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In da house (1日目)@ 旧グッゲンハイム邸 2018-4-20 [音楽]

しばらくザ・なつやすみバンド(TNB)のライブを観てないな〜、ということで、寒い冬の間、彼らのひさびさ関西ライブであるこの日が来るのを、実は密かに心待ちにしていたのでした。

二日間の日程で、TNBの出演は1日目。他には空気公団、テニスコーツ、東郷清丸、NRQなど、個人的に観たいアクトが1日目に集中しており、私はこの日だけの一日券。ちなみに2日目は片想い、三田村管打団、cero高城氏の新バンドなど。

この日は本当に気持ちが良いほどの快晴で、本格的に寒いの今日で終了!という感じの日。絶好のフェス日和と言えた。
タイムテーブルは当日まで非公開。開演時刻を少し過ぎた辺りで会場に到着し、トップバッターで既に演奏中だったのはNRQ。制作し終わったばかりという新作からの曲も披露されつつ、クールな「ボストーク」はじめ、熱い演奏にオーディエンスも熱い歓声と拍手で応える。

ライブが終われば、ステージのある部屋の扉が閉ざされて、その中でセットチェンジ。その間はお客さんは、会場の中庭で出店しているオシャレなフード/ドリンク関係のブースで、フェス気分を満喫。旧グッゲンハイム邸の階段を初めて上がってみた。2階のテラスからは快晴の塩屋の海が一望。ああ、天気も最高だし、何か適度にユルくって、素晴らしいわこのフェス。

二番手の東郷清丸は、バンド編成でずっと観たかった人。サポートのドラムとベースを率いての3ピースバンド体制、ドラムは何とあだち麗三郎。軽快かつファンキーなリズム隊が素晴らしく、それに乗っかる東郷氏の、永積崇を彷彿とさせる天性のボーカルセンスとカッティングギターも実に気持ちがいい。フレッシュなファンク・ミュージック。めちゃくちゃかっこいい3ピース。「サマタイム」「Super Relax」「ロードムービー」などキラーチューンも軒並み披露。コレを見る事が出来ただけでも、今日来た価値があった。

その次のyumboは初めて聞くバンドだったけど、コレがまた素晴らしかった。楚々とした女性vo.の歌の世界に寄り添う、ピアノとドラムを核に、ギター、弦楽、金管楽器が音を重なり合わせる楽団スタイルのバンド。一聴して地味ながら、惹きつけてやまない何かが確実にそこにある。何というか、路傍の花のような力強さと美しさ。日々の生活に根差した音楽に宿る至高。しかもそのバンド名が、何ゆえyumbo。TNBの中川さんとシラさんが2曲参加、そしてテニスコーツの二人も1曲参加。その曲ではさやさんがヴォーカルを取り、yumboのヴォーカルさんとはまた違った柔らかい感じが極上であった。

ザ・なつやすみバンドは、たぶん1年以上ライブを観ていない。そうなると、2016年の夏の大阪ワンマン以来ってことか。「せかいの車窓から」で始まったこの日のライブは、新曲メインのセットリスト。新作が待ち遠しい。バンドやろうぜ的な新曲が特に良かった。アレンジを変えた「スパサマ」では、相変わらず中盤の「毎日が夏休みだったら、いいのになあ」のキラーフレーズに、フッと感傷的な気持ちにさせられてしまう。その叶わない願いの、無邪気さと切なさに。
そういや、彼らの初映像作品であるライブDVDが、彼らのライブ会場限定で昨年から発売されていて、そのDVDをゲットすることもこの日の私の主な目的の一つなのであった。ようやくゲットできて嬉しい。

この日の空気公団は、サポートドラムのオータコージさんがいない、メンバー3人だけのライブ。山崎ゆかりさんの歌の世界、日常に根ざした彼女の歌が放つポエジーは、実はバンドの編成とはあまり関係が無いなあ、とつくづく感じた。まあでも次は、生ドラムを効かせたバンド編成で聴きたい。一曲、中川さんとシラフが参加。

初めて見るSTUTSは、この日のイベント名を一人で背負うかのようなダンスミュージック。まだまだ元気な若者たちをロックさせていた。私はそろそろいい感じに疲れてきて、踊る人たちを横目で見ながら、早くも素晴らしい1日が終わった時に感じる心地よい充足感に包まれていたのですが……だがしかし、この日の最高の音楽体験は、このあとだった。

トリのテニスコーツ。最後の彼らだけ野外でのライブパフォーマンス。暗くなり始めた中庭という空間で、中庭に集まったオーディエンスと向かい合うように、地面から一段高い縁側に腰掛けた二人。まるで近所からふらりと現れたような佇まいである。そして何気なく始まったアコースティックライブ。さやさんの柔らかな歌声と染み渡るようなピアニカ、植野さんの優しくて素敵なアコギと歌声。

彼らの音楽と共に聞こえてくる、ドップラー効果を効かせた電車の通過音、急き立てるような踏切のサイレン、風に流された塩屋駅のアナウンス。あるいは、家路を急ぐ夕暮れの海鳥やカラスたちの鳴き声。塩屋というロケーションで鳴っている日常的な環境音が、この日のテニスコーツの音楽の一部と化しているような感覚。ふと振り返ると、一心に彼らの音楽に耳を傾けるお客さんたちや出演者たち。多分、同じことをみんな考えている。このライブ、特別すぎやしないか?

そして、目の前で演奏しているテニスコーツは、不意にヒップホップに挑戦し微笑ましい雰囲気を作り出し、かと思えばPerfumeの曲を激アツなアコースティックアレンジで披露して喝采を浴びていた。自由でアーティスティック。

この日の旧グッゲンハイム邸は、塩屋という山と海に挟まれた日常空間の中に出現した、束の間の非日常的音楽空間で、その結界の外には、この町の日常と生活が普通に広がっている。建物の外側でプレイしたテニスコーツの二人は、結界の中と外を結びつけ、この街の日常の景色の中に、音楽の奇跡を溶け込ませた。この日の光景はきっと忘れないと思う。

アンコールでは、ゑでゐ鼓雨麿さんも飛び入りで一曲参加。そして最後は、マイクを使わずに生声と楽器の生音で「月の音」。断言してもいいけど、この日この場所にいた人たちは、みんなハッピーな気持ちで1日を終わらせたと思う。
最後の最後でテニスコーツに持ってかれてしまった1日。



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