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盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲 [映画]

インドの映画ですが、コレが抜群の面白さでした。ストーリーの予想不可能さ、二転三転四転と物語が延々ツイストしていく感じに、すっかり夢中に。この完成度は「パラサイト」にも全然負けてない感じです。

盲目のイケメンピアニストが主人公。ピアニストとして無名の彼が、そのハンディキャップとは裏腹な音楽的才能によって、ジャズピアニストとして職を得て、評判も上がり、彼女もできて・・・と順風満帆。この手の映画では外せないショーアップされた演奏シーンも、ボリウッド的というよりも完全にハリウッド的。てっきりこのまま今っぽい感じの音楽映画が続くのかと思いきや、ある出来事をきっかけに、ガラリと映画の様相が変わる。・・・本当に見事だ。

主演の男性俳優がスターっぽくて演技も非常に達者なのですが、途中からグイグイ前面に出てくる悪女役の女優さんがとにかく存在感強し。ただの悪役ではない深みがあって、相当ヒドイ事しているのに(思わず唖然とします)、その腹の括りっぷりと秘かな逡巡との間の感情の揺れ動きとか、細かい表情のニュアンスで心の内面を絶妙に表現していて、本当に巧かった。

「インドのコーエン兄弟」という評価を聞いて、まさにそんな感じと思った。いや、ストーリー展開のキレ、起承転結の見事さは、それ以上。チョイ役と思われた人たちが、中盤以降に物語の重要な駒として、突如ガンガンに暴れ出す感じとか、最高に面白かった。

個人的評価 5点/5点満点


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架空OL日記 [映画]

バカリズムが銀行OLを演じ、同僚のOL達とダベったり愚痴ったりしている日常を淡々と切り取る。という字面だけ読むと、静かに狂ってる感がジワジワ漂ってきますが実は向田邦子賞も獲っている、数年前の伝説的?深夜ドラマがついに映画化。でも映画化だからと変にお金をかけたりドラマチックな展開を取り入れたりしない(大半の、というかほぼ全ての日本のテレビドラマの映画化が失敗作なのは、それが原因)。そこが本当に素敵。

キャストは前回に引き続き夏帆、臼田あさ美、山田真歩と完全通好みの並び。中でも夏帆の安定感と、ここぞの場面での突破力が素晴らしい。佐藤玲、三浦透子の注目若手も含めて、このキャスティングは本作の結構重要な肝だと思う。更に映画版ではシム・ウンギョン(彼女の選球眼も素晴らしい)、坂井真紀、志田未来、石橋菜津美と、ことごとくイイところを突いてくるピッチングです。

見れば見るほど癖になってくるバカリズム・ワールド。それはテレビでも映画のスクリーンでも変わらない。狙って大技を披露しない感じ。能ある鷹は爪を隠すって言いますが、爪を隠していることが誰から見ても明らかな感じ。もちろん脚本はバカリズムですが、監督を本職の別の人に任せていて、その辺にも彼の本質的な頭脳明晰さが表れている気がします。エンディングのなんとも言えない感じがまた、「・・・ああっ!」てなって、そしてジワジワきます。

個人的評価 4点/5点満点

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ダンサー そして私たちは踊った [映画]

グルジア(ジョージア)を舞台にした青春映画。グルジアとジョージア、どっちが正しいだろう・・・。ジョージアって明らかに英語読みだし、やっぱグルジアなんかな。舞台はグルジアなんですが、監督さんのレヴァン・アキンがスウェーデン出身なので、スウェーデンの映画ということになっている。グルジア国内では同性愛が違法になっていて、この作品も上映禁止になっている、という事情もあるのかもしれない。

グルジアの民族舞踊に打ち込んでる青年が主人公。民族舞踊といっても伝統芸能というより、動きが激しくて、モダン&スタイリッシュな感じ。実家で家族と同居し、苦しい家計を助けるためにバイトにも精を出しつつ、国立舞踊団に所属し、その中でもトップクラスの実力を持つ。ダンスパートナーで彼女っぽい存在の女の子もいる。そんなある日、人懐っこい感じの一人の青年が入団して、徐々に主人公と惹かれ合っていく訳です。

この二人の若い役者が抜群にいい。溌溂として、時に繊細で、印象的で目が離せない感じ。そしてエモーショナルでダイナミックなダンスシーンがまた抜群にカッコいい。特に主人公を演じた人は元々ダンサーで、本作が初演技とのことなんですが、ダンスにも演技にも惹き込まれる。

主人公には、同じ舞踊団で将来を嘱望されていた兄がいて、兄弟の仲はいいんですが、言動はいかにも保守的かつマスキュリズムな感じで、自身のセクシャリティに徐々に目覚めていく弟と対比的に描かれる。この兄ちゃんが物語の上でキーマンの一人で、彼の存在によって、本作は社会的な重層性を効果的に獲得することに成功していると思う。

社会の様々な軋轢の中でもがきながら、自分の生き方を模索していく主人公の戸惑い、痛み、希望。スクリーンに刻み付けられた鼓動とステップ。世界の辺境から出現した青春映画の新たなクラシック。

個人的評価 4.5 点/5点満点


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