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銀杏BOYZ / KING BROTHERS @ Big Cat 2016-1-23 [音楽]

この日は、本当に首を長くして待ちかねていた、バンドでの銀杏BOYZ、久々大阪ライブ。西宮の狂犬キンブラとのツーマンである。

たまたま何かで見たGoing Steadyの「若者たち」のPVが余りにも鮮烈で、その頃はちょうど、自分にとって、ナンバーガール解散直後の心の空白を埋める存在を探していた時期だったのだと思われる。で、そのPVを見て、とにかくこのバンドは凄いと衝撃を受け、俄然注目しだしたらその直後にあっけなくゴイステ解散のニュース。

次が映画「アイデン&ティティ」。主演の峯田和伸というアフロヘアの青年の雰囲気と佇まいは、「若者たち」での残像と重なって、強く印象に残った。

そうして、2005年1月に同時リリースされた銀杏BOYZの2枚のデビューアルバムのポップ&ディストーション、そしてディープなギターロックサウンドのインパクト。両方とも70分越えのトゥーマッチさも含め、ものの見事にハマってしまう。そしてその後、実際に目の当たりにした暴風雨直撃のようなライブパフォーマンスに、私は吹っ飛ばされる訳である。

それはまさに、リミッターを振り切ったノイズ&シャウトのシャワーで、ボーカリストは唾を吐くわ額から血を流すわ、骨折して松葉杖してるわ、それでも暴れ散らすわ、本当にどうしようもない。

しかし、このバンド4人全員が全身全霊の捨て身のていで放出する、それらの全てが渾然一体となった獰猛な騒音と喚き声の洪水は、まさにその暴走の中で剥き出しとなった彼らのありのままの姿、つまり言っちゃえば魂が、音楽として鳴らされている状態に他ならなかった。その熱量はオーディエンスの熱狂によって更に増幅され、ライブハウスの暗闇の中で、あるいは野外フェスのステージ上で、余りにも熱く眩しく煌き、その光景は、見ている人間の胸をストレートに撃ち抜いてしまう。
銀杏のライブは自分にとって強烈な体験だったし、ナンバーガールのライブで受けた衝撃に正しく匹敵するものだった。

ドブネズミみたいに美しくなりたい。私はこの歌詞の意味するところが、それまでは、正直よく分かっていなかった。しかし彼らのライブを何度か観ているうちに、ここにそのドブネズミがいる、と強く思うようになった。
トラッシュそのものの音楽が、圧倒的に美しかった。・・・クサイ表現だが、まさにそんな感じだった。

フェスなどで彼らのライブを何度も観て、ザゼンボーイズとの対バンなどは、当時の自分にとっては相当に画期的であった。
しかしやがて、幾つかのライブやリリースはあったものの、レコーディング中という状態のまま、長い沈黙に入ってしまう。あの東日本大震災の後、ようやく重い腰を上げて東北ライブハウスツアーを敢行したので、これでついに復活かと思いきや、再び長い沈黙。そして、新作はもう出ないだろうと誰もが確信してから、まさかの新作完成間近のニュース、それと同時発表された、アビちゃんとチン中村の(やがて村井君までも)バンド脱退の知らせ。ここまでくると、もはや何というか、最後の最後で燃え尽きてしまった(この4人+αの共同体としては)、と思わざるを得なかった。

新譜の音は、かつて自分が聴き狂った2枚のアルバムの濃密さとは違う感じの濃密さに溢れていて、打ち込みサウンドへの向こう見ずな接近は単純に面白かった。だけど私の中で熱はもう去っていた。
他の3人が脱退してしまった以上、銀杏BOYZ=峯田和伸となってしまったけど、バンドを一から募集するということだったので、とにかくバンドでのライブを気長に待つことにした。

で、ついに新生銀杏BOYZのお披露目である。

イベンターの方がステージに登場し、この日の対バンの先行は銀杏BOYZであることを告げると、オーディエンスがステージ前に殺到する。
やがて一人でステージ現れた峯田氏、弾き語りで新曲「生きたい」が披露された。赤裸々な歌詞を心の奥底から振り絞るように歌う。孤独でヘビーな曲だった、歓声を上げるオーディエンスもいなかった、皆が息を殺すようにしてこの新曲を聴いていた。やがてバックバンドの3人が登場し、「まだ見ぬ明日に」が爆音で演奏された。サポートメンバーは、元Andymoriのベースとドラム、そして元シガベッツで一時期くるりのサポートギターもやってた山本幹宗。3人とも巧い。

