2013年 映画 マイベスト20 [映画 年間ベスト]
スペイン旅行の記録はひとまず後回しで(というか、まあ割とどうでもいいブログなので、もう書かない可能性も)、2013年の映画マイベスト10。
ええっと、個人的に、今までの中で最も豊作な一年でした。より正確に言えば、単純に、年内に観た本数が一番多かった年でした。
逆に、この1本!(或いはベスト3!)というのが、どうしても選べず、と言うより、ベスト10すら絞りこめない有様。
よって、ベスト20(+α、次点とかそういうの)にします。
もちろん言うまでもなく、極めて独断と偏見によります。
20本も選ぶと、選りすぐりのベスト10よりも、どうしても散漫な感じになってしまうのは承知の上。
だけど、例年のベスト10クラスが、今年は20本以上で、そこから10本に絞り込むのは何だか勿体ない、というか、あきらめました。
2011年と2012年は、1位、2位、3位、4位以下は10位まで順不同、という形を取ってました。
今年は、1位〜5位、6位〜10位(順不同)、11位〜20位(順不同)、次点クラス、とグループ分けにします。まあ、どうでもいいんですが。
1位 「ゼロ・グラビティ」
監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー
SF映画の新たな金字塔。
驚異の圧倒的映像体験。
そしてそれ以上に、ベテラン俳優2人の迫真の演技力と、哲学性と象徴性を内包し、シンプルであるが故に強い強度を持ち得た圧巻のストーリーに、猛烈に感動。
大気圏外の無重力空間における、宇宙飛行士の決死のサバイバル劇は、優れたSFがほぼ全てそうであるように、人間という存在そのものへの視点にダイナミックに帰結する。
2位「ゼロ・ダーク・サーティ」
監督 キャスリン・ビグロー
出演 ジェシカ・チャスティン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン
ビンラディンの探索に従事する女性CIA職員の奮闘を、ジェシカ・チャスティンが熱演。主人公の正義感と使命感は、狂気めいた執念へと変質し、やがて、彼女の奮闘は、深夜のビンラディン襲撃劇へと結実する。
この映画を貫いている強いストレスと重い緊迫感は、”アメリカの正義”とやらの深い苦悩と、今も地球の裏側で進行している世界の分断そのものを描いていると思う。
3位 「ブランカニエベス」
監督 パブロ・ベルヘル
出演 マリベル・ベルドゥ、マカレナ・ガルシア
白黒サイレントでモダンにアップデートされたフェアリーテール。闘牛とスパニッシュギターの熱情に彩られたスペイン版白雪姫。
白黒の映像の中に、生の煌めきや愛の記憶、どす黒い感情を封じ込めた、ビザールでノスタルジック、そして極めてエモーショナルな、宝石の様に何もかもが美しいダーク・ファンタジー。
観終わって頭をかすめたのは、同じくスペイン映画の「トーク・トゥ・ハー」。
4位 「ペコロスの母に会いに行く」
監督 森崎東
出演 岩松了、赤木春恵
今年の日本映画ベストです。
長崎を舞台にした、認知症の老母と中年の息子の物語を、コメディとして描きながら、失われつつある老母の人生の記憶そのものをたどる時間旅行へと、夢の中へ連れて行くようにこの映画は飛翔する。
某邦画のように、スクリーンの中の登場人物達がめそめそ泣いたりしない。映画で感動する、って、そういうことじゃない気がする。
想像もつかないような地点に観ている人の心を突き動かしてしまうこと。それこそが、真に優れた映画なのだと思う。
5位 「ザ・マスター」
監督 ポール・トーマス・アンダーソン
出演 ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス
新興カルト教団に舞い込んだ風来坊の男と、そのカルトのカリスマ教組の男。二人の男の、まさに、魂と魂の交錯を、第二次世界大戦直後のアメリカ社会の風景をバックに描く。
主演3人のアンサンブルが圧巻。そしてダイナミックで力強い、スクリーン映えするショットの数々に息を呑む。
6位~10位
並びは大体の見たもん順。
「毒戦 Drug War」(大阪アジアン映画祭)
監督 ジョニー・トー
出演 ルイス・クー、スン・ホンレイ
それまでの香港から、中国本土に舞台を移しつつも、これぞ正統派ジョニー・トーな、ハードボイルド・バイオレンス・ムービー。
もうね、やり過ぎですよ、最高です。
スン・ホンレイ!
「最初の人間」
監督 ジャンニ・アメリオ
出演 ジャック・ガンブラン
1950年代の対フランス独立運動に揺れるアルジェリアを、アルジェリアで生まれ育ったフランス人作家カミュの眼を通して、貧しかった彼の少年時代の回想シーンをフラッシュバックさせながら描く。
貧富/社会的身分の格差と深く結びついた西洋とイスラムとの対立を、かつての植民地政策の負の遺産として描きながらも、同時にこの映画は、貧しくも美しい家族の歴史を描く映画でもあります。
そして何と言っても、地中海世界の美しいランドスケープを捉えた映像美。スクリーンの向こうに、遠いアルジェリアの大地と海が広がっていました。
「ムーンライズ・キングダム」
監督 ウェス・アンダーソン
出演 ブルース・ウィルス、ビル・マーレイ、子役たち、他
ニューイングランド地方の小さな島を舞台にした、12歳前後の少年と少女の駆け落ち逃避行と、それに振り回される周囲の大人たちのドタバタ劇。
とてもキュートなラブストーリーであり、頼りない大人達のペーソス漂う群像劇であり、ロードムービー的風景美の移り変わりと、映画全体を貫くレトロ・ポップな世界観は絶品で、何度でも観たい。
特にエドワード・ノートン、グッジョブ。
「許されざる者」
監督 李相日
出演 渡辺謙、佐藤浩市、柄本明
イーストウッドの名作のリメイク。
昔気質の老ガンマンが己の意地を貫き通す西部劇を、明治開拓期の蝦夷地で、武士としての生き方を剥奪された男達が、それぞれの己の生き様を交錯させるサムライ・ストーリーに見事に転換。
俳優達の面構えが最高である。そして「The Master」同様、雄大で息を呑むほどのランドスケープの数々。それを映画館の暗闇、大きなスクリーンで体感するように観る歓び。
「クリスタル・フェアリー」(ラテンビート映画祭)
