汚れたダイヤモンド [映画]
これは非常に好きな感じの映画だった。アントワープのダイヤモンド産業というニッチ題材を巧みに料理しつつ、復讐の情熱に突き動かされていく青年の姿を魅力的に描いた、一種のフィルム・ノワール。原題はずばりDiamont Noirである。この原題はブラックダイヤモンドとかけているのだろう、しかし本作にはアフリカの内戦や密売人の暗躍といった社会時事的な要素は無い。この映画に描かれているのは、野心であり、家族であり、友情と裏切りである。そしてどこか青春映画的なタッチとなっているのが本作の大きな魅力になっている。
パリで小さく仕事をしているコソ泥一味の一員、そんな主人公のもとに、永らく音信不通だった父の訃報が届く。そして主人公は自分の伯父とその家族と初対面。この伯父こそ、仕事中の事故で片腕を無くした自分の弟(主人公の父)を見捨てて一族から放り出し、不遇の生涯へと追いやった、主人公にとって憎むべき相手。伯父は家業であるダイヤモンドの商いを引き継ぎ、アントワープで財を成していた。伯父に対する憎悪を募らせた主人公は、財産をふんだくってやろうと思いつき、伯父の一家に近付く訳である。
ターンテーブルのように回転するダイヤモンドの研削台、眼球のズームアップといった、映画冒頭のイメージショットの連続がまず鮮烈。それらはやがて、本作の重要モチーフを構成することが徐々に明らかになるにつれて、この監督さんタダモンじゃないな、と確信。
復讐心と野心、そして多少の好奇心を胸に、伯父の会社と家族の中に入り込む主人公。そして主人公は新しい人間関係の中で、持ち前の才覚を発揮して徐々に頭角を示していく。この辺が、青春映画的で瑞々しい。いかにも育ちの良い従兄弟との間で育まれる友情とか、その従兄弟の婚約者が知的美人で思わず微妙な三角関係を形成しちゃったりとか。伯父のビジネスパートナーからは、職人としての素質を見込まれたりして。
ともかく主人公はアントワープにやってくることで新たな人生の扉を開いていくのであるが、その一方で、当初の目的に向けて準備を進めていく。
そこに生じる葛藤。野心を捨てることもできず、非情になりきることもできず、主人公は過去と未来に徐々に引き裂かれていく。冷徹で底が読めないようでいて、妙に人間くさい伯父、父を越えようともがく従兄、裏稼業に生きながら主人公を温かく見守るパリの泥棒の師匠など、脇役の人物造形は多層的で魅力的。フィルムノワールとは、魅力的なキャラクター達を周囲に配置しながら、主人公が宿命的に愚かな破滅へと突き進んでいくことの欲望を具現化したものである、と言えるのかもしれません。
個人的評価 4.5点/5点満点
パリで小さく仕事をしているコソ泥一味の一員、そんな主人公のもとに、永らく音信不通だった父の訃報が届く。そして主人公は自分の伯父とその家族と初対面。この伯父こそ、仕事中の事故で片腕を無くした自分の弟(主人公の父)を見捨てて一族から放り出し、不遇の生涯へと追いやった、主人公にとって憎むべき相手。伯父は家業であるダイヤモンドの商いを引き継ぎ、アントワープで財を成していた。伯父に対する憎悪を募らせた主人公は、財産をふんだくってやろうと思いつき、伯父の一家に近付く訳である。
ターンテーブルのように回転するダイヤモンドの研削台、眼球のズームアップといった、映画冒頭のイメージショットの連続がまず鮮烈。それらはやがて、本作の重要モチーフを構成することが徐々に明らかになるにつれて、この監督さんタダモンじゃないな、と確信。
復讐心と野心、そして多少の好奇心を胸に、伯父の会社と家族の中に入り込む主人公。そして主人公は新しい人間関係の中で、持ち前の才覚を発揮して徐々に頭角を示していく。この辺が、青春映画的で瑞々しい。いかにも育ちの良い従兄弟との間で育まれる友情とか、その従兄弟の婚約者が知的美人で思わず微妙な三角関係を形成しちゃったりとか。伯父のビジネスパートナーからは、職人としての素質を見込まれたりして。
ともかく主人公はアントワープにやってくることで新たな人生の扉を開いていくのであるが、その一方で、当初の目的に向けて準備を進めていく。
