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寺尾紗穂 @ 清谷寺 2018-03-04 [音楽]

この日は午前中に橿原方面に用事があったので、ついでに足を延ばして吉野のお寺で真昼の寺尾紗穂さんのコンサートを観に行った。会場は吉野町の清谷寺。

この日はそれまでの寒さがウソのような小春日和の晴天。しかしそれはこの時季においては、完璧な花粉日和である事を意味しており、つまり銃弾が飛び交う戦場の真っ只中に飛び込むような覚悟を決めて向かう必要があった。いまのこの時季、吉野はスギ花粉地獄なのである。

折角吉野まで行くのだから、と、かねてより気になっていた吉野の超有名な秘境ラーメン「ラーメン河」(この店名のネーミングセンスは抜群だと思う)に初挑戦しようとするも、お店に着いた午後1時前、お店の前には順番待ちの人達、そして閉店を告げる無情の立看板。つまり本日分ソールドアウト! 売り切れタイミング早いなあ〜。仕方がないので退散した。結果、私の中で秘境感は倍増した。

さて、近場の茶店で昼食を済ませ、i-phoneのナビ機能を頼りに何とか清谷寺に到着。
13:30開演のこの日、駐車場に車を停めて外に出ると、頭上からは一番手のMANAMA x iki yol のエキゾチックなインストナンバーが良い音で聞こえていた。スーフィズムの宗教音楽やイベリア半島の民族音楽やギリシャの民族音楽をベースにした生演奏が、クラブで演奏されていてもおかしくないような抜群のサウンドシステムで鳴らされていて、しかもそのロケーションが吉野の山に四方を囲まれた、高台に位置するお寺のお堂。しかも真昼間。 この音と場所のミスマッチさに若干クラクラきた。

会場内には、移動本屋さんと、一軒だけだったけどドリンク/フードの出店もあって、軽くフェス気分。小春日和とは言っても時間が下がると少し肌寒く、暖かいコーヒーとお汁粉は非常に美味だった。ボリューミーな清谷寺コロッケは完売で食べること叶わず。客層としては、こんな山奥まで来る熱心なファン、だいたいオシャレでフェス慣れしてそうな人達。中には子連れファミリーも数組いて、小さき子供達は演奏中にも関らず会場内を自由にうろついている。一方で、そんな音楽ファンとは少し毛色の違う人達もいて、多分地元の人達だろう。

二番手は御所市在住のアーティスト、桶田知道という青年。電子音楽をバックトラックにギターロック的ポップソングを歌うシンガーソングライター。まだ作りかけの新曲、と言って歌い始めたギター弾き語りの曲が、この人の本質をよく語っているような気がした。

そして本日の主賓である寺尾紗穂さんは、ピアノ弾き語りの二部構成コンサート。「立つことと座ること」から始まった第一部では、折坂悠太さんの曲や、タイトルだけでインパクト抜群、けどそれ以上にその歌詞の見事さに胸打たれる「骨壷」などで、ワタシを含むオーディエンスの感動をさらっていく。

それとこの人は何気にトークが上手である。面白い話をするとかそういう事ではなくて、自分の考えや今の興味の対象なんかを、落ち着いたトーンと平易な言葉で語っていく。さすがルポライターとしても活躍されている人だな〜と思った。ラジオのパーソナリティーに向いていると思う。

10分ほどの休憩を挟んだ第二部では、直前でこの日のセットリストに入れたという、はじめ人間ギャートルズのEDテーマ曲(「やつらの足音のバラード」)カバーが絶品! 久しぶりに聴いたこの歌、脳内に子供の頃の再放送の時間帯の記憶がフラッシュバック。そして、歳を取った今だからこそ理解できるこの歌の壮大なスケール感、山と青空に取り囲まれた野外というシチュエーションにヤバイほどのハマり具合。この人の凛とした歌声とピアノの響きに乗って、マンモスを追いかけた遠い荒野の祖先たちの営みが青空の向こうに拡散していく。

渾身の「たよりないもののために」で彼女の弾き語りパートは一旦終了して、そのまま、本日の一組目と二組目の演奏者たちが登壇。彼女のピアノ弾き語りを堪能しつつも、ステージ上に残されたままの楽器の配置を見て、実は秘かにあるのではないかと期待していた合同セッションが、目の前で現実に。本当に来て良かった。移動本屋のお兄さんもベースで参加して、総勢6人のバックバンドを引き連れたバージョンで寺尾紗穂さんは「楕円の夢」「アジアの汗」の2曲を披露。ピアノの弾き語りとは違った、各々の楽器の音が豊かに融合して情感とグルーヴを作り上げていく、本当に本当に贅沢な音楽の時間が目の前にあった。

セッションが終わり、演者たちが袖に引っ込んでもアンコールを求める拍手が鳴り止まず、アンコールは寺尾さんの弾き語りでGEZAN「エンドロール」カバー。この曲のメッセージそのまま、一人一人の旅は続く。いい余韻に浸りながら会場を後にした。そのうちラーメン河に再挑戦しよう。

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