監督 セバスティアン・シルバ
出演 マイケル・セラ
アメリカ若手俳優マイケル・セラ主演の、チリの新進気鋭の映画監督によるお気楽ロードムービー。
伝説のドラッグで至高のトリップ体験をする目的で旅に出る若者たちと、その旅に合流した1人の訳あり風ヒッピー女性。
今年はロードムービーが豊作で(上の「許されざる者」「ムーンライズ・キングダム」もロードムービー感覚が強いし、「ブランカニエベス」のロードムービー的瞬間も捨て難い魅力が)、特に、コレか、それとも「オン・ザ・ロード」か、で大いに迷ったんですが、お気楽な感じと、世界の果ての誰もいない浜辺に向かうというロードムービーの一つの定型がやっぱり心地良くて、こっちをベスト10に入れました。
という訳で、迷いに迷った挙句、1位は「ゼロ・グラビティ」に落ち着いたのですが、4位までは、同率1位でも良いです。更に言えば、ベスト5の5本、プラス、「許されざる者」を加えた6本は、どれがベスト1になっても構わないほど、自分の中で超お気に入りです。
というか、上の10作品全て超お気に入りです。
しかし、「毒戦」・・・。実は観た当時のブログで、4.5点を付けていたのですが、他の5点満点作品を差し置いてのベスト10入りである。
つくづく自分の中の、その時その時の評価基準の曖昧さを感じます。
でも・・・やっぱこの映画、最高じゃないですか! ロードショー公開が楽しみ。絶対に多くの人に観てもらいたい。出来れば、タランティーノ並みに日本での知名度が上がって欲しい。
以下、11位から20位までの10本(並びは大体の見たもん順)を。
「東ベルリンから来た女」
「ライフ・オブ・パイ」
「さよなら渓谷」
「ローン・レンジャー」
「オン・ザ・ロード」
「地獄でなぜ悪い」
「わたしはロランス」
「ウォールフラワー」
「ジ、エクストリーム、スキヤキ」
「HOMESICK」
他の人達の評価はどうあれ、この10作品も、自分にとってはどれも傑作と呼ぶに相応しい作品でした。
ちなみにこの中では「ライフ・オブ・パイ」が11位。これと、「許されざる者」以外の6位〜10位作品で、どれを落とすかで、相当迷った。
あと、「オン・ザ・ロード」「ウォールフラワー」「ジ、エクストリーム、スキヤキ」「HOMESICK」
も、是非ベスト10に入れたかった作品でありました。
そして次点クラス。
「菖蒲」
「LOOPER」
「ブッダ・マウンテン 希望と祈りの旅」
「イノセント・ガーデン」
「3人のアンヌ」
「男として死ぬ」(2009年の映画だけど、日本初公開は今年だと思うので・・・)
次点多すぎやなー。
他には、
アクション系の中では、
豪快な「ワイルド・スピード EURO MISSION」、マーク・ウォールバーグ主演の「ハード・ラッシュ」、タランティーノ系のB級カンフー傑作「アイアン・フィスト」。
ドラマ系としては
デンゼル・ワシントン「フライト」、大阪ヨーロッパ映画祭で観たセルビア映画「パレード」、異色バンパイア伝奇「ビザンチウム」、B.カンバーバッチ主演のロードムービー「僕が星になる前に」。
アジア映画では
「ザ・タワー 超高層ビル大火災」「殺人の告白」「HANA 奇跡の46日間」(韓国)
「誰もいない家」(キルギス、大阪アジアン映画祭)
日本映画では
「不気味なものの肌に触れる」「凶悪」「遺体 明日への十日間」
他にもあるんだけど、上にタイトルだけ挙げた映画でも、例年ならば、おそらくベスト10〜次点として挙げたくなってしまうレベルです。
さて俳優部門。
女優さんでは、「ゼロ・グラビティ」のサンドラ・ブロックで決まり!
次点では、「ゼロ・ダーク・サーティ」の狂気スレスレの演技が強烈だったジェシカ・シャスティン。
女優としての凄味&美貌、の2点で、「ブッダ・マウンテン」ファン・ビンビン、「さよなら渓谷」真木よう子(「そして父になる」も)、「君と歩く世界」マリオン・コティヤール。
また、「アルバート氏の人生」グレン・クローズには、すっかり持ってかれました。
「The Master」での静かな凄味に圧倒されたエイミー・アダムス(「マン・オブ・スティール」も)。「東ベルリンから来た女」ニーナ・ホス。「3人のアンヌ」のベテラン女優イザベル・ユペール(「愛、アムール」も)。
「イノセント・ガーデン」「アルバート氏の人生」「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」他のミア・ワシコウスカ、「ウォールフラワー」「ブリングリング」のエマ・ワトソン、この若手清純派の2人は、従来のイメージを打ち破ろうと果敢にチャレンジしている姿勢が、◎。
「毒戦」のクリスタル・ホアンには一目惚れでした。
男性の俳優。
トップは、「凶悪」「そして父になる」の2連発で、リリー・フランキー。
次点クラスでは、「毒戦」でルイス・クーを食ってしまったスン・ホンレイ、「ゼロ・グラビティ」ジョージ・クルーニー、「地獄でなぜ悪い」長谷川博己。
「ゼロ・ダーク・サーティ」「ホワイトハウス・ダウン」「欲望のバージニア」他の個性派俳優ジェイソン・クラークも、個人的には激押ししたい感じです。
「TED」「ハード・ラッシュ」「2 GUNS」など多作なマーク・ウォールバーグも絶好調ぶりをキープ。
他では、「わたしはロランス」メルヴィル・プボー。「フライト」「2 GUNS」デンゼル・ワシントン。「オン・ザ・ロード」ギャレッド・ヘドランド。「ジ、エクストリーム、スキヤキ」窪塚洋介。「ウォールフラワー」エズラ・ミラー。
「マジック・マイク」「ペーパー・ボーイ」「バーニー/みんなが愛した殺人者」と、今年は怪演で魅了してくれたマシュー・マコノヒーも、忘れる訳には参りません。
そうそう怪演と言えば、「リベラーチェ」マイケル・ダグラスも。
最後に特別枠で、もうすぐ還暦のブルース・ウィルスを。
「ダイ・ハード/ラストデイ」「RED 2」他で見せたアクション魂には、そりゃあスタント使っているでしょうけど、老いてますます盛んというか、リスペクト。それに加えて、タイムスリップ系名作SF「12モンキーズ」主演の彼を召喚した形の「LOOPER」には、すっかり興奮させられ、新境地「ムーンライズ・キングダム」の枯れっぷりも、味があって良かったです。