そこに生じる葛藤。野心を捨てることもできず、非情になりきることもできず、主人公は過去と未来に徐々に引き裂かれていく。冷徹で底が読めないようでいて、妙に人間くさい伯父、父を越えようともがく従兄、裏稼業に生きながら主人公を温かく見守るパリの泥棒の師匠など、脇役の人物造形は多層的で魅力的。フィルムノワールとは、魅力的なキャラクター達を周囲に配置しながら、主人公が宿命的に愚かな破滅へと突き進んでいくことの欲望を具現化したものである、と言えるのかもしれません。
個人的評価 4.5点/5点満点
2017年のテレビドラマ 個人的ベスト5 [テレビドラマ]
2017年は、頑張ってテレビドラマをチェックした1年でした。なかなか大変でした。
1位 「カルテット」
やっぱりこの作品が2017年のベストでした。今思い返してみても、このドラマを観ている最中の時間の感覚がちょっと独特で、緩やかな時間が流れているのに、気が付けばアッという間に終わってる、という感じだった。それが、毎回毎回。
主役の4人が織りなすハーモニー + 吉岡里帆の不協和音というアクセント、それがこのドラマのアンサンブルの本質だった。各回の客演陣も効いてた。そういや安藤サクラが声だけの出演、っていうのも(しかもそれが満島ひかりの友人役)面白かった。
言うまでも無く、「唐揚にレモンをかける/かけない」といった熱い(そして他愛のない)議論から、スッと人生の深淵を覗き込んでしまうような、洗練を極めた感のある今回の坂元裕二脚本、魔術的なほどに冴えていた。
ちなみに私の中で本作をも超える坂元脚本作品があって、それは「Mother」と「問題のあるレストラン」です。
2位 「先に生まれただけの僕」
会社の辞令で私立高校の校長になってしまった元営業マンが主人公という、極めて異色な切り口の学園ドラマ。
そんな主人公だからこその新しい視点で、昨今の様々な教育問題がPDCA的な手法で描かれている点が、まず非常に面白かった。そして、コメディタッチな語り口を維持しつつ、櫻井翔演じる主人公の素人校長が生徒達に語りかけるシーンはまさに名演説連発で、そこに本作のテーマに対する作り手たちの熱と真摯さを強く感じた。
櫻井翔は稀に見るハマり役で、蒼井優、風間杜夫、井川遥ら適材適所のキャスティング。高嶋政伸の怪演は、・・・最近この人こんな役ばっかりでちょっと可哀想。
書道パフォーマンスのシーンは圧巻で、そのシーンの撮影現場は本当にエキサイティングなことになっていたと想像する。そこでこのドラマは私の中で傑作認定。
3位 「山田孝之のカンヌ映画祭」
そもそもこれはドラマにカテゴライズしていいのでしょうか。
芦田愛菜と長澤まさみをキャスティングした時点で「やられた!」でした。
4位 「おんな城主 直虎」
女性主人公のNHK大河としては過去最高作品。(←昔の大河は知らないので、平成以降として。)
実在さえ怪しまれる人物であることを逆手にとって、思いきり想像の翼を広げて物語を膨らませつつ、戦国時代の非情な気風を随所に匂わせる脚本は、非常に卓越していた。また、主役の柴崎コウの為政者としての成長を物語の縦軸に据えつつも、準主役の男達(高橋一生や菅田将暉など)に主人公以上の存在感を与えるストーリーテリングの基本戦略が功を奏していた。
個人的には、松平健の武田信玄。歴代NHK大河ドラマ史上で、最高の武田信玄していたと思います。
5位 「ひよっこ」
峯田和伸がNHK朝ドラに!それがきっかけでこのドラマを観ていたのですが、上京する辺りから、徐々に岡田ワールドに引き込まれてしまった。このドラマは、奧茨城出身のヒロインが集団就職で上京し、やがて奧茨城ではなく東京の人間になっていくまでを、東京オリンピック以降の数年間の日本を時代背景としながら、淡々と半年かけて描いていった、という内容に過ぎない。だからこそ、この朝ドラは画期的だった、という気がする。
キャスティングも素晴らしいのですが、主役の有村架純が一番凄かったと思う。あと、一番好きなキャラは米子!