ソロの弾き語りで始まって、バンドによる怒涛の演奏に突入していく「光」は、やはり圧巻であった。メロウなメロディラインが美しい「べろちゅー」は、銀杏としては異色なほどの真っ当な両想いラブソング。そしてイントロだけで嬉しくなってしまう「Baby baby」・・・待ってたぜ! という感じ。
「ぽあだむ」は、音源の素晴らしさをこの日のライブでは超えていなかったが、ラストの曲「愛してるってゆってよね」は従来の銀杏のイメージを裏切る気楽さが非常に良かったと思う。

後攻はKing Brothers。ケイゾウとマーヤ、彼ら二人は気付けばベテランと言っていいほどの息の長い活動をしている。いい意味でいつまでも変わらない、ガレージロックへの一徹ぶりは、もはやジョンスペンサーを超えて、どっちかといえばギターウルフである。
トリオ編成に回帰した今の体制のライブを観るのは初めてだったけど、サポートのドラムスがカッコよくてライブ映えという点では全くの文句なし。そしてオーディエンスの上にダイブしたマーヤが、そのままオーディエンスの上に立ち上がり、その状態でBigcat内部を一周するという、まるで神の奇跡のようなパフォーマンス。下の人たちに色々指示を出しているのが笑えて最高だった。

最後は、3人ともステージからフロアに降りてきて、ドラムセットもフロアの床に組まれ、オーディエンスに360度囲まれた状態で、最高のロックンロールパフォーマンス。文句なしに最高である。この日の対バンのピーク。オーディエンスも沸騰。

アンコールでは、峯田をステージに呼び出し、「あいどんわなだい」を峯田Vo、キンブラ演奏で特別セッション。これは本当にいいものを観れた。銀杏だけ聴いて帰っちゃった人たちは猛省してもらいたいものだ。

サポートメンバーを迎えた状態での銀杏のお披露目ライブを観ることができたのも嬉しかったが(今後に大いに期待)、それ以上に、キンブラの男気とプロフェッショナリズム(という表現が適切かどうかわからんが)に胸が熱くなった夜だった。


ハナレグミ @ フェスティバルホール 2016-1-22 [音楽]

ハナレグミのレコ発ツアー、バンド編。

意外だったのは、この人がここフェスティバルホールでライブするのは、今回が初めてだったこと。しかし、まるでこの会場が、全てを勝手知ったホームグラウンドであるかのように、彼は振る舞い、素晴らしいライブパフォーマンスとリラックスしたMCで観客をもてなし、そして何よりも彼自身がバンドとの演奏と、大阪のお客さんとのコミュニケーションを楽しんでいた。
そして、サスガ大阪を代表するコンサートホールである。彼の声も含めて個々の楽器の音の像がクリア、しかし全体として音がまろやかな感じ。これはPAの方の力も大きいのだろう。
本当に素晴らしいライブを観た。

サポートメンバーは、ドラムに菅沼雄太、ベースに真船勝博、キーボードにヨッシーさん、サックスに武嶋聡、トランペットにイッチーさん、と3/5がエゴラッピンなメンツ。

新譜の一曲目のインストナンバーで心地よくスタート。チェンマイって行ってみたい。次の「360°」は名曲!永積崇の声だからこそ、この曲の素晴らしさが際立つ。そしてこの早い時間帯で「大安」!!
もうスッカリ、極上のハナレグミ・タイムに会場全体が楽しくてシアワセで仕方が無い雰囲気に包まれた。

「フリーダムライダー」「金平糖」「旅に出ると」「ぼくはぼくでいるのが」といった新譜に収録されている名曲(このアルバムは本当に良い曲ばかり)が立て続けに披露された前半。すごい贅沢な体験をしていると思った。「金平糖」や「旅に出ると」は本当に大好き。

やがてバンドが引っ込んで、ソロの弾き語りで数曲披露。Yo-Kingと共作の「祝福」や「光と影」、「家族の風景」・・・泣く子も思わず黙ってしまうであろう名曲が続いたこの曲の並びは本当にヤバイ。彼の天性の歌声と爪弾くギターの音がホール内を優しく温かく満たしていく。

しかし、やっぱりこの日のライブのメインディッシュは、ソロ弾き語りモードではなくてバンドモード。再びバンドメンバーが再登場してからの後半パートは、文句なしで最高に楽しいパーティータイムのひととき。オーディエンスのナチュラルハイな盛り上がりも本当に最高な雰囲気。永積さんとバックバンドのグルーヴもいい感じにリラックスしつつ、終始ゴキゲンである。ラストは「あした天気になれ」でした。

アンコールの一曲目は、RADWIMPS野田洋次郎による「おあいこ」。先ほどまでのゴキゲンなパーティータイムとは打って変わった、聴く者を静かに圧倒する入魂の歌と演奏。その楽曲としての強度は「光と影」に匹敵する。静かに張り詰めた空気を彼自身のMCが打ち破って、「逃避行」でもう一度オーディエンスと一緒に大盛り上がり。盛大な歓声と拍手に包まれて、ダブルアンコール。そして弾き語りで「いいぜ」。うわ〜、もうたまらんわ。名曲・名演の嵐。最後は「ハンキーパンキー」。