ただ、「ファイアー・ウィズ・ファイヤー」は、この役、別に彼でなくても・・・という感じでした。
ええっと、個人的に、今までの中で最も豊作な一年でした。より正確に言えば、単純に、年内に観た本数が一番多かった年でした。
逆に、この1本!(或いはベスト3!)というのが、どうしても選べず、と言うより、ベスト10すら絞りこめない有様。
よって、ベスト20(+α、次点とかそういうの)にします。
もちろん言うまでもなく、極めて独断と偏見によります。
20本も選ぶと、選りすぐりのベスト10よりも、どうしても散漫な感じになってしまうのは承知の上。
だけど、例年のベスト10クラスが、今年は20本以上で、そこから10本に絞り込むのは何だか勿体ない、というか、あきらめました。
2011年と2012年は、1位、2位、3位、4位以下は10位まで順不同、という形を取ってました。
今年は、1位〜5位、6位〜10位(順不同)、11位〜20位(順不同)、次点クラス、とグループ分けにします。まあ、どうでもいいんですが。
1位 「ゼロ・グラビティ」
監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー
SF映画の新たな金字塔。
驚異の圧倒的映像体験。
そしてそれ以上に、ベテラン俳優2人の迫真の演技力と、哲学性と象徴性を内包し、シンプルであるが故に強い強度を持ち得た圧巻のストーリーに、猛烈に感動。
大気圏外の無重力空間における、宇宙飛行士の決死のサバイバル劇は、優れたSFがほぼ全てそうであるように、人間という存在そのものへの視点にダイナミックに帰結する。
2位「ゼロ・ダーク・サーティ」
監督 キャスリン・ビグロー
出演 ジェシカ・チャスティン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン
ビンラディンの探索に従事する女性CIA職員の奮闘を、ジェシカ・チャスティンが熱演。主人公の正義感と使命感は、狂気めいた執念へと変質し、やがて、彼女の奮闘は、深夜のビンラディン襲撃劇へと結実する。
この映画を貫いている強いストレスと重い緊迫感は、”アメリカの正義”とやらの深い苦悩と、今も地球の裏側で進行している世界の分断そのものを描いていると思う。
3位 「ブランカニエベス」
監督 パブロ・ベルヘル
出演 マリベル・ベルドゥ、マカレナ・ガルシア
白黒サイレントでモダンにアップデートされたフェアリーテール。闘牛とスパニッシュギターの熱情に彩られたスペイン版白雪姫。
白黒の映像の中に、生の煌めきや愛の記憶、どす黒い感情を封じ込めた、ビザールでノスタルジック、そして極めてエモーショナルな、宝石の様に何もかもが美しいダーク・ファンタジー。
観終わって頭をかすめたのは、同じくスペイン映画の「トーク・トゥ・ハー」。
4位 「ペコロスの母に会いに行く」
監督 森崎東
出演 岩松了、赤木春恵
今年の日本映画ベストです。
長崎を舞台にした、認知症の老母と中年の息子の物語を、コメディとして描きながら、失われつつある老母の人生の記憶そのものをたどる時間旅行へと、夢の中へ連れて行くようにこの映画は飛翔する。
某邦画のように、スクリーンの中の登場人物達がめそめそ泣いたりしない。映画で感動する、って、そういうことじゃない気がする。
想像もつかないような地点に観ている人の心を突き動かしてしまうこと。それこそが、真に優れた映画なのだと思う。
5位 「ザ・マスター」
監督 ポール・トーマス・アンダーソン
出演 ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス
新興カルト教団に舞い込んだ風来坊の男と、そのカルトのカリスマ教組の男。二人の男の、まさに、魂と魂の交錯を、第二次世界大戦直後のアメリカ社会の風景をバックに描く。
主演3人のアンサンブルが圧巻。そしてダイナミックで力強い、スクリーン映えするショットの数々に息を呑む。
6位~10位
並びは大体の見たもん順。
「毒戦 Drug War」(大阪アジアン映画祭)
監督 ジョニー・トー
出演 ルイス・クー、スン・ホンレイ
それまでの香港から、中国本土に舞台を移しつつも、これぞ正統派ジョニー・トーな、ハードボイルド・バイオレンス・ムービー。
もうね、やり過ぎですよ、最高です。
スン・ホンレイ!
「最初の人間」
監督 ジャンニ・アメリオ
出演 ジャック・ガンブラン
1950年代の対フランス独立運動に揺れるアルジェリアを、アルジェリアで生まれ育ったフランス人作家カミュの眼を通して、貧しかった彼の少年時代の回想シーンをフラッシュバックさせながら描く。
貧富/社会的身分の格差と深く結びついた西洋とイスラムとの対立を、かつての植民地政策の負の遺産として描きながらも、同時にこの映画は、貧しくも美しい家族の歴史を描く映画でもあります。
そして何と言っても、地中海世界の美しいランドスケープを捉えた映像美。スクリーンの向こうに、遠いアルジェリアの大地と海が広がっていました。
「ムーンライズ・キングダム」
監督 ウェス・アンダーソン
出演 ブルース・ウィルス、ビル・マーレイ、子役たち、他
ニューイングランド地方の小さな島を舞台にした、12歳前後の少年と少女の駆け落ち逃避行と、それに振り回される周囲の大人たちのドタバタ劇。
とてもキュートなラブストーリーであり、頼りない大人達のペーソス漂う群像劇であり、ロードムービー的風景美の移り変わりと、映画全体を貫くレトロ・ポップな世界観は絶品で、何度でも観たい。
特にエドワード・ノートン、グッジョブ。
「許されざる者」
監督 李相日
出演 渡辺謙、佐藤浩市、柄本明
イーストウッドの名作のリメイク。
昔気質の老ガンマンが己の意地を貫き通す西部劇を、明治開拓期の蝦夷地で、武士としての生き方を剥奪された男達が、それぞれの己の生き様を交錯させるサムライ・ストーリーに見事に転換。
俳優達の面構えが最高である。そして「The Master」同様、雄大で息を呑むほどのランドスケープの数々。それを映画館の暗闇、大きなスクリーンで体感するように観る歓び。
「クリスタル・フェアリー」(ラテンビート映画祭)
監督 セバスティアン・シルバ
出演 マイケル・セラ