次点 「下北沢ダイハード」
現役演劇人たちの矜持とクリエイティヴィティが毎回炸裂していて、30分枠の単回ドラマとして、非常に見応えがあった。
他には、「監獄のお姫さま」「架空OL日記」「バイプレイヤーズ」など。
「監獄のお姫さま」は流石クドカン!という面白さだったけど、これがベストではない、とも思ったりして。回想シーンで伊勢谷友介を使い倒しているのは最高だった。
バカリズムの「架空OL日記」、バカリズムがOLとして普通に出勤し、同僚OLとくっちゃべっている、という絵ヅラから漂う、微妙な違和感がクセになってしまった。
「バイプレイヤーズ」はそのコンセプト性。その「バイプレイヤーズ」第一回のゲストである役所広司、彼がテレビドラマに出るというのは非常にレア感があったと思うのですが、その後、結局「陸王」で毎週観ることになるとは、その時は思いもしなかった。「陸王」も秀作でした。
それと、篠原涼子主演「民衆の敵」。それほど悪くなかったと思う。
たしかに序盤では、人気絶頂の高橋一生の使い方で多少血迷っていた感はあったけど(上半身ハダカとか)、篠原涼子と高橋一生の関係性という点で言えば、第一話から最終回まで終始一貫していたし、また、政治というものを普通の主婦目線/市民感覚で描く、という本作の挑戦は、もう少し好意的に評価されていいと思った。
1位 「カルテット」
やっぱりこの作品が2017年のベストでした。今思い返してみても、このドラマを観ている最中の時間の感覚がちょっと独特で、緩やかな時間が流れているのに、気が付けばアッという間に終わってる、という感じだった。それが、毎回毎回。
主役の4人が織りなすハーモニー + 吉岡里帆の不協和音というアクセント、それがこのドラマのアンサンブルの本質だった。各回の客演陣も効いてた。そういや安藤サクラが声だけの出演、っていうのも(しかもそれが満島ひかりの友人役)面白かった。
言うまでも無く、「唐揚にレモンをかける/かけない」といった熱い(そして他愛のない)議論から、スッと人生の深淵を覗き込んでしまうような、洗練を極めた感のある今回の坂元裕二脚本、魔術的なほどに冴えていた。
ちなみに私の中で本作をも超える坂元脚本作品があって、それは「Mother」と「問題のあるレストラン」です。
2位 「先に生まれただけの僕」
会社の辞令で私立高校の校長になってしまった元営業マンが主人公という、極めて異色な切り口の学園ドラマ。
そんな主人公だからこその新しい視点で、昨今の様々な教育問題がPDCA的な手法で描かれている点が、まず非常に面白かった。そして、コメディタッチな語り口を維持しつつ、櫻井翔演じる主人公の素人校長が生徒達に語りかけるシーンはまさに名演説連発で、そこに本作のテーマに対する作り手たちの熱と真摯さを強く感じた。
櫻井翔は稀に見るハマり役で、蒼井優、風間杜夫、井川遥ら適材適所のキャスティング。高嶋政伸の怪演は、・・・最近この人こんな役ばっかりでちょっと可哀想。
書道パフォーマンスのシーンは圧巻で、そのシーンの撮影現場は本当にエキサイティングなことになっていたと想像する。そこでこのドラマは私の中で傑作認定。
3位 「山田孝之のカンヌ映画祭」
そもそもこれはドラマにカテゴライズしていいのでしょうか。
芦田愛菜と長澤まさみをキャスティングした時点で「やられた!」でした。
4位 「おんな城主 直虎」
女性主人公のNHK大河としては過去最高作品。(←昔の大河は知らないので、平成以降として。)
実在さえ怪しまれる人物であることを逆手にとって、思いきり想像の翼を広げて物語を膨らませつつ、戦国時代の非情な気風を随所に匂わせる脚本は、非常に卓越していた。また、主役の柴崎コウの為政者としての成長を物語の縦軸に据えつつも、準主役の男達(高橋一生や菅田将暉など)に主人公以上の存在感を与えるストーリーテリングの基本戦略が功を奏していた。
個人的には、松平健の武田信玄。歴代NHK大河ドラマ史上で、最高の武田信玄していたと思います。
5位 「ひよっこ」
峯田和伸がNHK朝ドラに!それがきっかけでこのドラマを観ていたのですが、上京する辺りから、徐々に岡田ワールドに引き込まれてしまった。このドラマは、奧茨城出身のヒロインが集団就職で上京し、やがて奧茨城ではなく東京の人間になっていくまでを、東京オリンピック以降の数年間の日本を時代背景としながら、淡々と半年かけて描いていった、という内容に過ぎない。だからこそ、この朝ドラは画期的だった、という気がする。
キャスティングも素晴らしいのですが、主役の有村架純が一番凄かったと思う。あと、一番好きなキャラは米子!