ハナレグミ、めちゃくちゃカッコいいですな。人として。このカッコよさは奥田民生に匹敵すると思う。
早くも今年のベストライブに決定かも。

カーネーション @梅田Shangri-La 2016-01-16 [音楽]

カーネーション恒例の年末の東名阪ツアー、大阪会場を予定していたシャングリラがブッキングの手違いによって使えず、心斎橋の別の会場で振替公演されたのだが、直枝さんの、この体制でシャングリラでやりたい!という熱い意思のもと、そのリベンジマッチが年明け早々にシャングリラで開かれた。
チケット代は3000円という特別価格設定。そして今回のメンバーは、サポートギターに松江潤(スーパーギタリスト!)、サポートキーボードにsugerbeans、そしてドラムスはお馴染みハリーさんという布陣。

開演時刻から5分くらい遅れてしまい、入った時にはノスタルジックな「Planet Radio」の演奏中。1曲目は「New Morning」だったらしい、聴けなくて残念。次の「Utopia」でトップギアに。直枝さんの隣で弾きまくる松江潤のギターの音が本当に気持ちいい。
カッティングギターに、ベースとドラムとエレピが一体となって、螺旋を描くようにファンキーに高速でグルーヴしまくる「バタフライ」が、本当に圧巻。拍手喝采。
そして7インチで出たばかりの新曲「アダムスキー」は、まさにカーネーションの王道を行く、彼ららしいポップネスに溢れた中年男子的ギターロックチューン。終演後、アナログプレイヤーを持っていないのに、思わず購入してしまった。その後で「まともになりたい」という新曲も披露された。この日はあと「メテオ定食」という「アダムスキー」7インチのB面曲も披露されたのだけど、これもとても面白い曲で、新たなライブの定番になってくれそうな気がした。

「やるせなく果てしなく」「ANGEL」の名曲が続けて披露されて、ライブが佳境に差しかかったタイミングで、松江潤のソロの曲「Fatty」が、彼のヴォーカルで演奏。ポップで可愛いギターロック。いい曲だった。

そしてついに・・・私が密かにここ数年待ち望んでいた「ヘヴン」のイントロ。この隠れた名曲は、なかなかライブで演奏されない曲だけに、まさに感無量。この日が3000円ってお得すぎる。松江氏のシューゲイザーなギターによって、轟音の浮遊空間が目の前に出現。ズシリと重いグルーヴで空間は埋め尽くされ、その中を泳いでいるような感覚。矢部浩史のメロディラインを歌う直枝さんの歌もゾクゾクする。久々に、やっとライブで聴けた! 以前聴いたのは、4-5年前の心斎橋クラブクアトロでのワンマンだった。

そのまま、カーネーションの曲の中で多分一番好きな「Super Zoo!」まで! この日のセットリストは凄すぎる。やはり松江潤のギターによる音のレイヤーが抜群で、この曲のミドルテンポで続いて行く疾走感は何度聴いても飽きないのである。そしてカーネーション史上で一、二を争うポップソング「I Love You」で目の前の視界がパッと開かれて行く。

本編ラストは「Real Man」「Edo River」。言うまでもなく鉄板。最高。

アンコールでは、太田譲さんVo.で「夕暮れバッティングマシーン」。やはり「Parakeet & Ghost」はカーネーション史上でも屈指の名盤と言えると思う。そして「Velvet velvet」「ロックゾンビ」で大いに盛り上がり、最後は「夜の煙突」でこの日もめでたく大団円。

とにかく松江潤さんのギターと、極上のセットリスト。まあセットリストに関して言えば、過去の名曲の数が彼らは本当に多すぎて、どの曲をやっても感無量のセットリストという事になるのだけど。



サニーデイサービス @ メルパルクホール大阪 2015-12-20 [音楽]

この日はYeYeの磔磔ワンマンもあり、そっちにも行きたかったなあと思いながら、新大阪駅へ。サニーデイサービスのワンマン、会場は初めて行ったメルパルクホール大阪。この会場はレッキとした、素晴らしき音響のコンサートホール。そしてこの日のサニーデイのライブは、ドラムが晴茂さんでは無かったのがやはり残念だったけど、その代役、初恋の嵐の鈴木正敏氏の卓越したドラムのおかげもあって、事前の期待値を遥かに上回る最高のロック・コンサート。年間ベストライブ級。
会場も良かった。格式のあるこのコンサートホールで観る彼らのライブは、ライブハウスや夏フェスの時とはまた全然違った趣向があり、サニーデイの音楽性に見事にハマった気がする。
実際に、直前まで行くべきか迷っていたが、観に行って正解だった。

