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操作された都市、悪女/AKUJO [映画]

今年に入ってから観た韓国映画が、「監獄の首領」「消された女」「殺人者の記憶法」と、どれも実に韓国映画的な、骨のある出来の秀作続きで、ハン・ソッキュやソル・ギョングの健在ぶりも何だか頼もしく感じていた。
そして遭遇した下の2本の韓国映画。あらためて、彼の国のサスペンス/バイオレンス映画の異様なハイレベルさに圧倒された。

「操作された都市」
韓国アクションのハイレベルさに圧倒されてしまうサスペンスアクション娯楽大作!
何よりも娯楽性が徹底的に追求されている点が素晴らしい。

冒頭で披露されるド派手かつ大味なアクションに、軽く不安が頭をよぎりながらも、そんなペースが続く訳ではない、ということがやがて判明し、一安心。と思いきや、見る見るうちにイケメン主人公が罠にはめられ、どん底に落とされていくスピーディ展開。そしてどう考えても完全に八方塞がりの状態に陥って、ついにオトコを見せ始める主人公。フリーターながら武道の素養があるという主人公の設定が何かズルい、と思いつつ、この辺から主人公に対する感情移入が止まらない。

主演のチ・チャンウクはイケメンなんだが、この人は顔だけじゃないですな。アクションはバッチリだし、不意に嗚咽するシーンには思わずグッときた。

あと、本当に感心させられたのが、カーチェイスシーン。これって、市内の一般公道を暴走しまくってます? 日本ではまず撮影不可能。カーチェイスのハイレベルは、ハリウッドムービーと互角と渡り合っている感じがする。

個人的評価 4点/5点満点

「悪女/AKUJO」
アクション映画というジャンルは、この韓国映画で行き着くところまで来てしまった。心からそう思ってしまった。
本作の下敷きにあるのは「ニキータ」ですが(無邪気なオマージュもあり)、それを、実に韓国映画らしいヘヴィネスと血生臭さでデコレーションした感じ。そしてとにかく面白いのがカメラワークである。冒頭の主観ショット長回しで、まず度肝を抜かれてしまった訳ですが(多分、この映画を観た人全員そうだろう)、その主観ショットが不意に切り替わる瞬間の映画的快感にゾクゾク。ひたすらスゲースゲーと最初から興奮度MAX。このカメラワークの妙は、その後のアクションシーンでこれでもかと炸裂する。

あと、この映画もカーチェイスシーンが凄まじい。日本ではまず無理だろう。

最強の戦闘マシーンであるヒロインの過去と、そんな彼女が秘密工作員として教育されていく現在。この二つの時制が代わる代わる語られていく物語構成。
ヒロインを演じるキム・オクビン、過去パートと現在パートで印象が全然違ってて、髪型変わったらこうも女性は印象が変わるものか、と。彼女の身体能力の高さにも強く感銘。そしてヒロインの記憶の中の想い人を、独特の存在感でカリスマティックに演じたシン・ハギュン、この人も健在なのであった。 

個人的評価 5点/5点満点



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スリービルボード [映画]

早くも今年のベストワンかもって感じ。圧巻。

娘を殺害された母親が見せる不屈のファイティングポーズ。しかしその矛先は、犯人ではなくて、いつまでも犯人を見つけ出すことができない地元の警察の警察署長。更にその警察署長は悪党でもなければ無能な男でもなくて、周囲の信望も厚いなかなかの人格者。しかも病魔に侵されている。しかし彼女はこの署長への糾弾の手を緩めない。それが、娘を何者かに焼き殺され、事件の捜査が一向に進展しない状況に業を煮やした彼女が選んだ正義だった。

メインキャラクターを演じる3人の俳優が3人とも名演。フランシス・マクドーマンドの女性タフガイぶりは、おそらくハリウッド映画史に残るほど。警察署長役のウディ・ハレルソンはまさに彼にぴったりのハマり役・・・まあ重病という設定の割にはガタイが良すぎる気がしますが。そしてレイシストの警官を演じたサム・ロックウェルには、脱帽です。

娘を殺された母親が地元の警察を挑発するという初期設定からして一筋縄ではいかない。ストーリー展開もまた一筋縄ではいかず(だからこそ見応え満点なんだが)、人物造形も同様である。安全な場所にいる人間たちの甘っちょろい正義感を粉砕してしまうようなタフな世界観がそこにはある。

直接的な暴力シーンは比較的少ないものの、暴力という本作のテーマは不穏な通奏低音として映画全編を貫いている。なかでもフォーカスされているのが、怒りという感情。ここぞとばかりに炸裂するバイオレンスシーンや燃えさかる炎のビジュアルには重いインパクトがあり、特にあの殴り込みの長回しは、瞬間的に本作品が映画的沸点に達する強烈な場面。
そこからあの病院のシーンに至るまで、一筋縄でいかない展開だからこそ、深く心を揺さぶられる。

典型的な、アメリカの退屈な田舎の風景を雄大に捉えた映像の美しさも、本作の重要な構成要素。登場する人々の佇まいは、その、アメリカ内部の”取り残された”地域の風土と一体化し、「ファーゴ」「ウィンターズ・ボーン」といった作品の系譜の中に本作も連なる。

主演の3人だけでなく、軽薄な広告代理店の若社長を演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズなど脇役のアクター達も非常にいい仕事してます。あの小人の俳優さん、なんかの映画で見かけた気がするけど、とてもいい役者さんだと改めて思った。それと主人公の息子、この人もどっかで見たことある顔だな〜と思っていたら、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の現代っ子青年。何という仕事運。

個人的評価 5点/5点満点

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