次点 「下北沢ダイハード」
現役演劇人たちの矜持とクリエイティヴィティが毎回炸裂していて、30分枠の単回ドラマとして、非常に見応えがあった。
他には、「監獄のお姫さま」「架空OL日記」「バイプレイヤーズ」など。
「監獄のお姫さま」は流石クドカン!という面白さだったけど、これがベストではない、とも思ったりして。回想シーンで伊勢谷友介を使い倒しているのは最高だった。
バカリズムの「架空OL日記」、バカリズムがOLとして普通に出勤し、同僚OLとくっちゃべっている、という絵ヅラから漂う、微妙な違和感がクセになってしまった。
「バイプレイヤーズ」はそのコンセプト性。その「バイプレイヤーズ」第一回のゲストである役所広司、彼がテレビドラマに出るというのは非常にレア感があったと思うのですが、その後、結局「陸王」で毎週観ることになるとは、その時は思いもしなかった。「陸王」も秀作でした。
それと、篠原涼子主演「民衆の敵」。それほど悪くなかったと思う。
たしかに序盤では、人気絶頂の高橋一生の使い方で多少血迷っていた感はあったけど(上半身ハダカとか)、篠原涼子と高橋一生の関係性という点で言えば、第一話から最終回まで終始一貫していたし、また、政治というものを普通の主婦目線/市民感覚で描く、という本作の挑戦は、もう少し好意的に評価されていいと思った。
2017年 個人的ベストCD & ベストライブ [音楽 年間ベスト]
2017年のマイベスト10!
今年はこんな感じ。
1位 スーパーノア 「Time」
2位 スカート 「20/20」
3位 NUUAMM 「w/ave」
4位 mei ehara 「Sway」
5位 tricot 「3」
6位〜10位は、順位ではなく、出たもん順で。
電気Groove 「TROPICAL LOVE」
寺尾紗穂 「たよりないもののために」
Queens Of The Stone Age 「Villians」
GRAPEVINE 「ROADSIDE PROPHET」
YeYe 「MOTTAINAI」
惜しくもベスト10圏外
The xx 「I See You」
King Krule 「The Ooz」
とにかく2017年は、スーパーノアがついにファーストフルアルバムを発表し、しかもそれが破格の傑作だったこと。
そして完全無欠のポップアルバムを作り上げたスカート。彼は思い切り有名な存在になってくれた方が良い。それから、ひたすら名曲を生み出すグレイプバインは驚異的だと思う。
2017年のベストトラックは、tricot 「TOKYO VAMPIRE HOTEL」、スーパーノア 「What Light」。
他には、YeYe 「awake」「うんざりですよ」、Cornelius 「いつか / どこか」、スカート「スキルアップ」(トリプルファイヤーのカバー、「密造盤Deluxe Edition」より)
スーパーノアは全曲いいです。
2017年のベストライブは
1位 Juana Molina @ 京都Metro
同率でLCD Soundsystem @ フジロック
3位 おとぎ話 @ 陰陽(ネガポジ)
4位 Ogre You Asshole / mitsume @ 京都Mojo
5位 clammbon @ ビルボード大阪
次点 YeYe @ Kyoto Muse / 柴田聡子 @ 磔磔 / Homecomings @ 梅田Shangri-La
フアナ・モリーナとLCDサウンドシステムのライブは、とにかく最高でした。
今年はこんな感じ。
1位 スーパーノア 「Time」
2位 スカート 「20/20」
3位 NUUAMM 「w/ave」
4位 mei ehara 「Sway」
5位 tricot 「3」
6位〜10位は、順位ではなく、出たもん順で。
電気Groove 「TROPICAL LOVE」
寺尾紗穂 「たよりないもののために」
Queens Of The Stone Age 「Villians」
GRAPEVINE 「ROADSIDE PROPHET」
YeYe 「MOTTAINAI」
惜しくもベスト10圏外
The xx 「I See You」
King Krule 「The Ooz」
とにかく2017年は、スーパーノアがついにファーストフルアルバムを発表し、しかもそれが破格の傑作だったこと。
そして完全無欠のポップアルバムを作り上げたスカート。彼は思い切り有名な存在になってくれた方が良い。それから、ひたすら名曲を生み出すグレイプバインは驚異的だと思う。