アメリカ若手俳優マイケル・セラ主演の、チリの新進気鋭の映画監督によるお気楽ロードムービー。
伝説のドラッグで至高のトリップ体験をする目的で旅に出る若者たちと、その旅に合流した1人の訳あり風ヒッピー女性。
今年はロードムービーが豊作で(上の「許されざる者」「ムーンライズ・キングダム」もロードムービー感覚が強いし、「ブランカニエベス」のロードムービー的瞬間も捨て難い魅力が)、特に、コレか、それとも「オン・ザ・ロード」か、で大いに迷ったんですが、お気楽な感じと、世界の果ての誰もいない浜辺に向かうというロードムービーの一つの定型がやっぱり心地良くて、こっちをベスト10に入れました。
という訳で、迷いに迷った挙句、1位は「ゼロ・グラビティ」に落ち着いたのですが、4位までは、同率1位でも良いです。更に言えば、ベスト5の5本、プラス、「許されざる者」を加えた6本は、どれがベスト1になっても構わないほど、自分の中で超お気に入りです。
というか、上の10作品全て超お気に入りです。
しかし、「毒戦」・・・。実は観た当時のブログで、4.5点を付けていたのですが、他の5点満点作品を差し置いてのベスト10入りである。
つくづく自分の中の、その時その時の評価基準の曖昧さを感じます。
でも・・・やっぱこの映画、最高じゃないですか! ロードショー公開が楽しみ。絶対に多くの人に観てもらいたい。出来れば、タランティーノ並みに日本での知名度が上がって欲しい。
以下、11位から20位までの10本(並びは大体の見たもん順)を。
「東ベルリンから来た女」
「ライフ・オブ・パイ」
「さよなら渓谷」
「ローン・レンジャー」
「オン・ザ・ロード」
「地獄でなぜ悪い」
「わたしはロランス」
「ウォールフラワー」
「ジ、エクストリーム、スキヤキ」
「HOMESICK」
他の人達の評価はどうあれ、この10作品も、自分にとってはどれも傑作と呼ぶに相応しい作品でした。
ちなみにこの中では「ライフ・オブ・パイ」が11位。これと、「許されざる者」以外の6位〜10位作品で、どれを落とすかで、相当迷った。
あと、「オン・ザ・ロード」「ウォールフラワー」「ジ、エクストリーム、スキヤキ」「HOMESICK」
も、是非ベスト10に入れたかった作品でありました。
そして次点クラス。
「菖蒲」
「LOOPER」
「ブッダ・マウンテン 希望と祈りの旅」
「イノセント・ガーデン」
「3人のアンヌ」
「男として死ぬ」(2009年の映画だけど、日本初公開は今年だと思うので・・・)
次点多すぎやなー。
他には、
アクション系の中では、
豪快な「ワイルド・スピード EURO MISSION」、マーク・ウォールバーグ主演の「ハード・ラッシュ」、タランティーノ系のB級カンフー傑作「アイアン・フィスト」。
ドラマ系としては
デンゼル・ワシントン「フライト」、大阪ヨーロッパ映画祭で観たセルビア映画「パレード」、異色バンパイア伝奇「ビザンチウム」、B.カンバーバッチ主演のロードムービー「僕が星になる前に」。
アジア映画では
「ザ・タワー 超高層ビル大火災」「殺人の告白」「HANA 奇跡の46日間」(韓国)
「誰もいない家」(キルギス、大阪アジアン映画祭)
日本映画では
「不気味なものの肌に触れる」「凶悪」「遺体 明日への十日間」
他にもあるんだけど、上にタイトルだけ挙げた映画でも、例年ならば、おそらくベスト10〜次点として挙げたくなってしまうレベルです。
さて俳優部門。
女優さんでは、「ゼロ・グラビティ」のサンドラ・ブロックで決まり!
次点では、「ゼロ・ダーク・サーティ」の狂気スレスレの演技が強烈だったジェシカ・シャスティン。
女優としての凄味&美貌、の2点で、「ブッダ・マウンテン」ファン・ビンビン、「さよなら渓谷」真木よう子(「そして父になる」も)、「君と歩く世界」マリオン・コティヤール。
また、「アルバート氏の人生」グレン・クローズには、すっかり持ってかれました。
「The Master」での静かな凄味に圧倒されたエイミー・アダムス(「マン・オブ・スティール」も)。「東ベルリンから来た女」ニーナ・ホス。「3人のアンヌ」のベテラン女優イザベル・ユペール(「愛、アムール」も)。
「イノセント・ガーデン」「アルバート氏の人生」「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」他のミア・ワシコウスカ、「ウォールフラワー」「ブリングリング」のエマ・ワトソン、この若手清純派の2人は、従来のイメージを打ち破ろうと果敢にチャレンジしている姿勢が、◎。
「毒戦」のクリスタル・ホアンには一目惚れでした。
男性の俳優。
トップは、「凶悪」「そして父になる」の2連発で、リリー・フランキー。
次点クラスでは、「毒戦」でルイス・クーを食ってしまったスン・ホンレイ、「ゼロ・グラビティ」ジョージ・クルーニー、「地獄でなぜ悪い」長谷川博己。
「ゼロ・ダーク・サーティ」「ホワイトハウス・ダウン」「欲望のバージニア」他の個性派俳優ジェイソン・クラークも、個人的には激押ししたい感じです。
「TED」「ハード・ラッシュ」「2 GUNS」など多作なマーク・ウォールバーグも絶好調ぶりをキープ。
他では、「わたしはロランス」メルヴィル・プボー。「フライト」「2 GUNS」デンゼル・ワシントン。「オン・ザ・ロード」ギャレッド・ヘドランド。「ジ、エクストリーム、スキヤキ」窪塚洋介。「ウォールフラワー」エズラ・ミラー。
「マジック・マイク」「ペーパー・ボーイ」「バーニー/みんなが愛した殺人者」と、今年は怪演で魅了してくれたマシュー・マコノヒーも、忘れる訳には参りません。
そうそう怪演と言えば、「リベラーチェ」マイケル・ダグラスも。
最後に特別枠で、もうすぐ還暦のブルース・ウィルスを。
「ダイ・ハード/ラストデイ」「RED 2」他で見せたアクション魂には、そりゃあスタント使っているでしょうけど、老いてますます盛んというか、リスペクト。それに加えて、タイムスリップ系名作SF「12モンキーズ」主演の彼を召喚した形の「LOOPER」には、すっかり興奮させられ、新境地「ムーンライズ・キングダム」の枯れっぷりも、味があって良かったです。
ただ、「ファイアー・ウィズ・ファイヤー」は、この役、別に彼でなくても・・・という感じでした。
