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ストレイト・アウタ・コンプトン [映画]

2014年に閉館となったMOVIX橿原が、知らない間にユナイテッドシネマ橿原と改称されてリニューアル・オープンしていた。個人的に思い入れのあったシネコンだったので、これは嬉しかった。しかも、4DXが入っている! 思い切ったなあ。

再度スターウォーズを今度は4DXで観るべきか、それとも特別価格で上映されてる海街diaryやセッションももう一度チェックすべきか、なんてことを考えつつ、観に行ったのは、えらく評判の高い「ストレイト・アウタ・コンプトン」。
で、年初めで早くもこんなにパワフルでリリカルな青春/音楽映画の傑作に出会ってしまった感に、興奮冷めやらず。

ギャングスタ・ラップの創始者的ヒップホップ・クルー、N.W.A.。彼らの結成と成功、そして、分裂といがみ合い。これはゲットーの貧困や暴力、そして不当な人種差別という環境を生きる黒人の若者たちが、音楽という武器でのし上がり、成功を手にした途端に何かが崩れ去ってしまうという、骨格のストーリーラインはきわめてクラシックな、いわば王道の青春映画である。

メインとなるキャラクターは3人の若者で、1人は元ドラッグディーラーでグループのリーダーEasy E、1人は天才トラックメイカーDr. Dre、もう1人は天性の怒れるリリシスト/ラッパーIce Cube。この3人を演じる若い黒人俳優たちが、エモーショナルにそれぞれのキャラクターを演じ切っていて、すこぶる素晴らしい。ちなみにアイスキューブを演じるのは、アイスキューブ本人の息子である。
そしてこの3人に並ぶ重要人物として、白人のマネージャーをエネルギッシュに演じるポール・ジアマッティの強い存在感。山師的な雰囲気をプンプンさせつつ、ただの悪役ではない複雑で興味深いパーソナリティを、銀髪姿で異様に演じる。

ギャングスタ・ラップがアメリカのチャートを賑わし始めた当時、音楽的に何が良いのか、どうしてアメリカで爆発的に人気を獲得したのか、私はサッパリ判らなかった。この映画を見て、時代的/社会的な文脈はよく分かった気がする。
あとは、やっぱりライブシーンの迫力は、この映画の最大の白眉である。特にアイス・キューブが、自分達の世界のリアリティを巧みなフロウで叩き付けるようにラップしながら、抜き身で自己の才能を最大限に顕示する姿が、痺れるほどカッコいい。

マッチョイズムと暴力礼賛、そして貧困と裏腹の成金趣味に彩られながら、しかしこの映画のトーンは本質的に、喪失に対する哀悼であり、かつての美しい友情とギラついた野心に対する回顧の感情である。ゲットーに生きる若者達のリアリティに立脚した、パワフルで切ない青春映画の傑作。

個人的評価 4.5点/5点満点



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