広いステージ上に素っ気無しに配置された、2本のマイク、その脇のギターとベース。その2本を底辺とする三角形の頂点の位置に、もちろんドラムセット。
かつてサニーデイのライブは、3ピースではなく、2人のサポートメンバー(新井仁/ギターと高野勲/キーボード)を加えた5人編成が常態だったと思う。そして、この5人編成で行われた、活動再開以降は初の全国ツアー、関西公演は今は亡き心斎橋クラブクアトロ。この時の5人編成のワンマンライブで、サニーデイサービスというバンドに対する私のイメージは一新された。そこのいたのは、基本的に、そして徹底的に、ライブバンドだった。そしてそれはロックバンドの理想の到達点にいるように見受けられ、完成されていて、同時にラフだった。もちろんその時のライブは最高だった。

しかしここ最近は、オリジナルの3ピース編成にこだわったライブ活動を重ねている。今年に入ってフェスでのライブを2本観たけど、どちらも感無量な気持ちにさせる素晴らしいライブだった。3人で演奏されることで、個々の楽器の音の存在感が増して、全体としてアンサンブルは骨太になり、元々独特のグルーヴが持ち味のバンドだったけど、その独特のグルーヴ感がもっと突き詰めて追求されている感じ。
そして満を持して、今回の3人編成での冬の全国ホールツアーである。

ふらりとステージに姿を現した3人、ライブが始まって、「baby blue」「恋におちたら」と、サニーデイのスタンダードナンバーがいつものシンプルさで淡々と奏でられた序盤。その流れで「スロウライダー」も。「96粒の涙」が初めてライブで聴けたのは嬉しかった。

MCも無く、黙々とストイックに曲を演奏していく3人。そんな彼らの姿によって、当初は心地よいリラックス感が広がっていた会場全体に、徐々に異様な緊張感が醸成されていく。ステージの背後はホワイトスクリーンのようになっていて、昼間から夕方を経て夜に至る時間の経過がスクリーンのバックライトによって表現されていて、そのシンプルさ故に、芸術性と視覚効果はどんな舞台装置よりも高かった。まるで、空気のきれいな高原で、澄んだ青空から夕暮れ、そして満天の夜空と移り変わっていく中で、彼らの野外ライブを心ゆくまで鑑賞しているような気分を味わった。

フォーキーな「枯れ葉」や、気怠いグルーヴが心地いい「今日を生きよう」に聴き惚れながら、その頃から、光は夕方に変わりつつあって、そして披露された「魔法」。ハウスミュージックの陶酔に支配されたこの曲は、この日の演奏では、ラウドな轟音に彩られたギターロックナンバーに上書きされていた。あり得ないほどに最高だった。ステージ上は星空だった。

その後も、「PINK MOON」のヒリヒリ感や、圧巻のロッカバラード「ここで逢いましょう」の音量と熱、「月光荘」や「夢見るようなくちびるに」も素晴らしい! 「恋人の部屋」が演奏されたのも嬉しかった。とにかく、圧倒的な3人のプレイヤビリティ(曽我部さんのギターソロはどれも実にヤバかった)、歌唱力、そして改めて実感させられた名曲バンドっぷり。いつの間にか夜は明けていた。

ラウドな直球ナンバー「胸いっぱい」で、思わずこちらも胸いっぱい、そして締めくくりは「サマーソルジャー」。MCなし、ひたすら曲を演奏するこの日のセットリスト。
残響を残して3人がステージの袖に退場しても、余韻と興奮がいつまでも冷めやまない。というか、徐々に「これはすごいもんを観た」という興奮が沸々を胸の中に湧き上がってくる。アンコールの拍手は止まない。

やりきった感じの微笑みを浮かべて戻ってきた曽我部さん、田中さん、鈴木さん。この日、おそらく初めてマイクで観客に話しかける曽我部さん。席を離れて前に来るように呼びかけて、お客さんがステージ前に詰め掛けた。もちろん私も。にわかにスタンディングライブと化したアンコールタイムで披露されたのは、代表曲の「青春狂走曲」、そして「若者たち」だった。

そして再度鳴り止まないアンコールの拍手。快く応じた彼らは、ブルージーな「きれいだね」を披露し、多元的な音楽性のバックグラウンドを改めて感じた。マイクを通さない「コーヒーと恋愛」でこの日のコンサートは大団円。

実際に観た事を後年になって自慢したくなるような、夢のような、そして非常に密度の濃い、2時間強だった。

柴田聡子 @ 京都磔磔 2015-12-15 [音楽]