2012年 映画ベスト10 [映画 年間ベスト]
2012年総括パート1
映画編
1位~3位の間、正直、甲乙つけがたく、この順位付けは今日の気分に過ぎません。
1位 「DRIVE」
ニコラス・ウィンディング・レフン監督
主演ライアン・ゴスリング、共演キャリー・マリガン
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「オールド・ボーイ」と比肩しうる、暴力映画の新たな金字塔。
アメリカ映画の、マフィアものとウェスタンものの長い伝統を踏まえつつ、抑制とコントロールの緊張感を全体に張り巡らせ、やがてスクリーン全体に爆発する凄惨と狂気、生と死の無情。
2位 「ポエトリー アグネスの詩」
イ・チャンドン監督
主演ユン・ジョンヒ
人間の魂の尊厳と常に向き合う世界的名匠イ・チャンドン、新たな傑作。
詩を希求する無垢な老女。強姦事件を犯した孫。自殺した被害者の少女。
少女のような老女は、精神的な遍歴と通過儀礼を経て、ある境地へ到達する。
3位 「預言者」
ジャック・オーディアール監督
主演タハール・ラヒム、共演ニエル・アレストリュプ
移民社会フランスの縮図たる、他民族構成の監獄社会で展開する、仁義無き勢力抗争。
そこに放り込まれた無力な青年が、監獄の暗がりの奥で徐々に覚醒していく。
そして映画に謎をもたらす、“預言者”の存在。
フランス発「ゴッドファーザー」+「ショーシャンクの空に」
4位から10位までは順不同、観たもん順。
「あしたのパスタはアルデンテ」
イタリア映画。ゲイという視点を取り入れる事で、伝統的なイタリアの大家族という素材をアップデートさせた、モダンで可笑しいハートフル・コメディ。
家族に対する過去と現在、両方への視座を、見事にクロスオーバーさせる。
「サラの鍵」
過去と現在、二つの時制を並行展開させることで、ホロコーストの被害者の少女が辿った数奇で過酷な運命を現代の女性ジャーナリストが解き明かす、傑作歴史ミステリー。
「ダークナイトライジング」
冒頭、飛行機のシークエンスで観る者を圧倒する、敵役ベインの不穏な眼光。それはそのまま映画全体のムードを支配。
キャットウーマン他、群像活劇の趣きもエンターテインメント。
「ゲスト」(ホセ・ルイス・ゲリン映画祭)
個人的には今年べストの好企画だった、ホセ・ルイス・ゲリン映画祭。それを代表して。
映画祭の出品で世界各国を旅したゲリン監督。
街角の人々にカメラを向け、その声にひたすら耳を傾けて、いくつかの第三世界のリアリティが浮かび上がる。
「こっぴどい猫」
モト冬樹生誕60周年記念映画は、まさかのウェルメイドな恋愛群像劇の逸品。怒濤の三角関係の嵐、やり過ぎやろと思いつつ収束も見事の脚本力。
「容疑者 ホアキン・フェニックス」
カメラの前で何もかもをさらけ出し、ボロボロになっていく、オスカー俳優ホアキン。
やり過ぎです、JP、そんなアンタにリスペクト。
「サイレンス」(フィンランド映画祭2012)
静寂が支配する、稀有な戦争映画。
戦時における人間たちを描きつつ、そこに交錯する、スカンジナビアの深閑な白銀世界と、死者たちの声なき声。
次点
「キツツキと雨」
「ミステリーズ 運命のリスボン」
我ながら、何かミョーに狙いすぎな順位になった、と思う。
他には、
- 娯楽大作SFアクション系として
「007 スカイフォール」「ドラゴンタトゥーの女」「プロメテウス」「ホビット」
- ヒューマン・ドラマ系としては、
「人生はビギナーズ」「ファミリー・ツリー」「ミッドナイト・イン・パリ」
- 外せない、香港ノワールもの!
「ビースト・ストーカー」「盗聴犯 狙われたブローカー」「強奪のトライアングル」
- 大充実の大阪アジアン映画祭から、
先鋭の東南アジア発2作品「P-047」「浄化槽の貴婦人」と、ウェルメイドな中華圏発2作品「星空」「高海抜の恋」
- 今年も映画は全体的に、洋高邦低だった気がする。
そんな中で、個人的にとても満足 or 感動できた日本映画は、
「吉祥寺の朝日奈くん」「ふがいない僕は空をみた」「桐島、部活やめるってよ」「おおかみこどもの雨と雪」「ライク・サムワン・イン・ラブ」「この空の花 長岡花火物語」
- 他に非常に際立っていたと思うのは、音楽ドキュメンタリーの「ビーツ、ライムズ&ライフ A Tribe Called Questの旅」、エチオピアの現代史を題材にした「テザ 慟哭の大地」です。
次に俳優部門
男性俳優は今年は、例年以上の大豊作の感。
(下記の通り、挙げだしたら本当にキリが無かった。)
そんな中で個人的にベスト・アクターは、「プロメテウス」「SHAME」「フィッシュタンク」「危険なメソッド」で非常にアグレッシブだったマイケル・ファスベンダー。
僅差で、「ミロクローゼ」「その夜の侍」の自由な怪演振りが負けずにアグレッシブな山田孝之。
それと何と言っても、「容疑者ホアキン・フェニックス」で自分のキャリア2年間を丸ごとフイにしたホアキン・フェニックス。
「セブンデイズ・イン・ハバナ」「コッホ先生と僕らの革命」「みんなと一緒に暮らしたら」と出演作が相次いだダニエル・ブリュールも目立っていたなあ。彼の場合、この3作品、スペイン語圏、ドイツ、フランスとそれぞれ違う言語圏の作品で、今後ますますの多言語俳優な活躍を期待!です。
他にも、
「恋のロンドン狂騒曲」「MIB3」のジョシュ・ブローリン。
「人生はビギナーズ」「砂漠でサーモンフィッシング」のユアン・マクレガー。
「DRIVE」「スーパーチューズデー」のライアン・ゴスリング。
「ファミリーツリー」「スーパーチューズデー」のジョージ・クルーニー。
「ドラゴンタトゥーの女」「スカイフォール」のダニエル・クレイグ。
「ディクテーター」「レ・ミゼラブル」他、サシャ・バロン・コーエン。
「ミッドナイト・イン・パリ」「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」のオーウェン・ウィルソン。
「苦役列車」「北のカナリアたち」の森山未來。
などなど。こうしてリストアップしてみると、キリがない。多過ぎて、何かつまらん!
けど、「ダークナイト・ライジング」でベインを見事に怪演したトム・ハーディも絶対に外せない!