2017年のベストトラックは、tricot 「TOKYO VAMPIRE HOTEL」、スーパーノア 「What Light」。
他には、YeYe 「awake」「うんざりですよ」、Cornelius 「いつか / どこか」、スカート「スキルアップ」(トリプルファイヤーのカバー、「密造盤Deluxe Edition」より)
スーパーノアは全曲いいです。
2017年のベストライブは
1位 Juana Molina @ 京都Metro
同率でLCD Soundsystem @ フジロック
3位 おとぎ話 @ 陰陽(ネガポジ)
4位 Ogre You Asshole / mitsume @ 京都Mojo
5位 clammbon @ ビルボード大阪
次点 YeYe @ Kyoto Muse / 柴田聡子 @ 磔磔 / Homecomings @ 梅田Shangri-La
フアナ・モリーナとLCDサウンドシステムのライブは、とにかく最高でした。
2017年 映画ベスト10 + α [映画 年間ベスト]
2017年、ブログを更新する時間(というより気力)はなくても、阿呆みたいに映画を観る時間はしっかりと確保。だがしかし、例年に比べて、何と言うか安打率は悪かった気がする。
例年、ベスト20以上を勝手に発表しておりますが、今年はベスト10+α。
1位から5位までは順番に、6位以降は見たもん順で。
1位 「ダンケルク」 監督:クリストファー・ノーラン
とにかく、その圧倒的な疑似体験性が、映画体験として強烈。IMAXで鑑賞して正解。
爆撃や沈没の恐怖をひたすら味わい続けながら、戦場の人間ドラマとしても見応え抜群で、3つのストーリーラインを敢えて同時進行させるトリッキーな構成にも、最後はほぉ?と感心。
2位 「ムーンライト」 監督:バリー・ジェンキンス
麻薬と貧困と暴力、或いはマイノリティの生き辛さという過酷な現実を描きつつも、この映画は、繊細な映像美に彩られた青春映画であり、闇夜を照らす月の光に祝福された人生賛歌。
3位 「あゝ、荒野 前篇」 監督:岸善幸
まさにこれは現代版あしたのジョーですな。
他の演者も良いのですが、とにかく菅田将暉に目が奪われ続ける。
(後編は、遅刻して最初の10分間を見逃してしまうという失態を演じてしまった。よって?選外。)
4位 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 監督:ケナス・ロナーガン
心に深い傷を抱えた男の帰郷を描くヒューマンドラマ。胸をえぐられるような悲劇を物語の核に配置しつつも、どこかオフビートで肩の力が抜けたストーリーテリングが秀逸だし、主人公と対照的な若者を主人公の隣に配したことも効果抜群。映像感も大好き。
5位 「沈黙 サイレンス」 監督:マーティン・スコセッシ
これもやはり映像体験としての圧倒感。身と心の両方を削るような俳優たちの演技にも心奪われる。
日本の時代劇を、ここまで真っ当に映像化してみせたスコセッシ監督って、やっぱり凄いなあ?、と。
以下、6位から10位まではランクづけではなくて、見たもん順で挙げていきます。
「バード・ショット」(大阪アジアン映画祭にて) 監督:ミカイル・レッド
フィリピン発、傑作フィルムノワール。絶滅危惧種の鳥類が飛来する禁猟区域で禁を犯してしまった少女と、公権力の腐敗に徐々に蝕まれていく新米警官、この二人の主人公の運命の交錯。
「3月のライオン 前編」 監督:大友啓史
実は後編では失速感を感じてしまったのですが・・・。前編を観た直後は興奮冷めやらず、でした。
将棋バトルロワイヤルな俳優たちの鬼気迫る熱演に思わず大満足。
「パーソナル・ショッパー」 監督・オリヴィエ・アサイヤス
本年度のもう1回観たい映画部門ナンバーワン。オリヴィエ・アサイヤス流の黒沢清的ゴーストストーリー、しかしジャンルの越境感覚はまさに匠の円熟。スリリングな映画体験。
「ベイビー・ドライバー」 監督:エドガー・ライト
冒頭5分のジョンスペ使いだけで、この映画は、間違いなくマスターピース認定です。
「彼女がその名を知らない鳥たち」 監督:白石和彌
稀有な映像体験。
蒼井優も、彼女を取り巻く3人の男性俳優も、愛の不条理をテーマとしてストーリーも、とにかく素晴らしかった。
次点クラスとして、いくつか。今年は邦画ばかりになってしまった。
「美しい星」 監督:吉田大八
リリー・フランキーが可笑しすぎます。
「ヘッド・ショット」 監督:ティモ・ジャイアント&キモ・スタンボエル
ストイックなバトルがアツかった。シンプルだけど燃える!