柴田聡子さんが山本精一らがバックを務めるバンド仕様でレコ発ツアー、磔磔ワンマン!
非常に楽しみにしてたんですが、しくじるハズも無い凄腕バックバンド。期待通り、凄く良いライヴだった。

最初、1人でステージに現れた彼女、いつものアコギ弾き語りスタイルで♪さーけーが呑みたきゃ墓場へ行けよ〜、と唄う、ドが付くマイナー調ソング「サン・キュー」が一曲目。何でこんなことをこの娘さんは一生懸命唄うのか?という疑問が頭の中で尽きない。そのまま、ソロ弾き語りのスタイルでもう1曲、今度は繊細な「マンドリン・ピアノ・デュエット」。この二曲の弾き語りと、いつもの腰が低すぎる?MCスタイル。目の前で、彼女のユニークな世界の完成である。

ドラムの人が登場。2人で演奏された「わかっているのに」。軽やかなドラムに乗せて、跳ねるように弾む柴田さんの声、彼女のギターとドラムのアンサンブルはオシャレ。当たり前の事だが、いつもの弾き語りの時とは音の景色が全然違う。いやー素晴らしいです。
そして、ギターの山本精一氏、ベースとキーボードのサポートの2人も入って、総勢5名の完全バンドスタイルにて、「ニューポニーテール」。最初この曲を聴いた時は、余りにも乙女度満点?な方向性に面食らったほどだけど、この曲の直球キラキラ感を、爽やかバンドアレンジでサラっと料理するセンスはさすが。ソロのライブだとどうなるのか?というのも興味深い。

それ以降は最後まで、総勢4人のバックバンド+彼女という今回のツアーの5人編成での演奏。
「ファイトクラブ」「アワーホープ」「好きってなんて言ったらいいの」と新譜の中でも特に好きな曲が連続して披露され、今日の磔磔の音の良さを堪能。個々の音を一つ一つ配置しつつ、最小限度の構成要素でグルーヴ感がバッチリ生まれるような絶妙アレンジ。

なかでも、アレンジでロック色の強い「悪魔のパーティー」が、ライブで演奏されると更にパワフルで圧倒。彼女のライブでここまで音が単純にデカイ、というより強力なロックを聴かされるのは、なかなか画期的であった。「ポイズンレークパーク」での抑制されたファンクネスも、ライブで、よりクッキリと前に出てくる感じ。圧巻のミニマルファンクと化した「いきすぎた友達」もそう。原曲のミニマルさが、バンドアレンジによって明白化し、ブーストされ、推進されている感じ。

「芝の青さ」とか、「カープファン」とか、お馴染みの曲のバンドアレンジも大いに聴きどころだった。バンドアレンジでグッとエモーショナルになった「ゆべし先輩」には、正直グッと来てしまった。

「ぼくめつ」や「あさはか」といった曲で本編終了。

アンコールでは、「ラストダンスは私に」「この世でいちばんキレイなもの」の2曲のカバーソング。「ラストダンス」は楽しかった。

この人は、前野健太と重なる。アコギ弾き語りのスタイルを貫き通すコダワリ、人を喰ったようなユーモアセンス、いつの間にかグッと琴線をかすめてくるソングライティングセンス。何より、個性満点なコード進行の面白さ。そして、次のフェーズへと引き上げてくれる導師としての、ジム・オルークと山本精一の存在・・・この人選も、傾向として似てるし。

山本精一さんがこの日のMCで、この人は弾き語りが一番いいから、とおっしゃってましたが、気が向いたらまた、バンドセットのライブもやってほしいなあ。


シャムキャッツ @ 梅田クラブクアトロ 2015-12-2 [音楽]

シャムキャッツの東名阪クアトロワンマンツアー。冬の平日の夜だが頑張って梅田まで観に行った。

今回のツアーは、『AFTER HOURS』『TAKE CARE』モードの総括的な位置付けだったようだけど、フタを開けてみたら、初期の曲から最新の曲まで満遍なく散りばめられたセットリスト構成。

「FOOTLOOSE」の見晴らしの良い感じの音で快調に始まり、ルーズなノリの「No. 5」を挟んで、序盤で『TAKE CARE』のメインナンバー的な「Girl At The Bus Stop」「KISS」が披露された。「Girl At The Bus Stop」は「MODELS」以降、今時の普通の若者たちの日常を具体的に描写していく、最近の夏目氏のソングライティングの傾向を極めて明瞭に打ち出した曲。

それ以降も、「Interlude」「BALLAD NOT SUITED」といった初期の曲や、「Lay Down」「Choke」「Foo」といった最近の傾向が明確に出ている曲を散りばめながら、比較的早いタイミングで「渚」も披露、音もライティングもキラキラしている。その次らへんに演奏された「Sweet Dreams」も好きな曲で、聴かせてくれて満足。