あと、「アルゴ」のベン・アフレック、「夢売るふたり」阿部サダヲもね。
女優陣。
「ダークナイト・ライジング」の華麗なるキャットウーマン、そして何より「レ・ミゼラブル」の坊主頭でのエモーショナルな熱唱ですっかりもってかれてしまった、アン・ハサウェイ。
彼女に決定で、異論なしでは。
次点クラスとしては、「夢売るふたり」の松たか子と、「ふがいない僕は空をみた」の田畑智子。
ともに、それぞれここ数年のキャリアで充実作が続いた中での、現時点でのベストワークかと。
あとは、「ミッドナイト・イン・パリ」「ミステリーズ 運命のリスボン」「シスター」「マリーアントワネットに別れを告げて」と出演作が相次いだフランスの新鋭レア・セドゥ。
それと、「DRIVE」「SHAME」と作品選びのセンスが抜群で、特に「SHAME」で一気に役の幅が広がったキャリー・マリガン。
最後にどうしても挙げておきたいのが、「ロック・オブ・エイジズ」のハッチャケ振りが、一体どうしたんだろう・・・と思わずにはいられない、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ女史であります。
蛇足ながら、キネマ旬報など日本の賞レースの予想。
洋画では、
「ファミリー・ツリー」「少年と自転車」「ミッドナイト・イン・パリ」「アルゴ」「レ・ミゼラブル」(←これは来年になるのかな)
日本映画では、本命不在っぽい気がするけど、「桐島」「ヒミズ」「わが母の記」「おおかみこども」当たりが有力と見た。
1/20 追記
キネマ旬報の2012年ベスト10が発表されてました。
日本映画は「かぞくのくに」。すっかり忘れてました。とてもいい映画だと思います、納得。
安藤サクラがこの映画で主演女優賞、意外だったけど、最近の彼女の活躍ぶりを考えればこれも納得。と思ったら、助演女優賞も彼女。
洋画はタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。これは、超意外。私は、実に睡魔との戦いでした。
こんなエクストリームな映画がベストワンなんて、キネマ旬報、捨てたもんじゃないですね。
映画編
1位~3位の間、正直、甲乙つけがたく、この順位付けは今日の気分に過ぎません。
1位 「DRIVE」
ニコラス・ウィンディング・レフン監督
主演ライアン・ゴスリング、共演キャリー・マリガン
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「オールド・ボーイ」と比肩しうる、暴力映画の新たな金字塔。
アメリカ映画の、マフィアものとウェスタンものの長い伝統を踏まえつつ、抑制とコントロールの緊張感を全体に張り巡らせ、やがてスクリーン全体に爆発する凄惨と狂気、生と死の無情。
2位 「ポエトリー アグネスの詩」
イ・チャンドン監督
主演ユン・ジョンヒ
人間の魂の尊厳と常に向き合う世界的名匠イ・チャンドン、新たな傑作。
詩を希求する無垢な老女。強姦事件を犯した孫。自殺した被害者の少女。
少女のような老女は、精神的な遍歴と通過儀礼を経て、ある境地へ到達する。
3位 「預言者」
ジャック・オーディアール監督
主演タハール・ラヒム、共演ニエル・アレストリュプ
移民社会フランスの縮図たる、他民族構成の監獄社会で展開する、仁義無き勢力抗争。
そこに放り込まれた無力な青年が、監獄の暗がりの奥で徐々に覚醒していく。
そして映画に謎をもたらす、“預言者”の存在。
フランス発「ゴッドファーザー」+「ショーシャンクの空に」
4位から10位までは順不同、観たもん順。
「あしたのパスタはアルデンテ」
イタリア映画。ゲイという視点を取り入れる事で、伝統的なイタリアの大家族という素材をアップデートさせた、モダンで可笑しいハートフル・コメディ。
家族に対する過去と現在、両方への視座を、見事にクロスオーバーさせる。
「サラの鍵」
過去と現在、二つの時制を並行展開させることで、ホロコーストの被害者の少女が辿った数奇で過酷な運命を現代の女性ジャーナリストが解き明かす、傑作歴史ミステリー。
「ダークナイトライジング」
冒頭、飛行機のシークエンスで観る者を圧倒する、敵役ベインの不穏な眼光。それはそのまま映画全体のムードを支配。
キャットウーマン他、群像活劇の趣きもエンターテインメント。
「ゲスト」(ホセ・ルイス・ゲリン映画祭)
個人的には今年べストの好企画だった、ホセ・ルイス・ゲリン映画祭。それを代表して。
映画祭の出品で世界各国を旅したゲリン監督。
街角の人々にカメラを向け、その声にひたすら耳を傾けて、いくつかの第三世界のリアリティが浮かび上がる。
「こっぴどい猫」
モト冬樹生誕60周年記念映画は、まさかのウェルメイドな恋愛群像劇の逸品。怒濤の三角関係の嵐、やり過ぎやろと思いつつ収束も見事の脚本力。
「容疑者 ホアキン・フェニックス」
カメラの前で何もかもをさらけ出し、ボロボロになっていく、オスカー俳優ホアキン。
やり過ぎです、JP、そんなアンタにリスペクト。
「サイレンス」(フィンランド映画祭2012)
静寂が支配する、稀有な戦争映画。
戦時における人間たちを描きつつ、そこに交錯する、スカンジナビアの深閑な白銀世界と、死者たちの声なき声。
次点
「キツツキと雨」
「ミステリーズ 運命のリスボン」
我ながら、何かミョーに狙いすぎな順位になった、と思う。
他には、
- 娯楽大作SFアクション系として
「007 スカイフォール」「ドラゴンタトゥーの女」「プロメテウス」「ホビット」
- ヒューマン・ドラマ系としては、
「人生はビギナーズ」「ファミリー・ツリー」「ミッドナイト・イン・パリ」
- 外せない、香港ノワールもの!
「ビースト・ストーカー」「盗聴犯 狙われたブローカー」「強奪のトライアングル」
- 大充実の大阪アジアン映画祭から、
先鋭の東南アジア発2作品「P-047」「浄化槽の貴婦人」と、ウェルメイドな中華圏発2作品「星空」「高海抜の恋」
- 今年も映画は全体的に、洋高邦低だった気がする。
そんな中で、個人的にとても満足 or 感動できた日本映画は、
「吉祥寺の朝日奈くん」「ふがいない僕は空をみた」「桐島、部活やめるってよ」「おおかみこどもの雨と雪」「ライク・サムワン・イン・ラブ」「この空の花 長岡花火物語」
- 他に非常に際立っていたと思うのは、音楽ドキュメンタリーの「ビーツ、ライムズ&ライフ A Tribe Called Questの旅」、エチオピアの現代史を題材にした「テザ 慟哭の大地」です。
次に俳優部門
男性俳優は今年は、例年以上の大豊作の感。
(下記の通り、挙げだしたら本当にキリが無かった。)
そんな中で個人的にベスト・アクターは、「プロメテウス」「SHAME」「フィッシュタンク」「危険なメソッド」で非常にアグレッシブだったマイケル・ファスベンダー。
僅差で、「ミロクローゼ」「その夜の侍」の自由な怪演振りが負けずにアグレッシブな山田孝之。
それと何と言っても、「容疑者ホアキン・フェニックス」で自分のキャリア2年間を丸ごとフイにしたホアキン・フェニックス。
「セブンデイズ・イン・ハバナ」「コッホ先生と僕らの革命」「みんなと一緒に暮らしたら」と出演作が相次いだダニエル・ブリュールも目立っていたなあ。彼の場合、この3作品、スペイン語圏、ドイツ、フランスとそれぞれ違う言語圏の作品で、今後ますますの多言語俳優な活躍を期待!です。
他にも、
「恋のロンドン狂騒曲」「MIB3」のジョシュ・ブローリン。
「人生はビギナーズ」「砂漠でサーモンフィッシング」のユアン・マクレガー。
「DRIVE」「スーパーチューズデー」のライアン・ゴスリング。
「ファミリーツリー」「スーパーチューズデー」のジョージ・クルーニー。
「ドラゴンタトゥーの女」「スカイフォール」のダニエル・クレイグ。
「ディクテーター」「レ・ミゼラブル」他、サシャ・バロン・コーエン。
「ミッドナイト・イン・パリ」「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」のオーウェン・ウィルソン。
「苦役列車」「北のカナリアたち」の森山未來。
などなど。こうしてリストアップしてみると、キリがない。多過ぎて、何かつまらん!
