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ボードウォーク・エンパイア [テレビドラマ]

海外ドラマはあえて観ない事にしている。
観たら最後、ハマってしまって自分の時間がますます無くなり、取り返しがつかなくなりそう。

しかしマーティン・スコセッシ製作、禁酒法時代のギャングもの、と聞けば、チェックせずにはいられないでしょう。
しかも主演がまさかのスティーブ・ブシェミ。

「ボードウォーク・エンパイア」
http://www.wowow.co.jp/drama/boardwalk/intro/

S. ブシェミが演じるのは、ニュージャージー州アトランティックシティの収入役にして、シティの闇経済を牛耳る影のボス、ナッキー・トンプソン。当時の実在の政治家である。
時代は禁酒法施行直後の1920年代、世界史的に言えば第一次世界大戦が終戦し、戦争の痛手が消えないヨーロッパと対照的にアメリカが空前の好景気を享受していた時代。

街の利権を握り、表の顔と裏の顔を巧みに使い分けて、彼は、大歓楽街を抱えるこの大西洋沿いの風光明媚なこの観光都市に、強大な自分の帝国を築き上げていた。

第一話の冒頭、彼の人物描写でドラマは始まった。
禁酒法成立の大きな原動力となった婦人同盟の集会において、堅気の政治家として禁酒法の道徳性を称えるスピーチをおこない、拍手喝采を浴びるナッキー。
その裏では、夜のキャバレーでの有力者とのパーティーの席上で、禁酒法による密造酒の高騰とその莫大な利益性を高らかに宣言しながら、酒を飲み、若い愛人を侍らし、享楽を謳歌する。

しかし、彼が目をかけていた部下のジミー(マイケル・ピット)が引き起こした、ある大きな事件を発端に、このダークで暴力とメランコリーに溢れた大河ドラマは大きく動き出す。

ナッキーとジミーを渦の中心に、彼らの周囲の近しい人間達と、NYのギャング、シカゴのギャング、国税庁の禁酒法取締捜査官らの思惑や生き様やを激しく交錯させながら、当時の時代背景を要所要所で絡ませつつ、物語は転がっていく。

とは言っても、しばらくの数回は、何かをしながら片手間にこのドラマを観ていた様な感じで、テレビの画面から溢れ出す様な極上の映像世界に魅せられながら、物語の筋を追っていただけだった。

それが最近とみに面白く感じる様になったのは、ナッキーの怒りを買って街を放逐され、シカゴのギャング(あの有名なアル・カポネ)の元で風来坊な日々を過ごすジミー(彼はおそらくナッキーの隠し子だ)の動きが、彼の知性と行動力、その裏にある戦争体験の傷、心の繊細さといったものが、俄然ドラマの前面に出て来たからだ。

それと同時に、悪人でありながらも時折、過去に捨て去った色々な何かを思い起こす様な、深い表情を漂わせるナッキーの二面性も、回を追うごとに魅力を増している。

他にも、

街の保安官という自分の立場を利用して兄ナッキーの裏ビジネスをサポートしながら、実はナッキーに複雑な思いを抱く、弟のイーライ

堅気の女性でやがてナッキーと惹かれ合っていく未亡人マーガレット(おそらく、ドラマの最終的なキーパーソンかな?)

犯罪を暴く為には常軌を逸した行動も厭わない禁酒法捜査官のネルソン(断トツで一番強烈な人)

異様に喧嘩っぱやいが、シカゴに逃げて来たジミーを匿い彼の相棒となる、若き日のアル・カポネ

慇懃で寡黙なポーカーフェイスの裏に強欲で冷酷な顔を覗かせるNYのギャング、ロススタイン

など、非常に興味深い登場人物達が物語を動かしていく。

当時の風俗や街の景色などを再現した映像もとても魅力的。

映像のトーンは、正統派のマフィア・ムービーそのもので、暴力的・退廃的で非常に格調高く、一種の宗教性すら帯びている。
血と暴力に染まったアメリカの歴史そのものへの宗教性である。

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