新曲「おはよう」に続いて、初期曲「チャイナは桃色」が演奏されて、これは「MODELS」より前の彼らのガレージなノリ、そしてうねるようなベースラインとドラムが音楽全体を牽引するスタイル。久しぶりにライブで聴いたこの曲、とても良かった。そのモードは継続されて、次の「落ち着かないのさ」、この曲で私はシャムキャッツというバンドを知って、完全に一発でファンになったのだけど、ライブで聴くのは今回が初めてだったりする。よりフリーキーなアレンジ、独特のグルーヴ感。うって変わって菅原君がリードボーカルを取る「手紙の続き」のポップな高揚感、この辺になるとオーディエンスのノリが徐々にアッパーになってきて、そして投下された「MODELS」のやや前のめりな四つ打ちで完全に沸騰。
で、その次の「なんだかやれそう」がこの日は決定打でした。完全にオーディエンスがハジけてしまった! 歌詞といい、曲の展開といい、「なんだかやれそう」・・・イイです。

夏目と菅原のボーカルリレーが楽しい「PM5:00」から、美しいギターの音がこの日のラストに相応しいスロウナンバー「魔法の絨毯」で本編終了。

アンコールは、「SUNNY」「不安でも移動」の2ナンバーが「MODELS」「なんだかやれそう」に負けず劣らず強力だった。
ここまで過去の曲を沢山ライブでやることはもうないかも、とMCで言ってたけど、まあ色々聴きたいので今後も適当に。

やはり彼らの強みは、まるでブラーのような夏目氏と菅原氏の二人の存在感の絶妙なバランス感であり、そこにこのバンドのマジックがある。それだけでなく、そんな二人をバックアップするリズム隊も抜群である。こういうのは、実際にライブハウスでライブを観てみないと絶対にわからないのである。

それと、他の同世代バンドと比較しても、頻繁に東京以外でライブを開催してくれる彼らの活動姿勢は、もっと賞賛されていいと思う。東名阪クアトロツアーも、正直思い切ったなあ、という感じだったけど、これほど充実したライブを見せてくれたら、こちらには感謝の言葉しかない。


くるり "Now & Then Vol.2" @ Zepp Namba 2015-11-28 [音楽]

くるりの『TEAM ROCK』『The World Is Mine』再現ライブを観た。春にやった『さよならストレンジャー』『図鑑』再現ライブはチケット取れず、テレビで観た。

まず興味があったのは、『TEAM ROCK』1曲目の若気の至りな気もするラップ・ナンバー「TEAM ROCK」をどうライブで料理するのか? 当時のリリースツアーの時は、この曲は演奏してなかったし。そしてこれがバッチリ。トロンボーンをさも適当な感じで吹きつつラップする岸田氏。肩の力が抜けた感じで普通に楽しく、彼らの熟成を感じた。
次の「ワンダーフォーゲル」は、この日のアレンジではピコピコ音が重なる。もはや名刺の一曲、無条件で盛り上がる。で、「LV30」「愛なき世界」と、今のライブでは余り演奏されないこれら初期のオーセンティックなギターロックナンバーが、今の彼らならで演奏クオリティで存分に再現された。

そのままこのアルバムの曲順に沿って演奏されるのかと思いきや、ここで『The World Is Mine』の1曲目のポストロックな「GUILTY」へ。アルバム再現ライブで曲順をシャッフルするのは、おそらく前代未聞だろう、けど、これはイイ。その柔軟性に内心で感心しつつ、この曲の静から動に一気に振れるダイナミックな轟音を浴び、大いにシビれた。
打って変わって静謐なナンバー「静かの海」、そして一転してキャッチーなギターのリフで始まる異国籍風ロックンロール「Go Back To China」。この曲の中盤のギターソロはやはり大好きである。その流れのまま「トレインロックフェスティバル」、そして名曲「Thank You My Girl」。チャイナからのギターロック3連発。ここまで大いに満足の前半。

大きく3パートに分かれているような構成で、スロウな「ARMY」から始まる中盤パートは、4thアルバムの非ロック的な曲を変則的なメンバー構成で演奏披露されるパート。「ARMY」「砂の星」、そして二人だけで演奏された「男の子と女の子」はおそらく今回のライブで最もファンの期待の大きかった曲だろう。「アマデウス」では岸田氏自身がピアノで弾き語り。本人曰く、サポートの人に弾いてもらうのは、この曲は何か違う、とのことだった。ロックが続いた前半の後半をクールダウンさせつつ、聴き応えはタップリで、同時にやはり、感慨深い。