けど、「ダークナイト・ライジング」でベインを見事に怪演したトム・ハーディも絶対に外せない!
あと、「アルゴ」のベン・アフレック、「夢売るふたり」阿部サダヲもね。
女優陣。
「ダークナイト・ライジング」の華麗なるキャットウーマン、そして何より「レ・ミゼラブル」の坊主頭でのエモーショナルな熱唱ですっかりもってかれてしまった、アン・ハサウェイ。
彼女に決定で、異論なしでは。
次点クラスとしては、「夢売るふたり」の松たか子と、「ふがいない僕は空をみた」の田畑智子。
ともに、それぞれここ数年のキャリアで充実作が続いた中での、現時点でのベストワークかと。
あとは、「ミッドナイト・イン・パリ」「ミステリーズ 運命のリスボン」「シスター」「マリーアントワネットに別れを告げて」と出演作が相次いだフランスの新鋭レア・セドゥ。
それと、「DRIVE」「SHAME」と作品選びのセンスが抜群で、特に「SHAME」で一気に役の幅が広がったキャリー・マリガン。
最後にどうしても挙げておきたいのが、「ロック・オブ・エイジズ」のハッチャケ振りが、一体どうしたんだろう・・・と思わずにはいられない、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ女史であります。
蛇足ながら、キネマ旬報など日本の賞レースの予想。
洋画では、
「ファミリー・ツリー」「少年と自転車」「ミッドナイト・イン・パリ」「アルゴ」「レ・ミゼラブル」(←これは来年になるのかな)
日本映画では、本命不在っぽい気がするけど、「桐島」「ヒミズ」「わが母の記」「おおかみこども」当たりが有力と見た。
1/20 追記
キネマ旬報の2012年ベスト10が発表されてました。
日本映画は「かぞくのくに」。すっかり忘れてました。とてもいい映画だと思います、納得。
安藤サクラがこの映画で主演女優賞、意外だったけど、最近の彼女の活躍ぶりを考えればこれも納得。と思ったら、助演女優賞も彼女。
洋画はタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。これは、超意外。私は、実に睡魔との戦いでした。
こんなエクストリームな映画がベストワンなんて、キネマ旬報、捨てたもんじゃないですね。
2011年 映画ベスト10 [映画 年間ベスト]
去年2011年、映画は個人的にはとにかく大豊作の1年だった。
1位「ソーシャル・ネットワーク」
実在の人物のサクセス・ストーリー、ではなく、ある若者が何かを得る引き換えに何かを失ってしまうという話。
そういう意味では、とても典型的な青春映画だと思う。
ストーリーといいそのテンポといい、音楽といい、とにかく好き。
Radiohead "Creep"の静謐な合唱団バージョンが流れる予告編からして、傑作感はただならぬものがあった。
(同じ理由で、今は「ドラゴン・タトゥーの女」が超楽しみ。)
2位「トゥルー・グリット」
酔っ払いの保安官と生真面目なハンターと共に、父を殺した男を追跡して荒野を旅する少女。
西部劇の体裁を取った冒険活劇。
これが1位でもよかった。
3位「ゴースト・ライター」
ポランスキー監督の手腕が冴えまくっている、洗練を極めたサスペンス/ミステリー。
凄い完成度。
これが1位でもよかった。
豊作の2011年の中でも、この1位〜3位は完全に別格。
4位以下。
順位付けは難しいので、順不同。多分観た順。
「キック・アス!」
ヒット・ガール!
「八日目の蝉」
表層の善悪を超えて揺り動かされる。
それとロードムーヴィ感。
大健闘な井上真央も含めて、どの女優さんも素晴らしい。今年の邦画ベスト。
「悲しみのミルク」
ペルー映画。映像の色彩感とフォークロア音楽がマジカル。
残酷なテロの記憶、それに、今も続く搾取と格差。
「中国娘」(「三大映画祭」上映作品)
中国の田舎の村から都会へ、そして海外へ。
ロードムービー感(またかよ)。及び、映画全体を貫くオルタネイティヴな空気感。
「チコとリタ」(「ラテンビート映画祭」上映作品)
顔の造形が妙にリアルな、完成度の高いラテン・アニメーション。
キューバ現代史とアメリカ・ショービズに翻弄される、歌姫とジャズマンの恋と人生。メランコリック。
「ウィンターズ・ボーン」
基本構造は「トゥルー・グリット」と同じ。
勇敢な少女がアメリカ土着の暗闇の中をくぐり抜けて行く、ハードボイルドな冒険物語。
タイトルの意味が分かった時の衝撃。
「宇宙人ポール」
ロードムーヴィ感(またか)+エイリアン。保守系アメリカ人には受け入れがたい映画だろうな。
同系統の「SUPER 8」もめちゃめちゃ良かったです。
ええい絞りきれない、他には...
「カントリー・ガール」
「SUPER 8」
「一命」
「あの日の幸せ」(「ブラジル映画祭」上映作品)
あと、「ブラック・スワン」「リトル・ランボーズ」「わたしを離さないで」「マネーボール」「レイン・オブ・アサシン」「アンストッパブル」などなど。
「ブラック・スワン」は突き抜けてた。クライマックスで圧倒された。
日本映画に関して言えば、良作は多く、傑作は少なかった印象。
同じ題材の「毎日かあさん」「酔いがさめたら、うちに帰ろう」、両作とても良かった。
他にも「もしドラ」「漫才ギャング」「東京オアシス」「CUT」色々あるけど、キリがない。
それと今年の映画ではないけど、太陽の塔のそば、国立民族博物館の企画で観に行った、マレーシア映画の「タレンタイム」。素晴らしい、傑作。
リバイバルで観た、テレンス・マリック監督の70年代作品「天国の日々」も。
前年公開(京都では2011年公開)の邦画「ヘヴンズ・ストーリー」は、最後まで観終わった時の達成感が半端なかった。
俳優部門!