「獣道」 監督:内田英治
地方都市の闇をこれほどポップな形で描いた作品を私は知らない。
「恋とさよならとハワイ」 監督:まつむらしんご
別れても同棲継続中の若いカップルの物語。今年一番のみっけもん。主演の女優さんがとてもいい。
「勝手にふるえてろ」 監督:大九明子
強烈こじらせ女子を演じる松岡茉優がチャーミングすぎます。
2017年はその前の年と同様、邦画多め。
そういや外国映画のロードショー公開本数が、徐々に少なくなってきているような気がするのですが、どうなんでしょうか。昨今の日本の内向き傾向の表れ?
というわけで、邦画では、上記以外では
「彼らが本気で編む時は、」「愚行録」「チアダン」「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「散歩する侵略者」「パーフェクトレボリューション」「ミックス。」「月と雪」「火花」などなど。レベル高い。
洋画では、「わたしは、ダニエルブレイク」「ELLE」「ゲット・アウト」「ドリーム」「キングコング髑髏島の巨神」など。
「ゲット・アウト」のB級感覚は大好き。「ムーンライト」「ゲット・アウト」「ドリーム」は3本立てで観たい。バーホーベン監督のサスペンス「ELLE」は、バイオレンス映画としても強烈。一方でケン・ローチ監督「わたしは、ダニエル・ブレイク」の真摯な告発には、ストレートに感動した。「キングコング」は映画マニアからそうでない人たちまで万人にオススメできるハイレベル娯楽大作。
ハリウッドから続々と押し寄せるシリーズ続編もの、今年は良作が多かったと思う。特に「ブレードランナー2049」「スターウォーズ 最後のジェダイ」の2作品。「ブレードランナー2049」と同じ監督つながりで、「メッセージ」については、途中までは年間ベストワン級だと思いながら観てました(ラストがちょっと・・・)。まあでも、改めてドゥニ・ヴィルヌーヴの映画監督としての資質には感心。独自のヴィジョンを持っている、というか。
スーパーヒーローものについては食傷気味なんですが、「マイティーソー バトルロワイヤル」は軽いギャグ路線に路線変更していて、気楽なノリに好印象でした。もう地球を(というかアメリカを)救わなくていいから!
ヨーロッパ映画では、セルビア内戦をテーマに、3つの時制の互いに独立した物語を同じ俳優達が演じるという技巧性が見事だった「灼熱」。それと、グルジア内戦をテーマに、シンプルな寓話設定で戦争の愚かしさを描き切った「みかんの丘」(グルジア映画)。この2本のヨーロッパ辺境映画が素晴らしかった。両方とも内戦がテーマというのが考えさせられる訳ですが・・・。
一方、アジア映画、なかなかフィット作に当たらず。そんななかで、大阪アジアン映画祭で観た「29+1」はかなりのヒット。あとパク・チャヌク監督「お嬢さん」も面白かった。あ!むかし大阪アジアン映画祭で観た台湾映画「星空」がついに日本でも一般公開!観たらやっぱり傑作でした。
忘れてた! ヤスミン・アフマド監督の遺作「タレンタイム」は全地球人が観るべき傑作!! ある意味、どんな宗教の聖典よりも神聖で崇高な映画。この人の特集上映をやってほしい。
さて俳優部門。
男性部門は「あゝ、荒野」菅田将暉。もはや役者として本格覚醒であり、「帝一の國」「火花」も素晴らしかった。
2017年、テレビドラマは高橋一生の1年でしたが、映画はこの人でしょう。
他には、ライアン・ゴズリング(「LA LA LAND」「ブレードランナー2049」「ナイスガイズ!」)、アダム・ドライバー(「沈黙」「パターソン」「ローガン・ラッキー」「SW8」)、リリー・フランキー(「美しい星」「パーフェクトレボリューション」)、阿部サダヲ(「彼女がその名を知らない鳥たち」)
女性部門は「ELLE」イザベル・ユペール。既に世界的な大御所女優なのに、こんな問題作のこんな過激なヒロイン役に挑むのがスゴイ。
他には、クリスティン・スチュワート(「パーソナルショッパー」「カフェ・ソサエティ」)、松岡茉優(「勝手にふるえてろ」)。
さて、年の瀬に発表された、京都みなみ会館の3月末閉館予告は、心底残念なニュースだった。好きだったバンドが解散発表した時のような感じである。
