneのナビ機能を頼りに何とか清谷寺に到着。
13:30開演のこの日、駐車場に車を停めて外に出ると、頭上からは一番手のMANAMA x iki yol のエキゾチックなインストナンバーが良い音で聞こえていた。スーフィズムの宗教音楽やイベリア半島の民族音楽やギリシャの民族音楽をベースにした生演奏が、クラブで演奏されていてもおかしくないような抜群のサウンドシステムで鳴らされていて、しかもそのロケーションが吉野の山に四方を囲まれた、高台に位置するお寺のお堂。しかも真昼間。 この音と場所のミスマッチさに若干クラクラきた。

会場内には、移動本屋さんと、一軒だけだったけどドリンク/フードの出店もあって、軽くフェス気分。小春日和とは言っても時間が下がると少し肌寒く、暖かいコーヒーとお汁粉は非常に美味だった。ボリューミーな清谷寺コロッケは完売で食べること叶わず。客層としては、こんな山奥まで来る熱心なファン、だいたいオシャレでフェス慣れしてそうな人達。中には子連れファミリーも数組いて、小さき子供達は演奏中にも関らず会場内を自由にうろついている。一方で、そんな音楽ファンとは少し毛色の違う人達もいて、多分地元の人達だろう。

二番手は御所市在住のアーティスト、桶田知道という青年。電子音楽をバックトラックにギターロック的ポップソングを歌うシンガーソングライター。まだ作りかけの新曲、と言って歌い始めたギター弾き語りの曲が、この人の本質をよく語っているような気がした。

そして本日の主賓である寺尾紗穂さんは、ピアノ弾き語りの二部構成コンサート。「立つことと座ること」から始まった第一部では、折坂悠太さんの曲や、タイトルだけでインパクト抜群、けどそれ以上にその歌詞の見事さに胸打たれる「骨壷」などで、ワタシを含むオーディエンスの感動をさらっていく。

それとこの人は何気にトークが上手である。面白い話をするとかそういう事ではなくて、自分の考えや今の興味の対象なんかを、落ち着いたトーンと平易な言葉で語っていく。さすがルポライターとしても活躍されている人だな〜と思った。ラジオのパーソナリティーに向いていると思う。

10分ほどの休憩を挟んだ第二部では、直前でこの日のセットリストに入れたという、はじめ人間ギャートルズのEDテーマ曲(「やつらの足音のバラード」)カバーが絶品! 久しぶりに聴いたこの歌、脳内に子供の頃の再放送の時間帯の記憶がフラッシュバック。そして、歳を取った今だからこそ理解できるこの歌の壮大なスケール感、山と青空に取り囲まれた野外というシチュエーションにヤバイほどのハマり具合。この人の凛とした歌声とピアノの響きに乗って、マンモスを追いかけた遠い荒野の祖先たちの営みが青空の向こうに拡散していく。

渾身の「たよりないもののために」で彼女の弾き語りパートは一旦終了して、そのまま、本日の一組目と二組目の演奏者たちが登壇。彼女のピアノ弾き語りを堪能しつつも、ステージ上に残されたままの楽器の配置を見て、実は秘かにあるのではないかと期待していた合同セッションが、目の前で現実に。本当に来て良かった。移動本屋のお兄さんもベースで参加して、総勢6人のバックバンドを引き連れたバージョンで寺尾紗穂さんは「楕円の夢」「アジアの汗」の2曲を披露。ピアノの弾き語りとは違った、各々の楽器の音が豊かに融合して情感とグルーヴを作り上げていく、本当に本当に贅沢な音楽の時間が目の前にあった。

セッションが終わり、演者たちが袖に引っ込んでもアンコールを求める拍手が鳴り止まず、アンコールは寺尾さんの弾き語りでGEZAN「エンドロール」カバー。この曲のメッセージそのまま、一人一人の旅は続く。いい余韻に浸りながら会場を後にした。そのうちラーメン河に再挑戦しよう。

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