男優では、何と言っても「冷たい熱帯魚」、でんでん。
そこら辺にいそうな、気の良さそうなおっさんの口から飛び出す必殺フレーズ「ボディを透明にする」が衝撃的過ぎて唖然。
でもこうゆう、人の心理につけ込みその人を支配しようとする人、実際にいそう。
最近はこんな役が多いけど、昔「相棒」で犯人役で出演した事があって、それもとても強い印象が。一見、正常な人なんだけど、追求されて犯行を自供する時に静かに凶悪さを滲み出すキャラクターだった。
他には、「マネーボール」のブラピ、「ゴーストライター」のユアン・マクレガー、「フィフティ・フィフティ」「宇宙人ポール」のセス・ローゲン、「スマグラー」「毎日かあさん」の永瀬正敏など。
それと、「八日目の蝉」でピンポイントの田中泯。
女優では、「ミラル」「猿の惑星創世記」「インモータルズ」のフリーダ・ピント。
理由は単純に、美し過ぎる...。「スラムドッグ・ミリオネア」の人ですが、順調に売れて来た。
後は、「ブラック・スワン」他、「メタルヘッド」等出演作が相次いだナタリー・ポートマン。
「八日目の蝉」の永作博美、井上真央、小池栄子。
昨年に続き映画にドラマに快進撃続く満島ひかりも。映画じゃないけど「それでも、生きていく」絶妙でした。
1/25追記
忘れてた! 「モテキ」の長澤まさみ&麻生久美子!
1位「ソーシャル・ネットワーク」
実在の人物のサクセス・ストーリー、ではなく、ある若者が何かを得る引き換えに何かを失ってしまうという話。
そういう意味では、とても典型的な青春映画だと思う。
ストーリーといいそのテンポといい、音楽といい、とにかく好き。
Radiohead "Creep"の静謐な合唱団バージョンが流れる予告編からして、傑作感はただならぬものがあった。
(同じ理由で、今は「ドラゴン・タトゥーの女」が超楽しみ。)
2位「トゥルー・グリット」
酔っ払いの保安官と生真面目なハンターと共に、父を殺した男を追跡して荒野を旅する少女。
西部劇の体裁を取った冒険活劇。
これが1位でもよかった。
3位「ゴースト・ライター」
ポランスキー監督の手腕が冴えまくっている、洗練を極めたサスペンス/ミステリー。
凄い完成度。
これが1位でもよかった。
豊作の2011年の中でも、この1位〜3位は完全に別格。
4位以下。
順位付けは難しいので、順不同。多分観た順。
「キック・アス!」
ヒット・ガール!
「八日目の蝉」
表層の善悪を超えて揺り動かされる。
それとロードムーヴィ感。
大健闘な井上真央も含めて、どの女優さんも素晴らしい。今年の邦画ベスト。
「悲しみのミルク」
ペルー映画。映像の色彩感とフォークロア音楽がマジカル。
残酷なテロの記憶、それに、今も続く搾取と格差。
「中国娘」(「三大映画祭」上映作品)
中国の田舎の村から都会へ、そして海外へ。
ロードムービー感(またかよ)。及び、映画全体を貫くオルタネイティヴな空気感。
「チコとリタ」(「ラテンビート映画祭」上映作品)
顔の造形が妙にリアルな、完成度の高いラテン・アニメーション。
キューバ現代史とアメリカ・ショービズに翻弄される、歌姫とジャズマンの恋と人生。メランコリック。
「ウィンターズ・ボーン」
基本構造は「トゥルー・グリット」と同じ。
勇敢な少女がアメリカ土着の暗闇の中をくぐり抜けて行く、ハードボイルドな冒険物語。
タイトルの意味が分かった時の衝撃。
「宇宙人ポール」
ロードムーヴィ感(またか)+エイリアン。保守系アメリカ人には受け入れがたい映画だろうな。
同系統の「SUPER 8」もめちゃめちゃ良かったです。
ええい絞りきれない、他には...
「カントリー・ガール」
「SUPER 8」
「一命」
「あの日の幸せ」(「ブラジル映画祭」上映作品)
あと、「ブラック・スワン」「リトル・ランボーズ」「わたしを離さないで」「マネーボール」「レイン・オブ・アサシン」「アンストッパブル」などなど。
「ブラック・スワン」は突き抜けてた。クライマックスで圧倒された。
日本映画に関して言えば、良作は多く、傑作は少なかった印象。
同じ題材の「毎日かあさん」「酔いがさめたら、うちに帰ろう」、両作とても良かった。
他にも「もしドラ」「漫才ギャング」「東京オアシス」「CUT」色々あるけど、キリがない。
それと今年の映画ではないけど、太陽の塔のそば、国立民族博物館の企画で観に行った、マレーシア映画の「タレンタイム」。素晴らしい、傑作。
リバイバルで観た、テレンス・マリック監督の70年代作品「天国の日々」も。
前年公開(京都では2011年公開)の邦画「ヘヴンズ・ストーリー」は、最後まで観終わった時の達成感が半端なかった。
俳優部門!
男優では、何と言っても「冷たい熱帯魚」、でんでん。
そこら辺にいそうな、気の良さそうなおっさんの口から飛び出す必殺フレーズ「ボディを透明にする」が衝撃的過ぎて唖然。
でもこうゆう、人の心理につけ込みその人を支配しようとする人、実際にいそう。
最近はこんな役が多いけど、昔「相棒」で犯人役で出演した事があって、それもとても強い印象が。一見、正常な人なんだけど、追求されて犯行を自供する時に静かに凶悪さを滲み出すキャラクターだった。
他には、「マネーボール」のブラピ、「ゴーストライター」のユアン・マクレガー、「フィフティ・フィフティ」「宇宙人ポール」のセス・ローゲン、「スマグラー」「毎日かあさん」の永瀬正敏など。
それと、「八日目の蝉」でピンポイントの田中泯。
女優では、「ミラル」「猿の惑星創世記」「インモータルズ」のフリーダ・ピント。
理由は単純に、美し過ぎる...。「スラムドッグ・ミリオネア」の人ですが、順調に売れて来た。
後は、「ブラック・スワン」他、「メタルヘッド」等出演作が相次いだナタリー・ポートマン。
「八日目の蝉」の永作博美、井上真央、小池栄子。
昨年に続き映画にドラマに快進撃続く満島ひかりも。映画じゃないけど「それでも、生きていく」絶妙でした。
1/25追記
忘れてた! 「モテキ」の長澤まさみ&麻生久美子!