そんななか、神戸三宮まで出かけて、「ハッピーアワー」で2017年の映画納め。2回目の鑑賞だったのだが、前回観てから1年半以上経過しているため、いいカンジで細部を忘れており、しかし物語の骨子は覚えているので伏線や象徴がクリアに理解でき、映画の舞台である神戸でこの映画を観るという半ば自己満足、そして終演後の大人数での和気藹々とした(そして監督による説明が結構ディープな)舞台挨拶も含めて、心から満足のいく映画納めだった。
今年も良い映画にたくさん出会いたい。
例年、ベスト20以上を勝手に発表しておりますが、今年はベスト10+α。
1位から5位までは順番に、6位以降は見たもん順で。
1位 「ダンケルク」 監督:クリストファー・ノーラン
とにかく、その圧倒的な疑似体験性が、映画体験として強烈。IMAXで鑑賞して正解。
爆撃や沈没の恐怖をひたすら味わい続けながら、戦場の人間ドラマとしても見応え抜群で、3つのストーリーラインを敢えて同時進行させるトリッキーな構成にも、最後はほぉ?と感心。
2位 「ムーンライト」 監督:バリー・ジェンキンス
麻薬と貧困と暴力、或いはマイノリティの生き辛さという過酷な現実を描きつつも、この映画は、繊細な映像美に彩られた青春映画であり、闇夜を照らす月の光に祝福された人生賛歌。
3位 「あゝ、荒野 前篇」 監督:岸善幸
まさにこれは現代版あしたのジョーですな。
他の演者も良いのですが、とにかく菅田将暉に目が奪われ続ける。
(後編は、遅刻して最初の10分間を見逃してしまうという失態を演じてしまった。よって?選外。)
4位 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 監督:ケナス・ロナーガン
心に深い傷を抱えた男の帰郷を描くヒューマンドラマ。胸をえぐられるような悲劇を物語の核に配置しつつも、どこかオフビートで肩の力が抜けたストーリーテリングが秀逸だし、主人公と対照的な若者を主人公の隣に配したことも効果抜群。映像感も大好き。
5位 「沈黙 サイレンス」 監督:マーティン・スコセッシ
これもやはり映像体験としての圧倒感。身と心の両方を削るような俳優たちの演技にも心奪われる。
日本の時代劇を、ここまで真っ当に映像化してみせたスコセッシ監督って、やっぱり凄いなあ?、と。
以下、6位から10位まではランクづけではなくて、見たもん順で挙げていきます。
「バード・ショット」(大阪アジアン映画祭にて) 監督:ミカイル・レッド
フィリピン発、傑作フィルムノワール。絶滅危惧種の鳥類が飛来する禁猟区域で禁を犯してしまった少女と、公権力の腐敗に徐々に蝕まれていく新米警官、この二人の主人公の運命の交錯。
「3月のライオン 前編」 監督:大友啓史
実は後編では失速感を感じてしまったのですが・・・。前編を観た直後は興奮冷めやらず、でした。
将棋バトルロワイヤルな俳優たちの鬼気迫る熱演に思わず大満足。
「パーソナル・ショッパー」 監督・オリヴィエ・アサイヤス
本年度のもう1回観たい映画部門ナンバーワン。オリヴィエ・アサイヤス流の黒沢清的ゴーストストーリー、しかしジャンルの越境感覚はまさに匠の円熟。スリリングな映画体験。
「ベイビー・ドライバー」 監督:エドガー・ライト
冒頭5分のジョンスペ使いだけで、この映画は、間違いなくマスターピース認定です。
「彼女がその名を知らない鳥たち」 監督:白石和彌
稀有な映像体験。
蒼井優も、彼女を取り巻く3人の男性俳優も、愛の不条理をテーマとしてストーリーも、とにかく素晴らしかった。
次点クラスとして、いくつか。今年は邦画ばかりになってしまった。
「美しい星」 監督:吉田大八
リリー・フランキーが可笑しすぎます。
「ヘッド・ショット」 監督:ティモ・ジャイアント&キモ・スタンボエル
ストイックなバトルがアツかった。シンプルだけど燃える!
「獣道」 監督:内田英治
地方都市の闇をこれほどポップな形で描いた作品を私は知らない。
「恋とさよならとハワイ」 監督:まつむらしんご
別れても同棲継続中の若いカップルの物語。今年一番のみっけもん。主演の女優さんがとてもいい。
「勝手にふるえてろ」 監督:大九明子
強烈こじらせ女子を演じる松岡茉優がチャーミングすぎます。
2017年はその前の年と同様、邦画多め。
そういや外国映画のロードショー公開本数が、徐々に少なくなってきているような気がするのですが、どうなんでしょうか。昨今の日本の内向き傾向の表れ?
