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Facing The Winds (なら国際映画祭2018) [映画]

奈良在住でありながら今年初めて行って来ました、なら国際映画祭。
つっても1日だけ、そして2作品しか観ることができなかったのですが、その2本とも秀作で、そのうちの1本であるこの作品には本当に満足。

本作はスペインの映画、もう1本(「Hurry Slowly」)はノルウェーの映画。他にもアルゼンチン、ネパール、中国、韓国、メキシコ、ニュージーランドと、世界の若い風を感じさせてくれるこの映画祭の志を支持です。

スペインの女性映画監督さんの長編初作品。主人公はピナ・バウシュ系ダンサーの中年女性。ブエノスアイレスで都会生活を満喫している彼女の元に、スペインの妹さんから、実家の父の危篤を知らせる電話が入り、急いで帰郷。そして、今までほったらかしにしていた家族と向き合うことになる、という粗筋。

ストーリーの進み方は淡々としている。序盤に大きな出来事が配置されているものの、それ以降、物語を劇的に転がしていくドラマチックさは薄い。ひたすら主人公と彼女の家族の日常によって、物語は進展していく。しかしながら、登場人物たちの感情の揺れ、変化はしっかりと描写されていて、取って付けたようなドラマ性がなくても物語の足腰がしっかりしていて飽きない。

何よりも舞台装置としての、スペインのブルゴス地方の季節感豊かな自然。その雄大で美しい映像がパワフルなんである。そして、音。冒頭のブエノスアイレスの稽古場のシーンから、主人公の故郷の荒野をごうごうと吹き付ける風の音まで、シネマの暗闇の中で音が五感を揺さぶる。この音と映像のコラボレーションはまさに映画体験だと思う。

故郷を離れ、ダンス・アーティストとして生きて来た主人公は、唐突に田舎の親の面倒を見ることになり、アーティストな魂と、娘としての親に対する義務感、この二つの間で主人公は内面に分裂を抱え込む。その葛藤がどのような結末に向かうのか。これが本当にお見事でした。

個人的評価 4点/5点満点

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