しかし、最高なのはこれからだった。インストナンバー「Mind The Gap」が賑やかに演奏されて、そのまま、「水中モーター」のアンセム感抜群なイントロのギターが鳴らされた。この曲が、私が今回一番楽しみにしていた曲。岸田さんはヴォコーダー、サビは佐藤さんVoというオリジナルバージョンで再現。
そのまま止まらずに「World's End Supernova」「C'mon C'mon」「永遠」と、ダンストラック計5連発! クリフ・アーモンドの度肝を抜くような変幻自在でパワフルなドラムが、バンドのグルーヴ全体を牽引し、ライブバンドとしてのくるりの、まさに真骨頂が披露された。スゲ〜。
特に、どんな仕上がりになるのかが正直読めなかった「C'mon C'mon」「永遠」が、ここまで完璧にライブアレンジでパワフルかつ徹底的にダンサブルな形でアップデートされてくるとは、全くの想定外。

そして本編ラストは、代表曲の「ばらの花」「リバー」。「ばらの花」の淡々としたグルーヴは、その直前までの大興奮を絶妙にチルアウトさせていく。そして「リバー」で本編終了。

しかし、再現ライブと言いながらやってない曲が数曲。
アンコールでは、最初に岸田さんが独りで、残りの曲「カレーの歌」「迷路ゲーム」「Pearl River」を弾き語り。「迷路ゲーム」は特に良かった。
再びバンド全体で、演奏された曲は「ブレーメン」。いつもライブで演奏されるこの曲が、この日はいつも以上のカタルシスを感じさせる出来。何よりも、クリフのドラムが神がかっている。そして鳴らされる「Morning Paper」! ヤバイ! 大コーフン。最後は「Liberty & Gravity」で終了。
このライブの翌日に日本を離れるというクリフ、デッカい置き土産。別れの名残を惜しむかのような、アンコールのラスト3曲だった。本当にいいもんを観れたよ。




おとぎ話 / ねじ梅タッシと思い出ナンセンス @ 京都ネガポジ 2015-11-19 [音楽]

年内一杯でクローズになる京都のライブハウス陰陽(ネガポジ)にて、このライブハウスと縁深い京都のバンド、ねじ梅タッシと思い出ナンセンス。彼らと仲の良いおとぎ話を迎えての対バン。
平日の夜、仕事を切り上げて京都へ向かう。

陰陽は、移転先が西院に決定したとのこと。西院と言えばすでに、老舗のウーララ、新興Gattacaと個性派ライブハウスが所在しており、あと独自路線なTSUTAYA西院店の存在感。独特の磁場を放つエリアである。

先行は、ねじ梅タッシと思い出ナンセンス。本当の板前のお兄さんがヴォーカルをとる異色のロックバンドで、おとぎ話とも何度も対バン経験あり。このバンドはとにかくメンバー4人の仲が良さそうで、そのバンド内部の友達関係がそのまま、ヴォーカルの板前さんの朴訥で飾らない歌世界を通じて、バンドの音になっている。

このライブハウスは、彼らのデビューの地、とのこと。その場所が一旦クローズしてしまうということもあって、バンド結成当時の逸話がいくつかMCで披露されたけど大いに笑ってしまった。
彼らの音楽性は、いい意味で、以前観た時と変わってない、曲は増えていると思うけど。その世界観と暖かい雰囲気は、タフにこれからも彼らの持ち味であり続ける、と思う。サウンド的には、まずギターが良いのであるが、ベースとドラムも本当にしっかりしていて、バンド自体の音は成熟している、という印象を持った。
この日はおとぎ話の牛尾氏もギターで1曲参加。

さて、おとぎ話。
この日は、楽しみにしていた新機軸のディスコパンク新曲「Jealous Love」は聴けなかったけど、このハコに捧げるようなベストセットをベストパフォーマンスで披露。
一筆書きのような魅力の「おとぎ話みたいねと笑ってばかりの君が」から始まって、「NIGHTSWIMMING」「ピーターラビット」「Boys Don't Cry」とライブの定番曲が続く前半、この日は有馬氏のノドもバンドの演奏もまさに絶好調で120%な感じ。凄くいい。

そして圧巻は、『Culture Club』からの「Aurora」「光の涙」「Cosmos」「少年」の超名曲4連発。この4曲が全て、彼らのキャリアで7作目に当たる最新アルバムに収録されている、というのは本当に凄いことである。1作目、2作目ではなくて。(しかも1作目、2作目にもこれらの曲に負けないほどの名曲が何曲も収録されているし。)
この日は特に「Aurora」は、ありえないほどの名演で、その全身全霊を込めたようなソウルフルな歌と、淡々としているようで徐々に熱と光を放熱させていくバンド全体の演奏に、見ているこちらも思わず魂が震えた感じ。いや、単に俺がオーロラ好き過ぎなんかもしれん。
そのまま、最後の「少年」まで、熱くて気持ちの良い快演の連発。この日もちょっと忘れられない夜になった。

