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スリービルボード [映画]

早くも今年のベストワンかもって感じ。圧巻。

娘を殺害された母親が見せる不屈のファイティングポーズ。しかしその矛先は、犯人ではなくて、いつまでも犯人を見つけ出すことができない地元の警察の警察署長。更にその警察署長は悪党でもなければ無能な男でもなくて、周囲の信望も厚いなかなかの人格者。しかも病魔に侵されている。しかし彼女はこの署長への糾弾の手を緩めない。それが、娘を何者かに焼き殺され、事件の捜査が一向に進展しない状況に業を煮やした彼女が選んだ正義だった。

メインキャラクターを演じる3人の俳優が3人とも名演。フランシス・マクドーマンドの女性タフガイぶりは、おそらくハリウッド映画史に残るほど。警察署長役のウディ・ハレルソンはまさに彼にぴったりのハマり役・・・まあ重病という設定の割にはガタイが良すぎる気がしますが。そしてレイシストの警官を演じたサム・ロックウェルには、脱帽です。

娘を殺された母親が地元の警察を挑発するという初期設定からして一筋縄ではいかない。ストーリー展開もまた一筋縄ではいかず(だからこそ見応え満点なんだが)、人物造形も同様である。安全な場所にいる人間たちの甘っちょろい正義感を粉砕してしまうようなタフな世界観がそこにはある。

直接的な暴力シーンは比較的少ないものの、暴力という本作のテーマは不穏な通奏低音として映画全編を貫いている。なかでもフォーカスされているのが、怒りという感情。ここぞとばかりに炸裂するバイオレンスシーンや燃えさかる炎のビジュアルには重いインパクトがあり、特にあの殴り込みの長回しは、瞬間的に本作品が映画的沸点に達する強烈な場面。
そこからあの病院のシーンに至るまで、一筋縄でいかない展開だからこそ、深く心を揺さぶられる。

典型的な、アメリカの退屈な田舎の風景を雄大に捉えた映像の美しさも、本作の重要な構成要素。登場する人々の佇まいは、その、アメリカ内部の”取り残された”地域の風土と一体化し、「ファーゴ」「ウィンターズ・ボーン」といった作品の系譜の中に本作も連なる。

主演の3人だけでなく、軽薄な広告代理店の若社長を演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズなど脇役のアクター達も非常にいい仕事してます。あの小人の俳優さん、なんかの映画で見かけた気がするけど、とてもいい役者さんだと改めて思った。それと主人公の息子、この人もどっかで見たことある顔だな〜と思っていたら、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の現代っ子青年。何という仕事運。

個人的評価 5点/5点満点

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