SSブログ

ラフィキ ふたりの夢、ロニートとエスティ 彼女たちの選択 [映画]

世界からLGBT系映画の秀作2本。雰囲気や設定が対照的と言えば対照的なんですが、突き刺さってくるエモーションは同じベクトルというか。こういう発見があるから映画は止められない。

「ラフィキ ふたりの夢」
ケニア発、ガール・ミーツ・ガールの青春ラブストーリー。主人公は、ベリーショートの活発な女の子。男の友達とつるんでばかりいる彼女が、虹色ドレッドヘアの女の子と密かな恋に落ちる。若い二人の爽やかな恋路、しかしやがて直面するシビアな現実。

同性愛が禁止されているケニア本国では上映禁止。しかし本作は、明確に世界市場を見据えたハイレベルな恋愛映画だと思った。何というか、もっさい感じが一切ないのだ。シンプルでビビッド。青春映画としても突き刺さるものがあるし。カラフルな色彩感覚と今っぽいナイロビのストリート感覚を前面に打ち出していて、とにかくオシャレ。これ、私がここ最近で観た中で最もオシャレな映画。重さと痛みも含めて。

照り付ける太陽のまぶしさと、夜の闇の美しさ、思い出したのは「ムーンライト」でした。主人公の容姿もなんか似てるし。

個人的評価 4 点/5点満点


「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」
トランスジェンダーをテーマにした前作「ナチュラル・ウーマン」に引き続いての、チリの俊英セバスティアン・レリオ監督の最新作。ちなみに「ナチュラル・ウーマン」は2018年のアカデミー外国語映画賞を取っている。レイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムスの二人を主演に迎えた本作は、スペイン語圏から英語圏にステージを移し、カラフルなチリのサンディエゴからくすんだ色調のロンドンに映画のルックもガラッと変えていて、しかし前作と同じスピリットに貫かれた素晴らしい作品。

ロンドン市内の、正統派ユダヤ教徒の保守的なコミュニティ。その保守性に反発して故郷を飛び出し自由に生きる女性が、高名なラビだった父の死をきっかけに戻ってくる。彼女を出迎えた父の愛弟子と、その妻。幼馴染のこの3人、何か訳アリっぽい感じなんですが、この3人の関係性を主軸にストーリーが進む。

保守的な規範と古い因習に支配されたコミュニティを舞台としていて、色彩も光線も俳優の演技も、意図的に抑制された絵作り。なんですが、そんな抑圧の中で秘められた感情が顔を出し、衝動となって溢れ出すさまが、本当に狂おしい。そうして最後、体面も外聞もかなぐり捨てて発せられた言葉に、理性も感情も揺さぶられ、モーレツに感動しました。

宗教あるいは共同体と、個人。この単純な対立項を逸脱していく点に、映画という表現手段に掛けるこの監督さんの強い信念と芸術家魂を感じる。思い出したのは、ヤスミン・アフマドの「ムアラフ」とか。地味なようで、実はコレ傑作です。原題の「Disobedience」(不服従)も深い。

俳優も素晴らしかった。特に、レイチェルとレイチェルに挟まれた格好の男性の俳優さん、多分初見?なんですが、本当に巧い。

個人的評価 5点/5点満点



nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。