というわけで、邦画では、上記以外では
「彼らが本気で編む時は、」「愚行録」「チアダン」「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「散歩する侵略者」「パーフェクトレボリューション」「ミックス。」「月と雪」「火花」などなど。レベル高い。
洋画では、「わたしは、ダニエルブレイク」「ELLE」「ゲット・アウト」「ドリーム」「キングコング髑髏島の巨神」など。
「ゲット・アウト」のB級感覚は大好き。「ムーンライト」「ゲット・アウト」「ドリーム」は3本立てで観たい。バーホーベン監督のサスペンス「ELLE」は、バイオレンス映画としても強烈。一方でケン・ローチ監督「わたしは、ダニエル・ブレイク」の真摯な告発には、ストレートに感動した。「キングコング」は映画マニアからそうでない人たちまで万人にオススメできるハイレベル娯楽大作。
ハリウッドから続々と押し寄せるシリーズ続編もの、今年は良作が多かったと思う。特に「ブレードランナー2049」「スターウォーズ 最後のジェダイ」の2作品。「ブレードランナー2049」と同じ監督つながりで、「メッセージ」については、途中までは年間ベストワン級だと思いながら観てました(ラストがちょっと・・・)。まあでも、改めてドゥニ・ヴィルヌーヴの映画監督としての資質には感心。独自のヴィジョンを持っている、というか。
スーパーヒーローものについては食傷気味なんですが、「マイティーソー バトルロワイヤル」は軽いギャグ路線に路線変更していて、気楽なノリに好印象でした。もう地球を(というかアメリカを)救わなくていいから!
ヨーロッパ映画では、セルビア内戦をテーマに、3つの時制の互いに独立した物語を同じ俳優達が演じるという技巧性が見事だった「灼熱」。それと、グルジア内戦をテーマに、シンプルな寓話設定で戦争の愚かしさを描き切った「みかんの丘」(グルジア映画)。この2本のヨーロッパ辺境映画が素晴らしかった。両方とも内戦がテーマというのが考えさせられる訳ですが・・・。
一方、アジア映画、なかなかフィット作に当たらず。そんななかで、大阪アジアン映画祭で観た「29+1」はかなりのヒット。あとパク・チャヌク監督「お嬢さん」も面白かった。あ!むかし大阪アジアン映画祭で観た台湾映画「星空」がついに日本でも一般公開!観たらやっぱり傑作でした。
忘れてた! ヤスミン・アフマド監督の遺作「タレンタイム」は全地球人が観るべき傑作!! ある意味、どんな宗教の聖典よりも神聖で崇高な映画。この人の特集上映をやってほしい。
さて俳優部門。
男性部門は「あゝ、荒野」菅田将暉。もはや役者として本格覚醒であり、「帝一の國」「火花」も素晴らしかった。
2017年、テレビドラマは高橋一生の1年でしたが、映画はこの人でしょう。
他には、ライアン・ゴズリング(「LA LA LAND」「ブレードランナー2049」「ナイスガイズ!」)、アダム・ドライバー(「沈黙」「パターソン」「ローガン・ラッキー」「SW8」)、リリー・フランキー(「美しい星」「パーフェクトレボリューション」)、阿部サダヲ(「彼女がその名を知らない鳥たち」)
女性部門は「ELLE」イザベル・ユペール。既に世界的な大御所女優なのに、こんな問題作のこんな過激なヒロイン役に挑むのがスゴイ。
他には、クリスティン・スチュワート(「パーソナルショッパー」「カフェ・ソサエティ」)、松岡茉優(「勝手にふるえてろ」)。
さて、年の瀬に発表された、京都みなみ会館の3月末閉館予告は、心底残念なニュースだった。好きだったバンドが解散発表した時のような感じである。
そんななか、神戸三宮まで出かけて、「ハッピーアワー」で2017年の映画納め。2回目の鑑賞だったのだが、前回観てから1年半以上経過しているため、いいカンジで細部を忘れており、しかし物語の骨子は覚えているので伏線や象徴がクリアに理解でき、映画の舞台である神戸でこの映画を観るという半ば自己満足、そして終演後の大人数での和気藹々とした(そして監督による説明が結構ディープな)舞台挨拶も含めて、心から満足のいく映画納めだった。
今年も良い映画にたくさん出会いたい。