アンコールは、ねじ梅タッシと思い出ナンセンスのメンバーも全員ステージに上がって、アコースティック&アンプラグな「SMILE」。そして、再び4人で「ネオンBOYS」「また、よろしく」。
本当に、この日のライブをチョイスしてヨカッタ。



アナログフィッシュ @ 心斎橋Club Janus 2015-11-15 [音楽]

去年の傑作アルバム『最近のぼくら』から僅か10ヶ月で発表されたニューアルバム『Almost Rainbow』。
これがまた、変わらぬ先鋭さを兼ね備えた見事なほどのポップソングアルバムで、絶好調の創作モードに入っている模様。二枚看板のソングライティングが冴えている。そのツアーである。

1曲目は新譜の1曲目を飾る佐々木健太郎の「Baby Soda Pop」。前にOTODAMAでもこの曲を聴いたけど、この曲の革新的で野心的なサウンドは、野外よりも屋内の方が圧倒的に相性がいい。いやしかし、ライブでは更にもっと音量が大きい方がいいかもしれん。もっと物理的に音を感じるほどの。
2曲目は下岡曲「夢の中で」、ここから、日本有数の鉄壁の3ピース・アンサンブルで、しなやかにビルドアップしていくバンド/ダンスサウンドが次々と披露されていった。3曲目の「Will」の佐々木さんの伸びやかな歌が本当に素晴らしい、と思ったら、同じ佐々木曲「Fine」もそれは同様で、この2曲でかなりオーディエンスがあったまってきた所で、「There She Goes (La La La)」が割と早めのタイミングでフロアに投下。

前半パートは、佐々木さんの曲メインで進行。「SHOWがはじまるよ」のポジティブさから、バラード(名曲)「Good Bye Girlfriend」を経て、新機軸?なダウナーソング「Tired」も本当にいい曲である。佐々木さんの歌心が、バンドサウンドに乗って真っ直ぐ心に届く。

一方で、後半パートは下岡さんの曲メイン。中盤で披露された「不安の彫刻」はサウンドのスケールが最高だった。ダンサブルな「My Way」「FIT」では鉄壁リズム隊の上に乗る下岡さんの声とギターが鳥肌モノのクールさ。「今夜のヘッドライン」でのリカルド・ヴィラロボスなオケとのアンサンブルは、CDよりも今日のライブの方が断然に良かった。(単純に音量の差、かも)

力強い時代のアンセムだと思う「PHASE」から「荒野」、この2曲だけでも、彼らは日本の音楽シーンのもっとセンターに位置すべき存在であると思う。間違いなく。
そして新譜の「No Rain (No Raibow)」、本編の最後はロックバラード「泥の舟」。寂寥としているようで暖かい「泥の舟」も絶品だった。

アンコールでは、素晴らしいこの日の夜を祝福するような「Tonight」と、数日前にパリで発生したテロの犠牲者に捧げられた「TEXAS」だった。

個性の異なる2人のソングライターのソングライティングセンス、私が知っている中では日本現役最高峰の3ピース、そのスリリングな演奏能力。
名前は知ってても曲はあまり知らないという人が多いと思われる彼らだけど、音源とライブの両方で、もっと広く認知され、そして音楽ジャーナリズムや様々な媒体でもっと正当に評価されるべき存在だと思う。
特にライブパフォーマンスは相当に強力。次のライブも楽しみだ。


2015秋によく聴いたCD [音楽]

tricot 「A N D」
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今、一番ライブを観たいバンド。変拍子&ラウドの音楽性の印象が強いけど、どの曲もメロディが素晴らしく、アコースティックや弾き語りでも成立すると思う。

井手健介と母船 「井手健介と母船」
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洗練のサイケデリア傑作。秋の夜長にぴったりの一枚。

Beirut 「No No No」
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ベイルートはちゃんと聴くのは初めてですが、これはポップでいいです。
これも秋にピッタリの1枚。

柴田聡子  「柴田聡子」
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気合いのセルフタイトルは、初のバンドセットメインの楽曲数。
アレンジが冴えまくり。個性的なメロディと歌詞の面白さは変わらず。

ハナレグミ  「あいのわ」
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今更ながら、このアルバムはザ・名盤。

アナログフィッシュ 「Almost A Rainbow」
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前作からわずか10ヶ月でこの楽曲のクオリティの高さは驚き。面白い。
フロントの2人のバランスが良い。

きのこ帝国 「猫とアレルギー」
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Vo.佐藤さんの素(す)が出たような曲ばかりで、音楽性はギターロックですが、彼女らにしか鳴らせない音楽という意味で、広い意味のソウル(魂)を感じた。や、上記の作品は全てそうですが。


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